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尾行はっ!

「……」



 散歩していたら、奇妙なものを見つけた。



「――っ!」



 街を全力疾走するライスケさんだ。



「……おーい、ライスケさーん!」

「……!」



 私の真横をライスケさんが通り過ぎる。


 ……スルーかよ。


 っていうかあの人、なんであんなに慌ててるんだ?



「……よし」



 尾行スタート。



 ライスケさんをつけた先は、噴水がある広場だった。



「ま、待ったか!?」

「待ったとも」



 その広場にいたのは……イリアさんだ。


 なんだなんだ、二人でデートか?


 って、あれ?


 イリアさんって子供いるよね?


 つまる旦那さんがいる可能性が大ってことで……。


 そんな人がライスケさんといる。


 ぽくぽくぽくちーん!


 これは、まさか……!


 FU・RI・N!?


 大人のいけない世界なんですか!?


 一時の気の迷いなんですか!?


 許されない愛情なんですかぁあああああ!?


 やっべなんだこの急展開。


 オラちょっとわくわくしてきたぞ!


 しかし……不倫とは。


 イリアさんがそんなことをする人には見えないのだけれど。


 もちろん、ライスケさんの方も。


 となると……まあぶっちゃけ、一番高い可能性は男女の友人が遊びの約束をしていた、ってことではないだろうか。


 前にイリアさんに訓練つけてもらった時は……つかあれば半ばいじめだったけど、ライスケさんにイリアさんを紹介してもらったんだし。


 それなりに親しい間柄なのだろう。


 そりゃあ一緒に遊んでなんの不思議もない。


 うんうん。


 ま、不倫なんてイケナイ行為よりは、ずっといいんだけどね。


 ……ちょっとつまんねーとか思ってないし。本当だし。



「悪い悪い。なんか奢るよ」

「当然だ」



 ライスケさんの謝罪に、イリアさんが横柄な態度をとる。


 それに気を害すどころか、人のよさそうな苦笑を浮かべるライスケさん。



「とりあえずライスケ。わたしは咽喉が渇いたぞ?」

「ああ、分かった。なんか買ってくるよ」



 あっさり頷くなあ、あの人。


 絶対奥さんとかできたら尻にしかれるタイプだ。



「じゃあ少し待っててくれ」

「ああ」



 ライスケさんが駆け出す。


 とりあえず後をつけた。



 なん……だと……?


 い、今目の前に広がっている光景をありのまま説明するぜ。


 ライスケさんはイリアさんのために飲み物を買いにいった。そのはずだ。


 だが!


 だがっ、しかしぃっ!


 なぜ彼は、今オシャレなカフェのテラス席で美女と同席しているのでしょうか!?


 というかあの人、前にアクセサリーショップにいた、確か……ウィヌスさん、だっけ?


 どういうことだってばよ!



「あらライスケ、知り合いには会えた?」

「い、いや。てっきり知り合いだと思ったんだけど、探しても見つからなくてな。見間違えだったのかもしれん」

「間抜けね……そんなことで私をほっぽりだしたわけ?」

「悪かったよ」

「まあいいけれど」



 ウィヌスさんが笑う。


 なんていうか……うん。


 なにやってんだあの男ぉおおおおおおおおお!


 はぁ!?


 なに、もしかしてあれですか!?


 この野郎二つのデートを同時にこなしてやがるんですかぁあああ!?


 はぁあああああ!?


 意味わかんねぇえええ!


 なんばしよっとね!


 尻に敷かれるタイプかと思いきや、実は女タラシだと!?


 騙されたぜっ!


 あの下種め……!



「それよりライスケ。最近、調子はどう?」

「まあ普通さ。それよりそっちは? まだ決まった仕事についてないんだろ?」

「いいじゃない。あちこちでアルバイトしてるし」

「そろそろ腰を落ち着けてもいいんじゃないのか?」

「老人みたいなことを……」



 ウィヌスさんが苦笑する。



「それより――」



 そこで、ライスケさんの目の前に仮想モニタが浮かびあがる。誰かから連絡があったらしい。



「あ、悪い」

「……仕事?」

「いや。大丈夫、すぐ戻ってくるから! ほんとごめん!」



 ライスケさんが駆け出した。


 あの男……この私が天罰を下してやる!


 私はライスケさんを追いかけた。



 どうやら先ほど連絡はイリアさんからだったらしい。



「飲み物を買うのにどこまでいったのだお前は」

「悪い。なんか見つからなくて」



 戻ってくる途中に自販機で買ったジュースをイリアさんに渡し、ライスケさんがなにもなかったかのように振る舞う。


 ……おとなしそうな顔しやがって!


 イリアさん、騙されないで!


 そいつは悪い男ですよ!



「それで、今日はどんなふうにエスコートしてくれるのだ?」

「ああ。この前美味しそうな店を見つけたんでな。イリアも好きそうな雰囲気だったから、そこに行かないか? 途中いろんな店を見ながらさ」

「ふむ。いいだろう」



 イリアさんがちらりとライスケさんを見る。



「……こうか?」

「うむ」



 ライスケさんが腕を出すと、そこにイリアさんが腕をからめる。


 ちょっ、腕組みっすか。


 べ、別にうらやましくねーし!


 私だってツクハとやったしね!



