一緒に行こうね
お疲れ様です。
やっと梅雨明け。あんまり雨は降らなかった梅雨でした。
関東地方は。
よろしくお願いします。
アナマリーの亡骸は毛布に包んで花束を乗せた。
夜はアンリと僕とバアルで身を寄せ合って眠ることにした。ため息一つ、呼吸一つがとても大切な物だった。これからの旅には何も持ってはいけないので、思い出だけを持っていける様に、ずっといろんな話をした。
一番嬉しかった事も、一番面白かった事も、一番綺麗な物も僕にとってはアンリだった。アンリには僕だ。
一番悲しかった事や、一番辛かった事の話はしなかった。そんな事どうでも良いんだ。
夜が白く明け始めたので、バアルに山越えの支度をした。エタンさんに手紙を書いた。アナマリーは鳥に乗りましたって。あと、バアルをよろしくお願いしますって。
バアルには、手紙を届けてくれっていった。君なら、来る時より荷物も少ないし、一人だから多分、一日で隠れ里へ着けるんじゃないかな。気をつけて行ってよ。無理せずに。
バアルは自信満々に頷いていたけど、何度も振り返って見えなくなっていった。
バアルを送り出した後、身支度をした。
今日も昨日と同じ、温かい日差しが差していた。花畑の真ん中まで行って、ぐるりと周りを見回した。
雪を被った遠い山々。麓のとんがり屋根の家々。花畑の中の雪解け水の流れる清流沿いには柔軟そうな木が生えている。家の裏の森の中から聞こえる鳥の声。優しい風が吹いてる。白い花が風に揺れる。白い花畑の中に隠れた色とりどりのかわいい花の香り。日が登って空気が温められたので、ミツバチも飛んでいる。
少しだけ、ほんの少しだけ、怖い気がしていた。
その時に、麓の教会の塔に赤い旗が掲げられるのが見えた。
二人が離れ離れになる方が怖い。
僕たちは、目を見合わせて、少し笑って、小瓶の液体を飲んだ。
ただの少し苦い薬の様な味だった。
そして、並んで、僕の右手とアンリの左手を組み合わせて祈念した。
『神籬の紙垂ゆらし 誓ひ宣る魂の限りに』
言い終えると、アンリがゆっくり倒れ込んだ。




