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アンリに逢いたい

おはようございます。


七百十八文字の中に『逢う』は何回出るでしょうか?



大人になっても、生まれてすぐからの渇望は全く癒されてはいなかった。


 どんな思いかというと、ゾエが取りなしてくれるまでは、夢の中で会っていたアンリが目覚めるといないので起きている間は泣いていた。

 その後は、日中泣く事はあまり無くなったが、朝の目覚めには

「アンリ!」


 生まれた。アンリに逢いたい。歩いた。アンリに逢いたい。話した。アンリに逢いたい。

 とにかく常に頭の中をアンリが占めていた。まるで、心の半分を乱暴に毟り取られたかのように、アンリのいない生活はヒリヒリとした感じだった。ゾエの言った通り、アンリを呼ぶ時に、マ・シェリとかマ・ベルとか付けると何かふんわりと大事に抱えるように優しい気持ちになって少し落ち着いた。


 常に頭の中にアンリに逢いたいという気持ちがある。頭の中の残り一割くらいを生活や仕事に無理やり回していたが、生活や仕事には全く問題なかった。日中現れるアンリの幻と現実を混乱させないようにする。一瞬で消えてしまうので、喜びと悲しみの気持ちの落差は蓄積して、夜になると澱になって襲ってくる。幻を見た時につい微笑んでしまうので、そこにいる誰かに誤解されてしまうのも厄介だ。


 何年も何年も、身の回りにも、市中にも探し続けたがアンリには逢えない。どうしようもない気持ちの時は夜空を見た。星を見た。あの雪山の怖いくらいの美しい星空を思った。二人の魂は結びついたままだから、二人の死はこの今の生の始まりのはずだ。どこかに必ずいる。探さないと。アンリに逢いたい。


 マ・シェリ アンリ

 マ・ベル アンリ

 逢いたい。逢いたい。逢いたい……。


 と言う思いを、顔に出さずに国事を遂行する。そんな日々だ。


 

文中に十回。タイトル入れると11回。でした。

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