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祭りはっ!

『ねえ、緋色?』

「んー?」



 ある日、スイから連絡があった。



『今度の学園祭、一緒に回らない?』

「うん、いいよー」



 仮想モニタ越しの誘いに頷く。


 ……ってあれ。


 スイからの誘いだからって迷いなく受けたけど……学園祭?



「スイ、学園化祭って言った?」

『え、うん』

「……あるの、学園祭」

『そりゃまあ』

「……」

『どうしたの緋色?』



 モニタの中でスイが不思議そうな顔をする。



「こーしちゃいられねぇえええええ!」

『っ……!?』



 スイが目を丸くする。



『い、いきなりなに?』

「祭りだ祭りだ、ひゃっはー!」



 MA・TSU・RI!



「スイ! 特別クラスってなにか出し物やるの?」

『え、やるの?』

「え?」



「というわけで緊急招集です!」



 黒板を叩く。


 教室には特別クラスの面々が。



「なぜ集められたんだ?」

「なんか私が学園祭の話をしたら、いきなり?」

「そういえばそろそろ学園祭の時期ですか」

「そこ、私語は慎みなさい!」



 三姉妹に注意を促す。



「というか、興味ないので帰っていいですか」

「却下!」



 小夜の主張を払いのける。



「教壇は私の居場所……」

「今日は茉莉はそこに座っていなさい!」



 祭りに乗り気じゃない人間などそれで十分!



「それで、どうして集められたのかな?」

「いい質問ですナユタさん!」



 ええいどうして私は眼鏡を持っていないんだ!


 こういう時は欠かせないアイテムなのに!



「もう間もなく学園祭があるそうじゃありませんか!」

「そうだねえ」



 ナユタが曖昧に頷く。


 それが、みたいな顔だ。



「だ・と・い・う・の・に!」



 嘆かわしい!


 ああ嘆かわしい!



「貴方がたはなーにそんなどうでもよさそうな顔してますか!」



 教卓を叩く。



「祭りを楽しまなくちゃ、生きてる価値なんてねー!」

「そこまで言うんですか」



 小夜の呆れかえった視線!


 うはっ、ゾクゾクしちゃう!


 じゃなくて!



「ともかく学園祭、私達もなにかやりましょう!」

「でも学園祭、明日だけど?」



 茉莉の言葉に硬直する。


 時が止まった。


 ……え。



「な、なんだってー!?」

「今からじゃ、出し物の申請も間に合わないし」

「……!」



 緋色にダイレクトアタック!



「そもそもこの人数じゃ出し物なんて出来るの?」



 ダイレクトアタック!



「それに協調性あまりないし」



 大ダメージ!



「思うんだけど、このクラスで学園祭で出し物したら、絶対問題起こると思うし」

「やめて! 私のライフはもうゼロよ!」



 茉莉の発言に私は涙を流した!


 そんな冷静な判断いらねー!


 つか茉莉自分のクラスなのに協調性がないって言っちゃうんだ!



「つまり素直に学園祭は見て楽しめということだな」

「……はい」



 がっくし。


 アイリスの言葉に大きく肩を落とす。



「はぁ……」

「まあ今年は残念ってことで」



 ……そうだ。


 所詮今年なにも出来なかっただけのこと!


 ナユタの言うとおりだ。


 今年は駄目でも……!



「来年はやるぞー!」

「おいナユタ何故余計なことを言った」

「姉さんの言うとおりですね」

「今回は私もアイリス姉さんに同意」

「全く持って、必要のないことを言いましたね、あなた」

「……来年が今から不安」

「えー……皆ひどい」



 というわけで。


 やってきました学園祭当日!


 すげえ!


 なにがすげぇって昨日までいつもどおりだった校舎っていうか街全体が、完全にお祭りムードになってるし!


 っていうかあの建物昨日なかったよね、って感じの建物がそこらじゅうにあるんですけど!


 あの天まで届きそうな塔はなにさ。


 でかでか『最終日破壊用』とか書かれてるけど。


 ……え、まさかバベルの塔よろしくあれ壊すの?


 うわー、さすが学園世界、やることが頭おかしい。


 ところで今の私ですが、待ち合わせをしております。


 そう、待ち合わせ!


 デートの基本!


 つまり私はこれから、待ち合わせ相手――スイちゃんと学園祭デートなのだ!


 来た!


 ついに我が世の春が来おったぞ!



「ふははははははは!」

「――なに一人で笑ってるの?」

「……いつからそこに?」

「あなたが気味の悪い笑いを浮かべたあたりから」



 いつの間にかスイが横に立っていた。


 私に気配を悟らせないとは、やるではないかお主。


 くっ、こうなったら誤魔化すしかない!



「きゃはっ、待った?」

「今来たところ……ってあなたのほうが先にいたでしょうか」

「そうでした」



 緋色ちゃんては、ドジっ子だねっ。



「なんかテンション高くない?」

「そりゃもう!」



 当然ですよ!



「そこまで学園祭楽しみだったの?」

「うん!」



 大きく頷く



「あ、でもそれだけじゃないよ。学園祭が楽しみってだけじゃなくて、スイと一緒に回れるのも楽しいしね! うん、今日はデートを楽しもう」

「デ……は、え!?」



 スイが動揺し出した。


 ……はっ。


 しまったつい本音がぽろりと。


 デートとか言っちまったよぉおおお!


 やっべ、やっべえよ私。


 これあれじゃねえの、ちょっと遊びに誘ってやったらなにがデートなのよ馬鹿ではありませんのオホホのホ、みたいな!


 意味わかんねー!


 って、とりあえず何か言わなくちゃ。



「……え、ええと、その……」

「――……ま、まあ、デートか」

「え?」



 あれ、納得された。



「あの、スイさん?」

「な、なに?」

「あ、いや……なんでもない、です。はい」



 なんかスイ、顔赤い?


 どうしたんだろ……。


 も、もしかして怒ってるの!?


 あれでも今納得したんじゃないの?


 え?


 ええ?


 分からない、私スイが分からないよ!



「と、とりあえず行きましょう、緋色!」

「あ、はい!」



 とりあえず敬礼した。


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