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第33話 迫りくる“擬態する者"

 段々と強くなる魔物と連戦しながらダンジョンを進む一行。

 そんな一行の前にある物が出現する。


 「ん、宝箱」


 レギはある曲がり角の奥で赤色の宝箱を発見する。


 「まじで!?」


 臆病者も憚らない白蛇は、宝箱と聞くと喜色を浮かべた。

 案外現金なのだなとフレイアは呆れるが、この中で一番ワクワクしていたのはレギだった。


 「ん、これこそダンジョン攻略の醍醐味!」

 「ドワーフってどうして強欲なのかしら……?」

 「ん、レギはドワーフにしては控えめで謙虚なつもり! というかエルフこそ質素を気取って格好良いとか思っている!」

 「あんだと! 穴蔵野郎!?」

 「どうどう、二人共喧嘩(けんか)は止すだ」


 急に種族的喧嘩をおっ始める二人に、慌ててバルボは制止する。

 興奮したレギは両手を上げて猛抗議した。


 「エルフのその鼻に付く洒落言葉は意味分かんない!」

 「ドワーフは単純に教養が足りないのよ!」

 「おいおい、お前ら仲良し姉妹だろ、なんで喧嘩するんだ?」


 古典において、エルフとドワーフの確執は幾度も描かれている。

 普段この二人は尊重し合って仲が良いが、種族の確執はやっぱりあるのだろうか。


 「ほら、レギも興奮しない」

 「んー、フレイアは嫌いじゃない。でもエルフは好きになれない」

 「それは私もよ、レギじゃなきゃ耐えられないわ」

 「ちなみにな、喧嘩は同レベルでしか起きないんだぜ」


 ピクリ、フレイアは長耳を震わせる。

 白蛇の薀蓄(うんちく)に、ハイエルフの傲慢さ(プライド)が引っかかったのだろう。

 一方レギの方も青い瞳を収縮すると、これまた嫌そうに首を振った。


 「エルフと同格とかありえない」

 「……ふ、ふん! 勝手にそう思ってなさい!」

 「……オークにとってのゴブリンみたいなもんなのか?」


 バルボからすると、仲良しなのに大喧嘩する二人が不思議でならない。

 あえてオーク族で喩えるならゴブリン族なのだろう。

 最もオーク族とゴブリン族は、天敵関係というだけであって、お互い種族を侮蔑することはなかったが。

 実際魔物街でも問題を起こすのはオークはオーク族同士で、ゴブリンもゴブリン同士でだ。

 意外とオーク族とゴブリン族は互いをちゃんと尊重しリスペクトしているのだから、エルフとドワーフの関係はやっぱり違うか。


 「まぁ喧嘩するほど仲が良いって言葉もあるけどな」

 「仲が良いと喧嘩するだ?」

 「知らない奴に喧嘩は吹っかけないだろう?」

 「そりゃ怖いもんな」


 バルボは特に身体が大きくて気が優しいから余計だろう。

 オーク族は全体的におおらかな種族ではあるが。


 「それよりも宝箱宝箱ー♪」


 白蛇は歌うように角部屋の中央に安置された赤い宝箱に這って近づく。

 宝箱はよくテレビゲームなんかでも見かける長方形の箱にアーチ状の上蓋という構成をしている。

 近づくと箱には豪華な飾り付けがされており、金の彫刻が散りばめられていた。

 よほど豪華な物を守っているのか、見た目だけでも期待感を煽るようだ。


 「ん、待って白蛇様」


 喧嘩よりお宝か、レギも慌てて追いかけてきた。

 宝箱の前に立ち止まる白蛇、器用に顎で上蓋を開けようとするが、その時【熱源探知(サーモスキャン)】が引っ掛かる。

 箱から体温を感じるのだ。

 白蛇は慌てて、後ろに飛び退いた。


 「なんだこれ!?」


 音に反応したのか、突然宝箱は《身体変化》……いや、むしろトランスフォームし、人型の魔物に変化した。

 その時の白蛇の絶叫は最大のものだった。


 「ギャー!? 宝箱がトランスフォームしたー!?」

 「ん! ミミックだった!」

 「ミミック!? これミミックなの!?」

 「擬態する魔物と書いて【ミミック】だもの」


 【擬態する者(ミミック)】は宝箱などに擬態し、近づいたものに襲いかかる、ダンジョンでは恐れられる恐怖の魔物だ。

 何故恐怖なのか、それはミミックの素早い動きにある。


 「うおおお、コイツ(はえ)ええええ!」

 「……!」


 慌てて逃げる一行、しかしミミックは一番後方のバルボに向かって飛び蹴りを放った。


 「くぅ!? 逃げ切れないだ!」

 「やるしかないわね!」

 「くそっ! 念の為だ《ステータスオープン》」


 【 種族 】 ミミック

 【 レベル 】 45/50

 【 ランク 】 ☆☆☆☆☆

 【 攻撃力 】 255

 【 防御力 】 190

 【 魔法力 】 100

 【 魔防力 】 211

 【 敏捷力 】 450

 【 スキル 】 擬態 格闘王 状態異常耐性・強


 「本当にこれはミミックなのーッ!?」


 白蛇の絶叫、能力を確認すると、もう突っ込みどころしかない!

 ゴリッゴリの物理偏重のスピード型なのは良いとして、格闘王ってなんだ格闘王って!

 因みに詳細説明は【あらゆる体術をマスターした証、全ての格闘技を使える】とのこと。

 つまり、バルボが受けた飛び蹴りは、正しい技名は《飛び膝蹴り》!

 あのムエタイの必殺技である!


