第16話 賢者、魔王を仲間にする
帝国暦1400年
―レーヌ帝国レーヌ城―
私は取りあえず魔王の実力を測ることにした。真っ直ぐこちらに向かって走ってくる魔王を避ける。魔王はそのまま真っ直ぐ過ぎ去っていく。どういうことかと魔王が過ぎ去った方向をみたときに気づいた。まずい、その方向にはアイがいる。「アイ!」私が叫んだ頃には時すでに遅しだった。魔王はアイを人質とした。まずい、まずすぎる。私としたことがアイを人質に取られるとは。感情が乱れる。「ハッハッハッ。さっきまでの余裕はど〜したんですか。さっさと古代魔法を放ってきてくださ〜い。まぁ、古代魔法を放った瞬間、このエルフも同時に死んでしまいすが、私をその"忌々しい"古代魔法の実験体として、3日3晩残虐の限りを尽くしたあなたなら、た〜った1人のエルフの命くらい簡単に殺せますよね。それともな、に、か、私にはあ〜んなひどいことしたのに、このエルフは殺せないな〜んてそんな甘えたことを言うわけがありませんよね。もしも、そんな事を言うのであれば私はこのエルフを殺します。さぁ〜、さっさと古代魔法を私に放ってきなさ〜い。制限時間は、そうですね。後2分、といったところかしら。」魔王のその言葉に私は絶望した。「私がアイの事を殺す?」無理だ。そんな事できるはずがない。だけど何もしなかったら、後2分したら、アイは魔王に殺されてしまう。分からない。何が正解なのか、分からない。混乱している私に魔王は言う。「ハッハッハッ。そうさ。私がお前に倒されてから500年間求め続けていたのは、お前のその"顔"さ。忌々しいお前のその絶望に満ちた顔を私は見たかったのさ。1分30秒後のお前は、も〜っと絶望に満ちた顔をしているんだろうな。楽しみだな〜」その言葉が私を更に追い詰める。絶望に支配された顔をし、「アッ、アッ」という声をあげながら私は頭を抱えながら膝から崩れる。時間が足りない。どうすれば良いのか考える時間が足りない。どうする。どうする。どうすれば良い。私は一体何をすれば良い?大切な人を救うために私は一体何をすれば…。そうだ、あれならば。けど、あれが魔法が効かない魔王に効くかどうか…
「2分経った。どうする勇者アオイ。私に魔法を放つか。ハッハッハッ。笑いが止まらないな〜。」その魔王の声で私は立ち上がり詠唱する。「我が神の周知の下に、我、彼の者の歴史を変えんと欲する。あぁ、我が寛容なる神よ。我が行為をお許しください。『胡蝶の夢』」その瞬間魔王の身体からたくさんの美しい蝶が私に向かって飛んでくる。そして全ての蝶が魔王から出てきた時、私の周りを蝶達がグルグルと廻りながら上へ上へと登っていく。魔王はその間に「何が、何が起こっている。記憶が消えていく。私の記憶、が…」と言いながら倒れていった。「アオイ様!」アイが泣きながら私に向かって走ってくる。そんなアイを私は強く強く抱きしめる。「アイ、ごめん。守ってやれなくて、ごめん。怖い思いさせてごめん。ごめん、アイ。」そう何度も、何度も泣きながらアイに言う。「アオイ様、そんなに謝らないでください。結局、アオイ様は私を救ってくださったじゃありませんか。だからそんなに謝らないでください。それよりもさっきの奴使って良かったんですか?」と心配してくれているアイに「良いんだ。あれを自分のためではなく大切な弟子のために使うのであれば、この力をくださったあの方もきっとお許しになられる。」と言った。「それはそうとしてこいつどうします?」そう言うとアイの目線の先にはキョトンとして何も分かっていない魔王がいた。「こいつは仲間にしようと思う。」と言うと「ええ~。大丈夫なんですか。また襲ってきたりとかしてきません。それに魔王ですし…」と言うアイに「大丈夫だ。こいつの記憶は私の魔法で全て奪ったから、襲ってくる心配はない。それにこいつがこんな風になってしまったことには私の責任もある。」そうアイに言い、魔王の方を見て「おい、私はお前の師匠のアオイだ。それでお前の名前はシュレッケンだ。分かったか。」と聞くと、「シュレッケン。それが僕の名前。それでお前はアオイ。僕の師匠?」とあまり意味が分かっていなそうなシュレッケンに「そう。私はお前の師匠でお前の名前はシュレッケンだ。」と言った。
とある本の一節
魔王の力の一つに魔法を跳ね返してくることがあげられる。なぜ魔王には魔法と効かないのかをとある研究者が調べたその結果、魔族独特の皮膚が影響していることが分かった。魔族の皮膚は魔法に対して強い耐性を持っており、魔王はその耐性が非常に強いため、ほとんどの魔法を跳ね返してしまうことが分かった。更に、魔族の皮膚は一属性の魔法には強い耐性があるが、複数属性の魔法を同時に放たれると耐性が十分に発動しないことも分かった。




