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第27話 これからの魔物街は

 魔物街も順調に発展を見せている。

 それは空から見下ろせば一目瞭然であろう。

 かつて小さな村落があっただけの場所は、今やその面積を何倍、いや何十倍に膨らんだのであろうか。

 街の中央、何度も改装を重ねた蛇神の眷属である白蛇リュウイチの住まいでもある中央市庁舎が建っている。

 現在魔物街にある最先端の建築技術を用いて建てられた市庁舎は、先のゴブリン族襲撃を教訓に耐火性と耐衝撃を重視し、鉄骨とコンクリートを用いた強度の高い建物に変貌していた。

 これは住民にここが最も格式の高い場所であると示すと同時に、有事では避難場所になることを目的としたためだ。

 リュウイチの臣下達は王宮(パレス)を建立することを提言したが、そこは「俺は王様じゃない」とやんわりと断ったという。

 今は兎に角建物を増やすべき、白蛇の贅沢に資源と労働力を使うべきではないと、しっかり釘は刺された。

 この街ではかなり背の高い市庁舎、その三階に白蛇の私室はある。

 私室には木枠に収められた窓があり、市街を一望出来る。

 窓はハイドワーフのレギが齎した硝子(ガラス)精錬技術によって、厚さ一センチの透き通ったガラスが用いられていた。


 市庁舎の周囲には、魔物街の主要施設が立ち並ぶ。

 オーク族官僚の住まい、そしてゴブリン族官僚の住まいだ。

 街の東側はオーク街区となり、反対側の西側はゴブリン街区となっている。

 種族で住まう街区が別けられたのは、種族間の軋轢(あつれき)()ける為だ。

 今だオーク族とゴブリン族には、苦手意識のようなものがあり、それが少なくない衝突にもなっている。


 大抵の問題はリュウイチが収めているが、人口は日毎に増えており、こういう問題は無視できないものになったということだ。

 嬉しい悲鳴の反面、放ってはおけない。

 そこでゴブリン族の指導者にして聖星教の聖女アイの提言の下、警察署の設置を行うことに。

 リュウイチはアイの提言を承諾し、オーク族ゴブリン族を隔てることなく警察官となるべく、教育を開始し、そして各地に派出所を建て、これらの問題を当たらせることになった。

 その効果は覿面(てきめん)であり、住民の問題は大抵が派出所で解決出来ている。

 だが同時に問題はまだまだある、ノウハウが全く無い内はヒューマンエラーを逐一(つぶ)してマニュアル化するとにかく試行錯誤トライ・アンド・エラーの繰り返しだ。


 北区には人口の大半を締める二大種族ではない、コボルト族の住まいが並び建っている。

 今や街の経済を一手に担うのは商才に恵まれたコボルト族だ。

 コボルト族の為に建てられた商館を中心に、いくらかの部族がこの街に訪れるようになった。

 リュウイチの臣下の一人コボルトのオストは今や魔物街には欠かせない経済のアドバイザーになっている。


 南方には今や広大な農園が見えてくる。

 街の住民を充分に賄えるのは、農園の管理者であるハイエルフのフレイアの恩恵だ。

 フレイアは数々の農業改革に成功し、また自身が優れた古代魔法の使い手であったことから、農園には様々な野菜や果物が日々実っていた。

 この街で食べられる米――オーク米はもはや特産品となり、あのリュウイチの大好物として有名になりつつあった。

 他にも小麦、大麦なども栽培され、小作人達に管理されていた。

 また果樹園も発達しており、リンゴを中心に最近はイチゴの試験が行われている。

 フレイアは美味しいイチゴを品種改良するため、日夜農園で仕事に励んでいた。


 一方、北東部には街の開発を一手に担ったハイドワーフのレギの工房がある。

 レギは数多くの弟子に技術を教え、今や北東部は金属加工を中心とした工場街へと変貌していた。

 今だ職人たちの技術はドワーフ族はおろか、人族のそれにも劣るのが現状だが、工業は堅実な成長を見せており、リュウイチもこの結果には大満足だ。


 そして街の外周は、白い白亜の壁に囲まれていた。

 壁は十メートルもある高い壁となり、門は重厚な鋼鉄製となった。

 これもやはりゴブリン族襲撃の教訓であったと言えよう。


 更に街の外まで開発は進んでいる。

 コボルト族の強い要望もあり、コボルト族のホームである大森林北部地域までの環境整備が行われたのだ。

 コボルト族は大森林では弱い種族であり、危険な森を抜けて魔物街へと入るには危険が多過ぎる。

 リュウイチとしても、コボルト族を手放すのはあまりに下策と感じ、最優先としたのが道の整備だった。

 幅四メートル、地面は押し固め、道路を遮る木々は伐採し、これを北部まで開通させると、コボルト族の交流は大きく増加することとなった。

 道路開発のノウハウは、その後南部のゴブリン族開拓地や、各地鉱山への道路整備へと繋がった。

 将来的には森の外、つまり諸外国へと道路を(つな)げる野望もあるが、一先ずは知性魔物の交通を安全にすることが目的だ。


 そんな魔物街周辺は、日々発展を見せている。

 森北部を行き来するコボルト族は、魔物街を交易の場所として、そして安全な宿として利用し、今や様々なコボルト一族が見られるようになった。

 森林南部と繋いだ道路ではゴブリン族が行き来していた。

 開拓村のゴブリンこそ魔物街への強制移住を行ったが、依然として洞窟住まいのゴブリン族は多く、そんなゴブリン族も気軽に行き来が可能になったのだ。

 レギの開発した鉱山は今や鉄だけでなく、銅に銀、コバルト鉱山と様々な開拓を行っている。

 更に宝石鉱山への着手では、これが経済では大当たり、コボルト族の宝石商にも取り扱って貰える原石も多く、魔物街では着実に貨幣取引が定着しつつある。

 これまでオーク族もゴブリン族も、村で得たものは全て共有財産だった時から、物々交換を経て、貨幣経済に変わりつつあるのは、リュウイチにも感無量であった。


 「今や平安……いや安土桃山時代くらいの文明力はあるんじゃないか?」


 街を上空から俯瞰して、白蛇は満足げであった。

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