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会いたい 会いたい 会いたい

お疲れ様です。


後半スタートです。


よろしくお願いします。

 数年経ち、数十年経ち、数百年が経った頃、大陸中央の国に皇太子が生まれた。


 平和な大陸はほぼ五つの国に分かれていた。東西南北の端の国は何百年もずっと変わらない様子だったが、大陸の真ん中の沢山の国は皆一つになっていた。ルブラ連合帝国といった。ゾルタン王国もカリエ王国もその他の十余りの国が、今や一つになっていた。大陸全体が、足りないものを補い合い、助け合って、この百年余り豊かな平和が続いていた。


 東方流民を悩ませた伝染病は混血することで呆気なく治った。流民達は今や純血種と呼ばれる者は珍しくなった。大陸の至る所で土地に馴染み、自分が元々東方流民の血筋と知らない者すら存在した。その能力は一般に薄く広く伝わっていた。稀に、特殊能力として濃く持っている者も、環境が整わないせいで本人も気づかないことすらあった。それもまた、平和と言えた。


 ルブラ連合帝国に皇太子が生まれた。


 皇帝と皇后は成婚して八年、子供に恵まれなかったが、九年目に生まれた待望の子供は男の子だった。黒髪の皇太子。瞳は藍色に近い紫。アルノーと名付けられた。十月(とつき)に満たなく生まれてきたが、まるまる福々とした赤ん坊だった。全てが満たされているはずなのに、なぜか生まれてからずっと起きている間は泣き通しだった。空腹を感じるまでもなく乳を与えられ、むつきは汚れる間も無く取り替えられていた。睡眠に至っては、むしろ傾眠傾向。泣き疲れるのかもしれない。どこか悪いのかと何人もの医者に見せたが、体は健康そのもの。少しだけ話せる様になる一歳過ぎまではずっとその調子だった。


 ある日皇后が優しい風の入る窓辺で、アルノーを胸に抱きながら穏やかな声で語りかけた。

「アルノー、夢の国に誰か会いたい人でもいるの? あなたは泣くか眠ってばかりね」

「うん」

 小さな皇子が偶然のように答えた。周りは皇子のむずかり声が偶々そう聞こえたのかと思って笑った。


「そう。誰がいるの? 夢の国に」

「アンリ」

 はっきりとした声に、その場にいた全員が顔を見合わせた。


 


 

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