結婚式の日に
目覚めると、愛しいファルカシュが私を見下ろしていた。
「どうしたの? 泣きそうな顔をしてる」
彼は、この世を統べる太陽の一族の長の子で今日私の夫となった人。
黄金の波打つ髪は淡く光を放ち、瞳はオレンジを含んだ金色で魅惑の炎を燃やしている。光の一族である彼は数千年の時を生きる神の子だ。
美しく気高い私の最愛の人が悲痛な声で呼んだ。
「ネリ……私が分るか?」
「分かるに決まっているでしょう? 今日は私たちの結婚式なのにどうしてそんなに悲しんでいるの?」
生まれる前から許嫁と決まっていた私たちは、喜びも、苦しみも共に分かち合って一緒に生きてきた、固い絆で結ばれた唯一の相手同士。
いついかなる時も、私が愛しているのはあなただけ……
やっと夫婦になれるこの日を待ち望んでいた、そしてあなたも私と同じ気持ちだったでしょう?
横たわる私を抱きかかえるように寄り添ってくれている彼の、間近にある頬に触れた。
ぼんやりと霧がかかっていた思考がゆっくり晴れていく……
どうして私は眠ってしまったのだろう。
おかしい、目の前にいるのはファルカシュなのに顔付きが知っている彼と違う。青年の顔に残っていたはずの少年の幼さが消え去っている。頬は痩せて精悍な戦士のよう。まるで年上の大人のように見える……
驚きに慌てて身を起こした。
「どうしたのファルカシュ、なんだか急に年を取ってしまったみたいな顔をしている!」
「ネリ……君は記憶を失った。僕たちが結婚してから5年が経ったんだ」