母の葬儀は月の宮の中でひっそりと行なわれた。
おはようございます。
あんまり読む方の時間が取れなくて、他の方の作品が読めていません。
なのでお作法的なこともわからないまま。
失礼があったら申し訳ありません。
ずっと俯いている国王と、母の実家から伯爵家(母の結婚の時に男爵家から陞爵されていた)を継いだ母の兄が参列しただけで、ひっそりとした葬儀だった。僕はずっとアンリと手を繋いでいた。僕たちは母の棺に両手一杯の色とりどりの花を供えた。
それからしばらくの間僕は、心の中の三分の一程に暗雲を宿したままだったけど、アンリと過ごす毎日は満たされていた。母がいなくなっても、月の宮は僕とアンリを守り育ててくれていた。アナマリー達の力で。そうして居るうちに少しずつ心は晴れていった。
僕とアンリの事をどう伝えたらいいんだろう? 考えてみて。僕が好きな物や事の話をすると、アンリが自分も好きだって言って、僕よりも詳しくその物や事について話しだすんだ。何の話をしてもずっとそうで、好きなもの、知りたい話、楽しいこと、全部全部そうだねって言ってくれるし、僕もそう言える。お互いのまるごとを肯定してくれてまるごと受け止めてくれる人がいるなんて、すごく満ち足りて幸せなことなんだ。
アンリと一緒なら、勉強も、乗馬や鍛錬も、何をしても楽しい。頑張れる。アンリがいれば僕は完全体。無敵だ。
月の宮の裏手は森、その奥は丘が連なっていた。そこから小動物や鳥達が、奥まった宮にもやってくる。りす、うさぎ、イタチや貂。ツグミやヒバリ、カササギ、フクロウやナイチンゲール。生垣やトピアリーの内側とかに小鳥達は巣を作るんだけど、アンリと毎日雛を観察した。森を抜けて丘まで外乗に行った日はアナマリーにお土産のベリーを摘んで帰ったりした。とにかく晴れた日も、雨で外に出られない日も、嵐の日だってアンリがいたら楽しいんだ。
カリエの王宮の様子がよくわからないまま、アンリはそのまま五年近くゾルタン王国で過ごしていた。