カリエの国勢と東方流民
お疲れ様です。
説明多めでごめんなさい。
アンリがなぜ親元を離れて、アナマリーと二人で僕の国、ゾルタン王国へ来たのかの話。
アナマリーが成長する僕たちに合わせて、少しずつ説明してくれた事によると。
カリエ王国はゾルタン王国の北東にあって、一年の半分近くが雪に覆われる。四方を高い山脈に囲まれたカリエ王国は中央部分の平地に首都もあり、人口が集中していた。山脈からの豊富な水量のある川は首都で集まって大きな河となって、唯一山並みの切れたカリエ王国の北の大国――ソルヴェノナ北帝国――に流れていた。そして遥か北の海まで繋がった大河で船による物流が活発だった。狭い平地や山肌を利用して、農業も林業も面積の割に収益を上げていた。鉱産資源は豊富。数ヶ所ある火山と温泉、近年は観光にも力を入れていた。
「僕の国って凄いよね。小さくても、元気な国だよね」
アンリが嬉しそうに言った。目がキラキラしてる。
「ふふふ。そうなんですけどね。カリエは地勢的にソルヴェノナに依存する部分が多くて」
ソルヴェノナ北帝国は大陸の一番北にあって、カリエ王国やゾルタン王国より十倍以上広い面積を誇り、冬は日中の気温がプラスになる事はない寒い国だが、乾燥気味なので積雪量は多くない。また、沿岸部に暖かい海流が流れ込んでいる為、酷寒でもどの港も基本不凍港。暖海流のせいで北の海沿いが国内でも一番暖かく、港町には商船関係の豪商の大きな家が並んでいた。豪商たちは街がすっぽり入るような大きな船を持ち、大陸中を東回り、西回り廻船として回って、貿易で莫大な利益を上げていた。
「カリエは立場的に、古い昔から、ソルヴェノナの従属国に近いかもしれません。ただ、今まではあまり旨味がなかったのでカリエに手出ししてこなかったのです」
ある年から、海流の流れが変化した。
港の半分が冬に使えなくなった。廻船が回れず、冬季は港に待機することが多くなった。そんな年は海が予想出来ないくらい荒れ、港の凍結のために、春までの手間賃稼ぎに、ソルヴェノナ北帝国に寄らずに大陸の南側を往復して荷物を運んでいた廻船が何隻か沈んだ。何でそんな事が続くんだろう? これは何かの呪いなんだろうか? 我が国に比べて、カリエ王国は景気が良さそうだ。おかしくないか? 我が国の河を船を使わせてやっているのに。
皇帝まで病気で代替わりした。後を継いだ若い皇帝は、事態を好転させたかった。早く皆に認められるいい方法はないだろうか?