また会えます様に
おはようございます。
タイトルの件は諦めました。
もう今更ですよね。
あともうちょっとで、前半終わります。
アナマリーは伝染病に罹ってしまった。
二日目の夕方、突然息苦しくなったそうだ。全身の倦怠感。節々の痛み。夜半には発熱した。
アナマリーの家には色んな生薬があったけど、効いたなと思っても違う症状が酷くなったりで捗々しい回復は見込めなかった。喉や息が辛くない時にアナマリーは少し話した。
「巫女舞の時にいろんな道が見えたの。でも、光あふれる道は見えなかった」
「もう分かっていたから。次に進まないとね。今ある道は全部行き止まり」
「この病には朱雀の民が全力で向かい合ったの。でも、勝てなかった。気が付かずに隠れ里に持ち込む様なことにならなくてよかった」
エタンさんの事を思って、少し柔らかい顔をした。
「暖炉の上の小さい物入れをひっくり返してみて」
言われた細工の小物入れは手に取ると見た目よりどっしりしていた。裏返しにすると、小さな扉がついていた。中には薬瓶が入っていた。
「よく聞いて」
「私が死んだら、二人で外のベンチに運んで。神様を呼び出して、鳥に魂を運んでもらう様に祈って」
「外じゃないと鳥が魂を乗せられないの」
「生まれ変わったら、次は我儘も言うわ。あなたたちに意地悪もしちゃうかもね」
いいよ〜。アナマリーなら何をいってもいいよ。僕とアンリは泣きながら答えた。
「この薬はね」
「今を終わらせる薬。あなた達は神様に誓ったでしょ。二人の魂は一緒なんだから、これは次の始まりの為の薬」
「半分ずつよ。痛くも苦しくもないはず。外で、神様を呼んでから、鳥に僕たちの魂を乗せてくださいって言うのよ」
アナマリーは両手で僕たちそれぞれの手を握って言った。とても熱い手だった。
「次に生まれてくる時には、全部の問題が片付いていて、また巡り合って、幸せになれます様に」
それから一度三人とも眠ってしまって、夕方目が覚めるとアナマリーは外のベンチに行くわって言った。やっぱり自分で歩いていく。手伝ってと言うので、ベンチの上に毛布やクッションを敷いた。肩を貸してゆっくりと歩いてベンチに横になると、
「あぁ、ここに来れて良かった。先に行くわね。また、会いましょう」
というと、大きく息を吐いてそれきりもう吸わなかった。
アナマリー、ありがとう。ごめんね。
アナマリーの体がベンチから落ちない様に整えてから、神様に祈った。
『神籬の紙垂ゆらし 誓ひ宣る魂の限りに』
どうか鳥にアナマリーの魂を乗せて、次の命に繋いでください。
バアルが少し離れて、夕焼けが迫る山を見て、ブルッと鳴いた。山から一羽の岩雲雀が小さく鳴きながら飛んできて、アナマリーの上でターンした。
そのまま、高く飛び上がって、山の峰に消えた。少し藍色になった空に一番星が光り、白く細い三日月が冷たく笑っていた。




