ルネの気持ちを
お疲れ様です。
今日から、一日三回更新に変えました。
ラストスパート!
思うだけで辛い。
シモン・ドラクールが登城したのは三日後だった。
それまでの三日間、マリローズは度々中庭でルネと散歩をしたり、東屋でお茶をしたりしていた。マリローズにしてみたら『仲の良い幼馴染』ではあるんだけど、側から見たら、『恋人同士』にしか見えなかった。特に偶然マリローズのドレスとルネのシャツの色が揃った時などは、侍女達がお似合いだと話しているのがアルノーにも聞こえた。二人を見かけた時には、声をかけに中庭に出て……うそだ。ルネの顔が見たいんだ。
ルネの陽に透けるプラチナブロンドが見たい。薄いブルーの瞳が見たい。こっちを見て笑ってくれないか?ブルーの瞳を軽く細めて。まぁ、そんなことは無いんだけど。ルネは常に、アルノーではなくマリローズを見つめている。
マリローズと二人でいるルネの目が笑顔が言葉が、マリローズに対して優し過ぎて、全てを物語っている気がした。
そんなルネを見ているこちらが苦しいとアルノーは思えるのだ。特に好かれてはいないけど、嫌われるのはもっと嫌だな。
お似合いだけど、マリローズ様とブランシュ卿では格が合わないのが残念よね。そんな声も聞こえてくる。マリローズは王妹。ルネ・ブランシュは地方貴族の次男だった。別にそのせいではない。マリローズの希望なんだ。アルノーはルネの気持ちを思うと辛い気持ちになった。
いよいよ、三日目の朝。
朝は格別に涼しかった。輪郭がはっきりするようなキリリとした空気の中で、アルノーはここ数夜の浅い眠りから覚めた。身支度をして、執務についていると、知らせが入った。グルーディアス領領主シモン・ドラクール到着。午後の式の前に、人物を確認しておきたい。隣の部屋で挨拶をすることにした。
シモン・ドラクールはふわりとした優しそうな男だった。癖のある茶色の髪は少し長めで、頭の後ろで括っている。濃いめの茶色の瞳は笑うと目尻がグッと下がる。声もどっしりして、落ち着いている。領主としては、真面目で不正なところもない。発明家で、いろんなアイディアを生活にいかし、周りもよく見ている男だそうだ。公爵家。家格は問題ない。ただ、人物に文句はないが、経歴には少し納得がいかない部分はある。二十六歳。マリローズより十歳年上。二十歳の時に結婚した最初の妻を一年後に病で亡くしていた。子供はいない。領主としては、後継のためにも再婚をと思うだろうが、十六歳のマリローズとは釣り合わないんじゃないか?
そう、マリローズはグルーディアス領領主シモン・ドラクールに降嫁したいんだそうだ。




