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11話 出来ること、出来ないこと

 「農耕かえ?」


 リュウイチは大森林で偶然見つけた稲穂を持ち帰ると、農耕についてオーク村の村長でもあるお婆様のマハーラに相談した。

 しかし農耕を全く知らないマハーラの反応は実に素っ気ないものだった。


 「リュウ様が言うんじゃ、きっとそれは凄まじい可能性があるんじゃろうが、我々オークはそれを知らん」

 「だからさー、研究しようよ、これは革命レベルのブレイクスルーだよっ!」


 白蛇の熱意は凄まじいものだ、マハーラもリュウイチのやりたいことを否定するつもりはない。


 「リュウ様にお任せしましょう、ワシはもう歳じゃからな」

 「おっしゃ! 絶対に白ごはん食べるんじゃー!」


 意気揚々、白蛇は小屋を飛び出していく。

 マハーラはそんな小さな背中を見て、優しく微笑(ほほえ)んだ。




          §




 「農業? そりゃなんだべ?」

 「その小さい植物が食えるのか?」

 「うーん、どうすればいいべ?」


 ……詰んだ。

 リュウイチは片っ端からオークたちの能力値(ステータス)を確認したが、当たり前だが農業系のスキルを持つオークは存在しなかった。

 いや無いなら育てればいいだけの話なのだが、そこで問題がある。

 リュウイチも農業を全く知らないのだ。

 植物の神様じゃないんだから、種を撒いたら勝手に育つなんてご都合主義はこの世界には存在しない。

 そもそもお米の育て方なんてまるで知らないのだ。

 何故農耕文明が石器時代を終わらせるブレイクスルーだったか、その高過ぎる壁に白蛇はただ涙するしかなかった。


 「お米の神様ー! 美味しいお米の作りかたを教えてくれー!」


 なんて叫んでもお米の神様は答えちゃくれない。

 というかいるのか、お米の神様って?


 「ああもう、蛇神様、お米の作りかたを教えてください!」

 『無茶いわないでよ、蛇は肉食だよ?』

 『猫もなー』


 全くリュウイチの神様は役立たずである。

 仕方なく一旦稲作は諦め、リュウイチは村から飛び出した。


 「もうこうなったら、森の外まで行って農民を拉致するしか!?」


 言っていて拉致は完全にアウトの所業です。

 人神がこの元人の子を見れば、ますます涙で頬を濡らすでしょう。

 それくらいお米にたいする渇望(かつぼう)があるのだ。

 銀シャリの魔力は、日本人であったリュウイチには抗えない。


 「あーもう、なんで俺ってこんなに無力なんだろうー?」


 人間として生きていた時は普通の家庭で普通に生き、社会人になってからは、ある証券会社に勤めていた。

 コミュ力はまぁまぁ自信もある、だがなにかを作るというのは大の苦手だ。

 昔から図工の才能も美術の才能もなかった。

 国語や数学はそこそこという程度。

 至って平凡に生きてきた。

 土台空っぽだったのだなと、今頃になって痛感する。


 「うん、だからこそ蛇生は充実させるんだっ、とりあえずレベル上げっしょ!」


 早速目の前には赤毛の大熊【マーダーグリズリー】が出現する。

 マーダーグリズリーは咆哮をあげ、爪を振り上げた。

 だがリュウイチは(きば)から毒液を吹き、マーダーグリズリーに浴びせる。

 マーダーグリズリーは全身に毒が周り、あっという間に倒れた。


 「すまないマーダーグリズリーよ、俺の経験値となれ」


 マーダーグリズリーに鎮魂を捧げると、彼は自分のステータスを確認。


 【 名前 】 リュウイチ

 【 種族 】 白蛇

 【 レベル 】 20/25

 【 ランク 】 ■♂

 【 攻撃力 】 68

 【 防御力 】 120

 【 魔法力 】 164

 【 魔防力 】 105

 【 敏捷力 】 110

 【 スキル 】 蛇神の加護 猫神の加護 能力鑑定(ステータスオープン) 光の翼


 「うーん、やっとレベル20かー」


 ステータスもようやく三桁の能力値が出てきた。

 次のランクアップもようやく見えてきたぞ。

 次はどんなトンデモスキルが手に入るのやら、楽しみなような怖いような。

 蛇神からすれば、『えっ? 私の眷属弱すぎ?』だそうなので、むしろ滅茶苦茶強くなって欲しいそうだが。

 強くなることは(やぶさ)かじゃない、まだまだリュウイチより強い魔物は数多くいる。

 強くなければ護れないものがある以上、弱いままはリュウイチが一番許せないのだ。


 「次はどいつだー!」


 リュウイチは光の翼を広げて飛翔する。

 今度は【キラービー】の群れが目の前に集団で飛んでいた。


 「《エナジーショット》!」


 光の翼から無数のエーテル弾がキラービーに群れに襲いかかる。

 キラービーは体長30センチほどの毒蜂だが、硬い体皮は光弾を弾いてしまう。

 だが翼や、関節部のような脆い部位に当たると、キラービーの半数が墜落する。

 攻撃を受けたキラービーは当然リュウイチに襲いかかった。


 「チッ、攻撃力は今ひとつかーなら!」


 リュウイチは毒液を周囲にばら撒いた。

 キラービーは毒耐性がある、だが撒いたのは麻痺毒。

 麻痺耐性のないキラービーたちは痺れ、一斉に墜落していった。

 それでも何匹か、それを免れた個体が、背後から強襲した。


 「やべっ!」


 咄嗟に光の翼防御形態(エナジープロテクト)で防御する。

 キラービーは光の翼で阻まれ、お(しり)の針も届かない。


 「とりゃー!」


 リュウイチはキラービーに噛み付く、強力な毒を流しこむと、最後の一匹は倒れた。


 「ふぅぅ……まだまだだなぁ」


 キラービー相手に安心して勝つにはまだ早い。

 白蛇もまだまだ弱小の魔物と同じという証だ。


 「めげないしょげない、やってやるぞ俺!」


 リュウイチは森の奥へと更に飛翔する。

 やがて太陽が落ちていくのも忘れて。




          §




 大森林とその外の境界線は街道であった。

 だが大森林の入口といえる場所で幌付きの馬車が大破していた。

 大森林――光刺さない深夜にも関わらず、足音が二つ、森の中で静かに響いた。

 暗い森の中を一心不乱に走るのは、二人の少女であった。

 一人は褐色で背の小さな少女、もう一人は肌が白く背丈は一六〇程度。

 二人共身なりは酷く薄汚れ、粗末なボロ布を身体に巻きつけていた。

 ジャラジャラ、よく見ると二人は鉄で出来た鎖を引きずっていた。

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