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初めてちゃんと父王の顔を見たかもしれない

おはようございます。

父王の最期の時が迫ってます。

三人は城を出ました。

よろしくお願いします・

 外は少し白んで来始めていた。夜明け前の静寂の中、物音を立てない様に向かった王の寝室には誰も居なかった。直前までいた侍医もこの時は皆外に出ていた。

 僕とアンリとアナマリーは王の横に並んだ。高さもある大きなベッドの真ん中に王は体を横たえていた。

 顔色は白く、息は弱かった。カーテンで閉された部屋の中は蝋燭の灯りが揺らめいていた。


「シャルル……」

 父の声をずいぶん久しぶりに聞いた。こんな寂しい声だっただろうか?

「はい。」

「残念だが、別れの時のようだ。お前がもう少し大きくなるまではと思っていたんだが……」

「お父様。」

 父の伸ばした腕が耐えきれずにベッドの上にはたりと落ちた。僕は両手でその手を取った。

 蝋燭の炎が大きく揺れて、僕たちの影が壁際に一瞬大きくなった。

「許せ。……情けない父を」


「……アンリ、アナマリー、頼む……シャルルを」

 

 ほんの暫くそうしていたけど、アナマリーに促されて静かに部屋を出た。背中越しに大きな呼吸音がした。扉を閉める時に、母とシルヴィの名前を呼ぶのが聞こえた。僕が離した父の腕を二人が握っていてくれたらいいな。

 部屋から出ると入れ違いに沢山の人が入っていった。皆、僕たちが目に入らないようだった。アナマリーの力かも知れない。アナマリーはすれ違う一行の一人の侍従の肩を捕まえて、耳元に口を寄せて、王様の部屋の窓を一ヶ所開けて置くように言った。侍従はこくりと頷いて何も言わずに入って行った。


 月の宮に戻ると、僕たちは急いで支度をした。本当に必要な物しか持たない。出来るだけ身軽にしたい。


 誰にも何も言わずに、白い月の浮かぶしっとりした明け方の城下町に出た。

 朝一番の長距離馬車に乗って、初めて遠くに小さくなるお城を見つめた。アンリが僕の背中に頭を乗せた。石畳の振動でアンリの頭が小刻みに揺れる。お城が見えなくなってから、座り直した僕は、アンリと肩を寄せ合って少し眠った。



  

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