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マリローズの願いとは

お疲れ様です。


暑すぎて、私のカラチをとどめて置けません。


よろしくお願いします。

 初夏の日差しが眩しく降り注いでいた。廊下では。

 皇宮の皇帝の執務室は日除のために北向きに造られていた。もちろん、カーテンはあるけれど。この季節は、北と東の窓を開けて、風を通しながら仕事をしていた。安定した明るさはあるが、直射日光は入らない、それでも窓の外に目を向けて庭の景色を見ればとても眩しい。神の祝福の季節だ、正に。


「は……あぁ」

 溜まった重い気分を溜め息として声に出してみたが気分は晴れず、アルノーは肘をついて、両手の指を絡ませた上に重い頭を乗せていた。

 勿論、昨夜は眠れなかった。アンリ。なんで僕たちは会えなかったんだろう?なんでアンリは僕が分からないんだろう?何が悪かったのか?僕たちはまた巡り合って一緒にいられるはずだったんじゃないのか?巡り会った時には、もう手が届かないなんて。マリローズ……マリローズとの恋を応援しなくちゃ……。マリローズとは恋、僕とは友情を結べるはず……かも?一緒にはいられなくとも?それでいいなんて思うのか?

 何億回も巡らせた想いをまた百周ほど回して、背を伸ばして、廊下へ出てみる。長い廊下の片側は各部屋の入り口が並んでいる。もう片側は窓がずらり。鳥の影が、並んだ窓の端から端まで飛んでいった。


「お兄様」

 マリローズがいつの間にか、後ろに立っていた。


「ごきげんよう、お兄様。今、大丈夫かしら?」

「あぁ、マリローズ。昨夜はお疲れ様。よく眠れたかい?」

 薄い黄色のドレス。アクセサリーも着けず殆ど化粧もしていないマリローズは、今日も輝いていた。


「お茶を」

 執務室の隣の接遇のための部屋にマリローズを招き入れ、向かい合って座る。

 程なく侍女がお茶とお菓子を運んできた。アルノーはまだ昼食を摂っていないので、サンドイッチに手を伸ばした。いや、なんなら昨夜から何も摂っていなかった。


「お兄様、お願いというのは」

 マリローズが話し出したので、アルノーはサンドイッチを置いた。

「グルーディアス領領主シモン・ドラクール様とルネ・ブランシュ卿の褒章の話なんですけど」

 あぁ、指先が冷たくなって震える。


「私を降嫁させてくださいませ」



 


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