「行くか」

「ああ」



 まず二人が寄ったのは服屋だった。



「ふむ……これとこれ、どちらがいいと思う?」

「んー」



 イリアさんがそれぞれ左右の手に持つ服をライスケさんが身比べる。



「やっぱりこっちの黒いやつのほうが……いやでも水色も……んー。どっちも似合うんじゃないか?」

「そう言ってくれるのはまあまあ嬉しいが、少しばかり適当にも聞こえるな。五〇点といったところか」

「うわ、厳しいな」

「罰として片方はお前が買え。もう片方は私が自分で買う」

「いや、そっちも俺が買うぞ?」

「ほう……そう言うなら、プレゼントしてもらうとしよう」

「おう……っと、そうだ。俺もちょっと自分の服見てきていいか?」

「ああ、構わんぞ。そうだ、わたしが見立ててやろうか?」

「いや、そこまでしてもらわなくてもすぐ決まるからいいよ。ちょっと待っててくれ」



「悪い」

「なんだったの?」

「ちょっとな」



 カフェに戻るライスケさん。


 ウィヌスさんはチョコレートケーキを食べていた。



「これ、あなたの奢りでいいわよね?」

「ああ、もちろん」



 あっさり頷くなあ。


 お財布にはけっこう余裕があるのか……?


 この世界の教師ってどれくらいの給料もらってるんだろう。



「俺もなんか食べるかな……腹はあんまり減ってないから、俺もケーキにしよう」

「あら、ならこれにしなさいよ」



 ウィヌスさんがメニューの中の一品を指差す。



「これとそれでどちらを注文するか悩んでいたのよね。あなたが頼んでくれたら、分け合いましょう。それでどっちも食べられるわ」

「だな。じゃあそうしよう。すみませーん!」



 ライスケさんがウィヌスさんに言われるがまま、ケーキを注文する。


 ……女性二人をもてあそんでいるくせに、嫌に腰が低いんだなあ。


 と、そこでライスケさんに再び仮想モニタで連絡がくる。



「……また?」

「…………ケーキが運ばれてくるまでに戻ります」

「いいわ、いってらっしゃい」



 イリアさんのところに戻ってきた……と思いきや。


 思いきや!


 ライスケぇええええええええええええええええええ!


 きっさまぁああああああああ!



「あ、ライスケさん」

「おう。待たせたか、メル」

「いえ。今来たところですから」



 第三の女性、襲来!


 どういうことだぁああああああ!



「今日は、最近できたアクセサリーショップに行くんだっけ?」

「はい。人気のある店のようで……ちょっと敵情視察です」



 くすりと女性――メルさんというらしい――が微笑む。


 あんな綺麗な笑顔の人までライスケさんの毒牙に……!


 なんてこったい!



「付き合わせてしまってすみません」

「いや。いつも一緒の時間がとれないんだし……珍しく時間の空きが出来たんだ。むしろ、付き合わせてくれよ」

「……はい、ありがとうございます」

「それじゃ、行くか」

「はいっ!」



「……」



 許すまじ。


 許しまじ、ライスケぇえええええええええ!


 いい加減私も我慢の限界だぞ!


 女の純情をもてあそびおってからに……!


 きっと私が正面からぶつかっても、ライスケさんには勝てないだろう。


 だが、だがそれでも!


 女には、戦わなくてはならない時もあるのだ!


 いざ、いくぞぉおおおおおおお!


 と、メルさんと歩きだしたライスケさんに向かって飛び出そうとした瞬間。



「まあ待て」

「ぐぇ!」



 後ろから襟首を掴まれて変な声が出た。



「落ち着きなさいよ」

「え……」



 この声って……。


 振り返ると、なんとそこにはイリアさんとウィヌスさんが立っていた。



「え、ど、どうして……」

「むしろ私達としてはどうしてお前がライスケのあとをちょこまかとついてまわっているのかが気になるところなのだがな」



 イリアさんが溜息を吐く。



「ま、なんとなく予想はつくんだけれどね」



 ウィヌスさんは肩を竦める。



「え、えっと?」



 状況が理解できない。



「あ、そ、そうだ!」



 これは伝えなくては!



「聞いてください! ライスケさんが……!」

「同時に三人の女とデートしている、か?」

「え……」



 な、なんでそれを……。



「だって私達三人とも、今日ライスケがそれぞれとデートの約束をとりつけているの知っているもの」



 ウィヌスさんがあっけらかんと言う。



「へ?」

「まあライスケの休みを狙って三人がデートの約束をとりつけるのだから、そうなるのも当然なのだがな」

「そしてライスケがデートの誘いが断れないこともよく知ってるしね」



 ……え?


 どゆこと?



「ま、ライスケはうまく隠せているつもりなのだろうが、知らぬは本人ばかりで私達三人は同時並行のデートには納得しているのさ」

「な、なんで……」

「だって旦那一人に妻が三人だもの。そりゃあ、仕方ないじゃない。本当はもっとちゃんとして欲しいのだけれど、ライスケにそれだけの器量を求めるのは、ねえ?」

「ああ」



 ウィヌスさんとイリアさんが苦笑する。



「……え?」



 いま、なんて?


 旦那一人に、妻三人?


 ……。


 三人?



「ええと、つまり?」

「あなたは私達三人がライスケにもてあそばれているとでも思ったのかもしれないけれどね、実際はそんなことないのよ」

「むしろ私達三人はライスケがこうやって右往左往する姿を楽しんでいるところすらあるのだ」

「で、そんな私達は全員、ライスケの妻なわけよ」



 爆弾発言キタコレ。



「……えー?」



 なんだそりゃ。


 てことは、ライスケさんとイリアさんの間に出来た子がアイリスってこと?


 マジでか。


 なんかすげえ意外なんですけど。


 そしてスイとエレナも、ウィヌスさんとメルって人がライスケさんとの間に作った子供なわけで……。


 なんだそのハーレム。


 爆発しろ。


 心の底からそう思った。


「っと、いけないわね。ライスケが移動したわ。私達は戻るから、それじゃあね」

「ではな」



 ウィヌスさんとイリアさんの姿が消える。



「……はぁ?」



 ええと、なんだこれ。


 つまり……。


 ライスケさん、テラワロス?




 ライスケェ…………。


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