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来訪者はっ!


「〟_`_‐‐〟-_‐_⁻_’‐-/‐‐⁻`_,-〟‐_’ ‐‐‐_’‐-/‐ -_‐‐_/‐‐-_‐‐〟_/⁻`_‐‐〟_/⁻`_′`_‐‐〟_/⁻`〟_/`_,-〟‐‐,-〟`‐〟‐_’‐-‐‐‐⁻〟_/⁻`_‐〟_‐’-_‐‐_/‐‐-_‐‐_/‐‐-‐‐‐_/‐‐,-〟」



 狂う白銀の女神を、私達は串刺しにした。


 全身を貫いた杭を、女神は力ずくで砕こうとする。


 とりあえずこれでしばらくはもつだろう。



「気に食わん」



 フュンフの第一声はそれだった。



「なるほど全てを呑みこむ《真想》とはな、確かにあれは危険だよ」



 腕を組み、フュンフは女神を串刺しにする杭の一つに腰を下ろした。



「だがな、アイン。その危険性よりも私は不愉快という感情の方が大きい」

「へえ、どうして?」

「決まっているだろう」



 私の問いに、フュンフは黒い刃を手の中に生み出し、女神を切り裂いた。


 八つ当たり、ね。


 そんなことをしても、私達に女神を殺し尽くすことはできないというのに。


 狂った女神の想い、それは私達をも上回るのだから。


 せいぜいがこうして動きを止めるのが限界だ。



「あれは私達の想いすらも飲みほしていた。分かるか? この身の嘆きも悲しみも怒りもなにもかも、全てを奪われたのだ!」

「……」



 確かに。


 あまりにも、それは想いを踏みにじっている行為だと、私も思う。


 本来の《真想》と異なる、ただ存在しているからという条件のみで人の想いを繋いで己のものとする。


 棘ヶ峰緋色……だったか。


 なるほどあれは出鱈目にして不愉快だ。


 だが……。



「だったら、どうするの?」

「……」

「あれはね、絶対に勝てないモノよ」



 少し考えれば分かること。


 極論、今この全ての世界においての戦いの極致――分かりやすく法と呼ぼうか。


 それは、想いのぶつかり合いだ。


 より強く鮮烈な想いが他を下す。


 そういう法で成り立っている。


 だが棘ヶ峰緋色の《真想》は、その法におけるジョーカーだ。


 全ての想いを取り込む。


 それはすなわり、相対する敵の想いも取り込むということだ。


 そうなると単純に言って……。




 棘ヶ峰緋色より強い想いを持てるものなど存在しない。




 そういう結果になる。


 どれほど想いを高めようと、それは全てイコールで彼女の強化にも繋がるのだから。


 すなわちアレは、絶対的強者……最強だ。


 私達でも、女神でも、他の何者も勝利することはできない。


 それをどうこすうするなど、不可能だ。



「……まあ、問題ないだろう」



 不意に、ゼクスが口を開いた。



「なぜ、そう思うの?」

「簡単なこと」



 ゼクスは当然のように言い放つ。



「それだけの想いに、耐えられる器などあるものか」



 そう。


 その通り。


 私も全くの同意見だった。



「ええ……今回はもったかもしれない。だけどね、それは奇跡よ。普通ならそれだけの想いに押しつぶされて、よくて廃人……悪ければ消滅」



 断言しよう。



「棘ヶ峰緋色はそのうち自壊する、だからあれは気にするに値しない」



 _/⁻`_‐-/‐‐⁻〟_/⁻`_‐〟_‐‐〟_/⁻`⁻,-〟‐_’ ‐_/‐‐-_‐_/⁻`_‐‐〟_/⁻‐-/‐‐‐,-〟‐_’‐-/‐‐‐,-〟‐_’‐’-_‐‐_/‐‐-_‐‐_/‐‐-‐‐`_′‐, _/‐‐-‐_-‐⁻-〟,-〟_-‐′‐,-〟‐_’‐-/‐‐⁻`_,-〟‐_’‐ -_‐‐_/‐‐-_‐‐〟_/⁻`_‐‐〟_/⁻`_′‐,-〟,-〟_-‐′‐,-〟_/`_。



 聞こえる。


 それは想いだ。


 どれほどの想いだろう。


 数えきれない。


 私の中に未だに残る、僅かばかりの《真想》によって飲み込んだ想い。


 だが僅かとしても、それは膨大な質量になる。


 苦しい。


 まるで溺れるみたいだ。


 あるいは、巨大な滝の水を一身で受け止めているかのよう。


 辛い。


 嫌だ。


 こんなの……もう……。



「ぁああああああああああああ!」



 飛び起きる。



「……はぁ、はぁ」



 何回目だろう。


 こうして、飛び起きるのは。


 夜中にも何回も起きる。


 ここ最近、私はまともな睡眠をとれていなかった。



「……なんなのさ」



 顔を覆う。


 必死に、情けない顔を隠す。



「なんなのさ、もう……やだ」



 コンコン、とドアがノックされた。



「はーい?」



 ドアを開ける。



「どなたさま――え?」



 そこに立っていた人物の姿に、私は目を丸くした。


 予想外にも程がある。


 というか……え。


 マジで?


 なんでなんで。


 どうして――ソウがいるの?


 しかもナユタと一緒じゃない単品で。



「ええと……な、何用でしょうか?」

「少しいいでしょうか? お話があります」

「……も、もちろんどうぞ!」



 ちゃぶ台に置かれた飲むヨーグルト。


 ……私の馬鹿っ!


 どうしてこんなものしかなかったの!?


 普通にお茶とか用意しておこうよ!



「……」



 ソウは目を瞑り、黙り込んでいる。



「……あの?」



 耐えられなくなって、口を開く。



「――隈が出来ていますよ。眠れていないのですね」

「っ……!」

「化粧である程度は誤魔化しておいたほうがいいのでは?」

「……そう、ですねー、あはは」



 冷や汗を流す。



「体調には気をつけてください。あなたが倒れたりしたら、皆さんが悲しみます」

「はい」

「……とはいえ、苦しんでいるあなたにこういうことを言うのは、デリカシーがないのかもしれませんね」

「え……」

「私の目は節穴ではないのですよ……というか、あなたは分かりやすいですからね。皆、ほとんど気付いていますよ。あなたの状態には」

「……マジでか」



 ぶっちゃけ、けっこう誤魔化せてると思っておりました。


 どうやら私の勘違いだったようでございますね。



「……少し、昔話をしましょうか」

「え? いきなり?」

「そう長い話ではありません」



 ソウが、微かに苦笑いを浮かべる。



「それは……私が主に捨てられた時の話です」

「え?」



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