僕たちの話 その時、僕たちは王子だった
おはようございます。
今日は二話目。大体一話が七百文字前後。あ……今日は多めです。
よろしくお願いします。
ひとつの大陸の外側には大きな国、真ん中には僕の国を含む小さな国が集まっていた。その中の比較的大き目の国、ゾルタン王国の第三王子シャルル。国王には王妃が生んだ第一王子と第二王子がいるので、ほぼ飼い殺しの第三王子だ。僕は七歳。第一王子は十八歳。第二王子は十六歳。
王には正室の王妃と側室の僕の母、二人の妃がいた。王妃とは政略結婚。ずっと上手く王と王妃としてやってきて、国も落ちつき、王としての評判もまずまずだったのに、視察先で運命の恋に巡り会ってしまった。平民では無いけど、地方男爵の娘だった自分より十五歳若い母と。一番やっちゃいけないやつ。そりゃ、王妃も怒るよね。
母は可愛らしい人だった。僕と同じ細かいカールの赤毛にヘーゼルの目、その下にそばかす。一年前に僕の一つ違いの妹シルヴィを亡くしてから随分塞ぎ込んでいた。国王も女の子を喜んで大層可愛がっていたので、辛いのか、僕の母の宮「月の宮」にはあんまり来なくなった。
もともと月の宮は王宮の最奥にあり、森を背にしていたので、それはもう静かだった。実家は遠く、地方男爵家では王都にそれほど知り合いもなく、尋ねる者もなし。後ろ盾のない娘を側室にしたのだから、国王にはもっと面倒を見て欲しいものだけど。心のうちは分からない。僕としては、放置されていたのは、まあまあ良かった。期待もされず、自由だもんね。
そんな中、隣国カリエ王国から来た六歳の王子アンリを月の宮で預かる事となった。ゾルタン王国より小さい国カリエ王宮には、アンリの他は女の子が二人。今の所アンリが王太子となる。だけど近隣の国や部族と、何か問題が起きて、しばらく大事な王太子を留学させることになったらしい。一年か二年……のはずが、結果的には五年になった。月の宮はそれほど大きくない屋敷だが、隣国の王子一人と数人の従者くらいは受け入れられる。ところが、アンリが連れてきたのは、侍女が一人だけだった。