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影の中の灯

作者: ごはん

ふとした瞬間に、誰かの言葉が胸をよぎる。


 「そのままで、いいんだよ」


 そう言ったのは、高校時代の担任だった。怒ってばかりいたけれど、卒業前に静かにそう言われたのが忘れられない。


 歩いていると、足元を見て思い出す。何度も一緒に帰った友人の靴音。話しながら、歩幅を合わせてくれたことがあった。あのとき、何も言わなかったけれど、心がじんわりと温まったのを覚えている。


 そして今。

 ひとりで歩いていても、私はたくさんの面影を心に宿している。


 顔を思い出せない人もいる。名前を忘れてしまった人もいる。でも、その人がいたから、今の自分がいる。そう思うと、不思議と寂しくはなかった。


 失敗して落ち込んだ日もあった。泣いた夜もある。

 そんな時、心の中の誰かがそっと言う。


 「それでも、歩いてきたね」

 「ちゃんと、選んできたよ」


 私は、自分の中にいる誰かの言葉で、立ち上がってきたのだと思う。


 ひとりで決めたように見える選択の中には、誰かの言葉やまなざしが混ざっている。

 それはまるで、かつて灯してくれた小さな火のように。いまも私の心の奥で、消えずに灯っている。


 そして今日も、私はまたひとつ選ぶ。

 自分の中の誰かたちと共に。

 影の中に、確かな灯を抱いて。


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