31話 ダンジョンは罠もいっぱい
魔物に襲われながら、白蛇一行は螺旋階段を降りきった。
一体何メートル降りたのか、明らかに外から見たピラミッドよりも下層だったろう。
となると、ここは地面の下か。
ダンジョン内部は魔石に仄かに照らされ、ビッシリと石レンガで舗装されている。
ちょっとやそっとじゃ崩落はなさそうだ。
その一方で道が狭く横に並べない。
「隊列はどうするかねー?」
「オラが後ろは見ておくだ、オラ身体が大きいし前は邪魔になるだ」
「ならレギが前ね、私は中団」
「ん、白蛇様、頑張ろう」
隊列が決まると白蛇は飛びながら進んでいく。
しばらくは一直線、ここでは【熱源探知】が役に立たないと警戒を強めた。
ゴーストは体温が無い為、蛇の能力では探知出来ないのだ。
ダンジョンはゴーストのような魔物も多いなら、思ったよりも不利かも知れない。
それならそれで仲間と協力してレベルを上げよう。
仲間を守れるくらい強くなるのが目的なのだから。
「ん? なにか来る!」
「後ろからもだ!」
突然狭い通路内で挟み撃ち。
正面から来たのは蝙蝠の群れだ、【ブラッドバット】という☆☆の魔物である。
一方後ろから現れたのは【ゾンビー】、腐った死体が動くこちらも☆☆の魔物だ。
レギは早速持参した特製の鉄の大槌を振りかぶる。
ブラッドバットに振り下ろすが、ブラッドバットは軽やかに飛び回って回避した。
だが、風圧が凄まじくブラッドバットが壁に叩きつけられると、そこに白蛇の《エーテルショット》が襲いかかった。
回避力が高い代わりに耐久力の無いブラッドバットはボロボロになり、全滅する。
「ん、ナイスファインプレー」
「後ろは!?」
白蛇は直ぐに後ろを確認すると、ゾンビーはバルボの振り下ろした鉄の斧に頭をかち割られ動かなくなった。
バルボも問題ないようだ。
「次がこない内にさっさと進むべきね」
「ん、もう少し先、部屋が広がっている」
レギの言うとおり通路を通っていくと、ある程度広い玄室のような部屋に入った。
「ふいー、それにしてもダンジョンってやっぱりおっかねー」
白蛇は床に降りると、項垂れる。
レギは大槌を下ろすと、白蛇の隣に座った。
「ん、ダンジョンは中にあるお宝を守るもの、だから怖くて当然」
「まぁ俺の目的はお宝じゃなくてレベル上げなんだけど」
「だったらもっと先までいかないと、ザコばっかり相手していても経験値なんて稼げないわよ」
フレイアの言は白蛇も同意する。
本音を言えばザコをひたすら狩ってレベルを上げたいのだが、それでは時間が掛かりすぎる。
どこかのスライムを三百年倒し続けてレベルカンストさせた魔女のような悠長な時間はリュウイチには無いのだ。
「あー楽して強くなれたら最高なのになー」
「そんな上手い話あるわけないじゃない」
「ん、無い訳じゃない」
フレイアは無いと言うが、レギはあると言う。
思わず白蛇とフレイアは視線をレギに向けた。
「なにそれ?」
「【不思議な雫】と呼ばれるアイテムがある、この雫を飲むとレベルが上がる」
「どこぞの不思議な飴みたいだな……」
「そう言えば文献で見た気がするわ。でもあれってダンジョンの最奥とかにあるレアアイテムでしょう?」
どうやらマジモンに飲むだけでレベルが上がるチートアイテムはあるらしい。
「じゃあ不思議な雫を999回飲んだらレベルカンストだな」
「途方もないわね、それだけの数を集めている間にレベルカンストじゃない?」
「あるいはお金にモノを言わせれば……」
「ラクして強くなって、強さは身につくだか?」
バルボはチートアイテムでレベル上げても、強くなれるのか疑問のようだ。
たしかにいくらレベル999でも、戦い方を知らなければやたら能力値の高い子供でしかない。
技、技能というものは磨いてナンボなのであろう。
「結局努力がいるってことかー」
「さっ、休憩もここまで、さっさと奥へ進むわよ」
フレイアは弓を構え準備万端、レギも大槌を持ち上げると立ち上がった。
「ここから分岐がある……白蛇様、どうする?」
「行き止まりとか分かるか?」
「んー、もう少し進まないと分からない」
レギのマッピングもある程度進まないと把握出来ないか。
白蛇は光の翼を広げると、歩く速度で飛ぶ。
一行は再び通路を進んだ。
やがて別れ道が目の前に現れた。
「どっちだ?」
「んー、どっちも行き止まりは遠そう」
「はっきり分からないの?」
「ん」
「なら右だ」
「リュウイチ様、なんでだ?」
簡単なことだ、リュウイチは勘で選んだに過ぎない。
道は左右に別れ、その先は見通せない。
なら、考えるより行動である。
こういう時白蛇の行動は迅速だ。
迷うと永遠に迷い続ける、なら頭空っぽで決めた方がラクなのだ。
「罠とか無いといいけど」
フレイアの不安。
リュウイチも楽観視はしていない。
だが同時にまだ危険な程ではないだろう。
バルボもフレイアもレギも優秀だ、このパーティなら大抵のことには対応できるはず。
だったのだが……。
カチン。
不意にそんな音がした、踏んだのはバルボだ。
「おいバルボ?」
「……なんか、やばいだ!」
ドドドドドド、なにか重たい物が迫る音がする。
一行は背後を確認すると顔を真っ青にした。
巨岩が猛スピードで迫ってきた!
「だぁー! 走れ走れー!」
「白蛇ズルい! 飛べるんだから!」
「ん、言い争いしている暇はない」
「はっ、はっ! 皆すまないだ!」
バルボは罠設置の知識はあれど、罠解除の知識はない。
当然フレイアやリュウイチにもなく、解除出来るとしたらレギだが、レギの鼻は生憎そんなに良くない。
こうして一行は巨大な丸い岩に押し潰されようとしていた。
「ローリング・ストーンズからは逃げられない! 俺たちは運命の奴隷なんだ!」
「ざけんなぁ! 私は奴隷になんかならないわよーっ!」




