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そうしてふたり     ※

おはようございます。


これと次の二つのエピのみR15です。

ちょっと気を許すとR18になっちゃうので大変でした。

よろしくお願いします。

 ドアを開けると、中もアナマリーの家にそっくりだった。時々アルノーが使うので、普通の家の様に日用品も食材も揃っている。掃除も何も、他の誰かにはさせずに全てアルノーがやっていた。


 食器棚、テーブル、調理器具、窓の内側の飾り枠、月影が枠の模様を床の上に落としている。ルネはぐるっと見渡して、懐かしく思い、色々聞きたい気がしたが止めておいた。


 アルノーには生まれてからずっとシャルルだった頃の記憶があるのに、ルネがアンリの記憶を取り戻したのは、ほんのさっき。それでも思い出した瞬間から、まるで最初から持っていたかのように、十二年の記憶は彼の中に溶け込んでいた。アルノーがシャルルであるのと同じように、ルネはアンリだった。


 ルネは中に入ると、軽くアルノーを抱き上げて、入り口すぐの居間兼食堂を抜けて、寝室へ。月明かりで照明は十分だった。ゆっくりとベッドの上にアルノーを降ろすと靴を脱がせた。自分も靴と上着を脱いで、アルノーの足元からベッドに上がった。


 アルノーは戸惑ったように、仰向けに両肘をついて体を支えていた。まるでいまにも消えてしまいそうな気がして、ルネはそっと両手でアルノーの頭を寄せてキスをした。それからルネはちょっと笑って、自分の歯を爪で叩いてコンコン音を出した。アルノーが口を閉じたままなので、開けろと伝えた。


 そんな風に最初の時、二人は一言も喋らなかった。言葉は要らなかった。

 ルネはアルノーが戸惑った顔をするたびに口付けた。

 

 アルノーはただ、ルネが居てくれたら良かった。ルネが共にそばに居てくれるだけで、満たされていた。

 そうか、この時をずっと待っていたのかと思った。マ・シェリ アンリ、マ・ベル アンリ、僕の愛しい美しいアンリ。逢いたかったよ。君の薄いブルーの瞳が恋しかった。君のふわふわのプラチナブロンドに触れたかったよ。


 月が二人を見守っていた。お互いの瞳をたびたび覗き込み、手を繋いで、キスをした。

 静かに時が流れていった。


 

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