アンリだって大事じゃないか
お疲れ様です。
本日、仕事でヘロヘロです。
よろしくお願いします。
声が出ない。病み上がりで力も出ない。
僕たちはある程度剣術も体術も会得していた。なのに情けなく、無抵抗でいるしかできない。
「おい、何をしている?」
遅れて中庭に出てきたアンリが僕を見つけた。
「シャルル王子にご同行願いたいんですよ」
「僕だ。僕がシャルルだ。そいつを離せ」
え? アンリ何言ってんの? やめてアンリ。連れていかれちゃうよ。
「僕がシャルルだ、その子を離せ」
暴漢が近づいてきたアンリに気を取られた隙に、僕は体を捻って、相手の手首を掴んで、背負い投げた。
よかった、動けた。襲ってきた男は、受け身も取れず、背中を打ちつけて息を詰まらせて伸びていた。
アナマリーがやってきて、男の腕を背中側に回して、手の甲を合わせて小指同士をキツく縛って連れて行った。
アナマリー、キツ過ぎない? 指の色変わってるよ。
そのまま中庭でアンリが泣いていた。シャルルが連れていかれちゃうって。さっきあんなに大人っぽかったのに。僕は雀の息くらいしか声が出なかったけど、アンリだって大事なんだから、あんなこと言うなよって言った。連れていくなら、二人ともにしてくれって言って、二人で泣き笑いした。




