第15話 賢者、魔王と対峙する
帝国暦1400年
―レーヌ帝国レーヌ城―
「アイ、馬車から絶対に出るな。」と言い古代魔法を発動する。「聖なる神、そして精霊たちよ。我が求めに応じ、我に強大なる力をお与えくださいませ。」詠唱と同時にたくさんの魔法陣と中央に一際大きな魔法陣が少しずつ出来上がる。すべての魔法陣が出来上がると、その中から大量の雪玉がセットされる。そして、「あぁ、我が髪はまるで白銀の雪のよう、我に仇なす者達は全て白銀に染まる。さぁ、白銀に染まりなさい。ヴァイスリヒト!」その一言を合図として魔法陣の中から大量の雪玉が勢いよく守備兵、そしてベーンに襲いかかる。「ギャー」辺りからたくさんの悲鳴があがる。悲鳴が聞こえなくなるとそこには白銀の美しい世界が辺り一面に広がっていた。ただ一つ違和感を挙げるとしたら、あんなにたくさんいた守備兵達は、白銀の髪をした少女と馬車の中にいたアイ以外は誰一人、その足跡すらも残さず何処か遠い場所に消え去ってしまったこと。それ以外は本当に綺麗な景色だった。「アイ、私が浮遊魔法をかけてやるから出てこい。そしてこの美しい白銀の世界をお前も見てみろ。」と言い、アイに浮遊魔法をかけてやった。「きれい。だけど、この下には…」アイは何処か感動と悲しみが混じった顔で言った。「気にするな。これは仕方なかったこと。あいつらは操られていた。精神干渉系魔法をかけられた者は本人が強い衝撃を受けない限り、ゾンビのように襲ってくる。だから、仕方なかったことだったんだ…」私は自分に言い聞かせるように言った。その場の空気がどよみ始めた頃だった。「おやおや、これは古代の魔女ではないか。なぜこんなところにいるのかな。」といかにも嘘っぽい発音で聞いてくる影があった。
「それはこちらが聞きたい、魔王シュレッケン。500年前に殺したお前の気配がこの城からしたからもしかしたら、と思っていたがまさか自分から殺されにくるとは。どういう風の吹き回しだ。よもや500年前に私に完敗したことを忘れ、殺されたことを覚えていない訳ではないよな」と挑発ぎみに聞くと、「あの時、あなたに与えられた屈辱な敗北を忘れる訳がないじゃないですか。一つ言っておきますが今の私はあの時よりも何倍も強いんです。あの時よりも弱体化している今のあなたじゃ絶対に勝てない程にね。」シュレッケンはそう言い終わると真っ直ぐこちらに向かって走ってくる。シュレッケンの言っていたことは嘘ではないようだ。確かにあの時よりも速い。だがいくら強がろうと魔族が私に敵うはずがないのだ。私が魔王のため、魔族の為に開発した"あれ"を使えば全て終わるのだから。
とある魔族のメモ
500年前の屈辱的な敗北…勇者にとって魔王など大して強くなかったがその時の勇者は自らの魔法を実際に使ってみたかった。その結果、魔王を自らの開発した魔法の実験体として使った。その後3日3晩の実験の末、魔王はついに息絶えた。




