それぞれに二人分の記憶
おはようございます。
今日で全部あげ終わります。
よろしくお願いします。
その後は、食事をしながら話した。
アルノーとルネは本当に空腹だったので、安心したのもあって、パクパクと食べ始めた。ルネのテーブルマナーが更に酷いことになっていたけど、誰も気にしなかった。
「私とシモンに記憶が戻ったのが、二ヶ月くらい前なの」
マリローズも今日は平服。あまりヒラヒラしていない服を着ているけど、やっぱりキラキラしていた。グルーディアス領領主シモン・ドラクールはニコニコ話すマリローズをずっと微笑んで見つめていた。
「バリュティスの屋敷にグルーディアス領との共同作戦完了でシモンがルネと挨拶に来たの。その時に、挨拶の為に私の手を取って……。シモンはふらついたくらいで耐えたけど、私は倒れて、ルネが支えてくれたの」
アルノーとルネはまだまだ食べていたけど、マリローズとシモンはもうお茶を飲んでいた。
「あれはすごい衝撃よね。人一人に、もう一人分の記憶が追加されるの。」
ねぇ、と言ってルネを見る。肉を口に詰め込んだばかりのルネは声を出せず、何度か頷いて肯定した。
「まぁ、お兄様はずっとそうなんだから、大変だったわよね。あれ、二人が東方流民ではなかったことと、子供すぎたことが原因みたい。東方流民ではなかったから、魂は鳥に乗せられても巡り会うまで記憶を仕舞って置けなくて。あー……」
少し声を落として、マリローズは言った。
「子供すぎた、は……キスくらいしておけば良かったかも。誓いが強くなるから」
アルノーとルネは、今はもうそんな事どうだって良いくらい幸せだよ。って、お互いを目で見合った。
「これでも、記憶を取り戻してすぐにお兄様のところに来たんだから。シモンと話して、お父様とお母様を説得して」
マリローズは少し遠く、大聖堂の尖塔に飛び交う鳩を見てから言った。
「来て直ぐに言わなかったのは、ごめんなさい。意地悪したし、感動を盛り上げ……」
シモンがマリローズの手を握ったので、話が途切れた。
「多分だけど、私とルネが記憶を取り戻す前に惹かれていたのは、懐かしい感じがしたからだと思う」
「ほんとだ。今となっては兄妹みたいに感じる」
ルネもそう言った。
シモンとアルノーはそれぞれの伴侶の手をとって口付けて言った。
「共にいてくれる事が嬉しいんだ。ずっと一緒にいてくれ」