 「くらえ!」


 フレイアは光の矢を番えると、ミミックに放った。

 しかしミミックは人差し指と中指で光の矢をキャッチ。


 「ゲェーッ!? あれは二指○空把!?」


 ミミックは光の矢をフレイア投げ返す。

 フレイアは咄嗟に身を捩り、返ってきた光の矢を回避した。


 「チィ! ミサイルガードか!?」

 「ん、接近戦しかない」


 レギは横から大槌をフルスイング。

 これは防御されても痛打は確実、有効打……と思われたが。


 「……!」


 ミミックはなんと大槌の上に乗り、腕組みをしていた。

 そしてレギに蹴りを放つ。


 「ンアー!?」


 直撃を受けたレギは吹っ飛ぶ。

 大ダメージだ、レギはすぐには起き上がれない。


 「ちょ、強すぎでしょ、こいつ!」

 「なろー!」


 白蛇は毒液をミミックに放つ。

 ミミックの耐性は強止まり、無効じゃないなら効く筈だ。

 だがミミックは平然としている、効いていない?


 「……覚悟を決めるしか、ねーだな」


 バルボは鉄の斧を両手で構えた。

 ミミックはゆっくり構えを取る。

 あらゆる格闘技を使えるミミックには無限の選択肢がある。

 どうあっても勝ち目が見当たらない。

 だがフレイアは。


 「茨の園を冒す愚か者よ、竜の血を受け継ぐ薔薇の威を恐れよ《ローズバインド》!」


 フレイアは空間に奇妙な紋様を描き、詠唱を行う。

 フレイアの古代魔法、空間に描かれた意味あるルーンは魔法陣を暗紫に輝かせる。

 フレイアの足元から床を砕いて茨が無数に生えていく。

 茨は生きているように蠢き、ミミックに向かって伸びる。

 ミミックは茨の園に囚われた。


 「よ、よくやったフレイア!」

 「当たり前よ、私は魔法だって一流なんだから!」


 長耳を揺らしながら、えっへんと鼻を伸ばすフレイア。

 後ろでムクリと起き上がったレギは、兜を押えながら言った。


 「エルフの高慢チキは耳にクラーケンが出来る」

 「優秀なのよ私がね!」

 「むぅフレイアが優秀なのは認める……けれど」


 レギは両手を合わせると、床を叩いた。

 するとミミックに吹き上がる火炎が襲いかかる。


 「《ラーバゲイザー》!」


 まるで吹き出すマグマのようにミミックは高温に晒されると、身動ぎした。

 だがそれだけではまだ倒れない、バルボはチャンスと見て踏み込んだ。


 「……!」


 それでもミミックはバルボを認識すると、右ストレートブローをバルボの顔面に叩き込む。

 だが耐久力ならオークを舐めてはいけない。

 バルボが吼える。


 「おおおお! くらえーっ!!」


 バルボはミミックを頭から一刀両断。

 ミミックは真っ二つになると、全身をバラバラにして活動を停止した。

 茨の園が解除されると、白蛇はくたばったミミックの(そば)に飛んできた。


 「と、とんでもない奴だった」

 「……ん、お?」


 バルボが自分の身体を不思議そうに見た。

 バルボの身体が明るく光っているのだ。


 「ランクアップだぞ、やったなバルボ!」


 バルボの光はすぐに消えた。

 まだ信じられないと、バルボは困惑していた。


 「オラが、ランクアップ?」

 「よし、《ステータスオープン》」


 【 名前 】 バルボ

 【 種族 】 オーク

 【 レベル 】 1/75

 【 ランク 】 ☆☆☆☆☆

 【 攻撃力 】 180(+50)

 【 防御力 】 92(+48)

 【 魔法力 】 60

 【 魔防力 】 45

 【 敏捷力 】 126

 【 スキル 】 狩人の才 設置罠の才 解体技術 弓術の知識 強靭肉体(スーパーボディ)

 【 装備 】 鉄の斧 鉄の鎧 鉄の兜


 思った通り、バルボはついに☆☆☆☆☆(ほしいつつ)にランクアップしていた。

 姿や種族に変化はないが、新たなスキル【強靭肉体】を獲得している。


 【強靭肉体:身体能力を大幅に強化、また自然治癒力を大幅に強化する】


 「うん、シンプルに物理方向で強化されてるねー」


 バルボは不思議そうな顔で掌を開いたり閉じたりしている。

 まだ自分の力がよく分かっていないのだろう。

 リュウイチも光の翼を獲得した時に、似たような反応だったと思い出す。


 「魔物って便利ね、そうやってランクアップして強さを引き継ぐんでしょ?」

 「ん、魔物の中には見た目が大きく変わる種もいる」


 フレイアはそれって白蛇よねと、リュウイチを指差す。

 厳密には神なのだが、分類で言えば魔物の方が近い気がして、ぐうの音も出ない。


 「オークって上位種とかいるのか?」

 「昔の伝説にはハイオークとか、オークキングとかいるだが」

 「でもそれってお伽噺レベルよね、エルフ族でも見たことないと思うわよ」


 ハイオークにオークキング、つまりバルボの種族が変わる可能性はあるということだろう。

 伝説と言うほどなら、並大抵のオークでは寿命の前にそこまで到達出来ない方が普通なのかも。

 オーク族は初期ランクが☆☆☆☆(ほしよっつ)なこともあり、ランクアップまで経験値を集めることが珍しいのかも。


 「リュウイチ様はまだランクアップしないか?」

 「俺は流石にまだみたいだなー」


 バルボがランクアップした決定的な経験値は格上のミミックを仕留めたおかげだろう。

 ミミックをリュウイチが仕留めていれば、逆だったかも知れないが。

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