第17話 賢者、盗まれる
帝国暦1400年
―レーヌ帝国 古代樹の森―
私達は魔王を仲間にした後、雑談をしながら自宅に帰っていた。「そういえばシュレッケンさん口調と言い、一人称と言い変わってません?」「僕はいつでも一人称は僕だし口調もこうですよ。アイさん」と魔王時代とは似ても似つかない丁寧な口調で返している元魔王に同情した。思えば魔王だった頃のシュレッケンは何処かしんどそうだった。それを私があんなことをしたせいで更に苦しめてしまった。本当に申し訳ないことをした。と反省していると目の前に木とレンガで作ってあり、自分で言うのはあれだが、非常におしゃれな自慢の我が家が見えてきた。アイが家に近づきドアノブを触ろうとした時「待て。家の中から変な魔力の乱れを感じる。中に誰かいるかもしれない。私が先頭で入る。お前達は私の後ろについてこい。くれぐれも警戒を怠るな。」警戒体制に入った私が慎重に中に入ったが異変は何もない。人の気配もない。おかしいのは魔力の乱れを感じることだけ。まさか…もしそうならかなりまずい。そこで私はある一つの可能性にたどり着く。「アイ。少し下がっていてくれ。」アイを下がらせた私はそばにある本棚に力をこめる。少し本棚が動きレバーが現れる。そのレバーを引く。ゴゴゴゴゴという音と共に家の地面に穴が空き階段が現れる。私は躊躇なくそこに入っていく。驚いた顔をしたアイとシュレッケンも後から私を追ってくる。「アオイ様。ここは一体何なんですか?」と言うアイの疑問の声が通路一体に反響する。「もう少し行けば分かる。」と言い、急いで階段を降りる。階段が終わり広い空間に出た。そこには所狭しと置かれた本棚と王城に匹敵する程の大量の本。その中から「とある王族の人生」と書かれた本が全部で7つある。「やはりそうか。4話だけない…」私はその場で落胆した。「アオイ様、どういうことですか?」何も分かっていないアイに言う。「この本はな、私の4000年の人生の中で起こったことを嘘偽りない事実を後世に伝えるために書いている本なんだ。その内の4話は私の人生の中で最も恥ずべき行いについて書かれてあった本なんだ。それを誰かに盗まれるとは…」と言うと何と励ましたら良いのか、どういう表情をしたら良いのか分からないアイとシュレッケンはあははぁと愛想笑いをしている。どうしたら良いんだ。あれが世界に広まったら…私の人生が300年位は詰む。そもそも誰が私の本を盗ったんだ。魔力の乱れ的に盗られてから1日は経っていない。しかもこの魔力の乱れ何処かで感じた気が…。
「あっ!」私は大声を出した。「うわ!どうしたんでますかアオイ様」驚いたアオイが聞いてくる。「わかったんだよ、私の本を盗った奴が。この魔力の乱れ、シュレッケンの雰囲気と共にレーヌ城に漂っていた異様な魔力の乱れと似ている。つまり、あの時シュレッケンと共にレーヌ城にいた奴が犯人なんだ。」とアイに説明すると「結局それって誰なんですか?」という至極全うな返答が帰ってきた。「それは…、分からない。けど、魔力が乱れる程の魔法を使える奴なんてこの世界にそう何人といない。私が知る中だと私の妹しかこんな強力な魔法は使えない。」と言うと「アオイ様って妹さんいたんですか?」とアイが驚愕した表情で言ってきた。「あぁいるよ。私の妹はフランティアの首都パリースにいる。だからパリースに行ってみようと思うんだがアイ達はどう思う?」と聞くと「良いと思います。」「僕はアオイに付いていく。」とアイとシュレッケンは言った。
とある魔女のメモ
パリース…フランティアの首都で大陸の中でレーヌ・キョートに次いで3番目に人口が多い。ノトールダム大聖堂が有名。




