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デートはっ!


「……まあ、こんなこったろうとは思ってましたよ」



 げんなり。


 そんな表現が今の私にはぴったりだと思う。



「まあまあ、そんなことは言わないでさ」



 そんな私の横を歩くのは、ツクハ。


 そして――。



「そろそろ昼食にしましょうか?」

「そうだな……」



 嶋搗夫妻が歩いています。



「なんだよぅ、デートとか言ってさあ、ただの惚気避けじゃねえかよぅ」

「そんなことないよ。これはダブルデートって言うんだよ」

「絶対違う」



 そもそもどうしてこうなったのかと言えば……。



「ねえツクハ。今度、買い物にいかない?」

「あ、悠希。いいね、そうしよっか」

「今度の休みでいいかしら」

「うん」

「あ、おい悠希。今度休みが取れたんだが、ひさしぶりに買い物にでも行くか?」

「え……本当? ならツクハと三人で行きましょう」

「……こいつぁやべぇぜ☆」



 とうことらしい。



「なんで断らなかったのさ! 急用ができた、とか!」

「なんか言える雰囲気じゃなかったし……」



 ツクハが溜息を吐く。


 私だって溜息を吐く。


 いいや、これは溜息じゃない。


 目には見えない砂糖を口から吐き出しているんだ。


 だって、だってだよ!?


 嶋搗夫妻って……バカップルすぎるぁああああああああああ!


 うわぁああああああああああん!



 アクセサリーショップにて。



「ねえ、臣護。このネックレスなんてどうかしら?」

「……まあ、いいんじゃないか?」

「む。あなたはいっつもそれね。いいんじゃないか、いいんじゃないかって……少しくらい真面目に考えてよ。まあ、臣護がそういう性格なのは分かってるけどさ」

「別に……考えなしで言っているわけじゃないんだがな」



 臣護さんが悠希さんの手の中にあったネックレスをとって、そのまま彼女の首にかける。



「あ……」

「……お前が似合わないものを探す方が難しいだろう。そら、見てみろ」



 臣護さんが悠希さんの肩を持って、近くにあった姿見のほうを向かせる。



「俺の言った通りだろう」



 仏頂面のまま、臣護さんが言い放つ。



「臣護……まったく、柄にもない臭いこと言うのね」

「たまには妻に世事を使うのも悪くない」

「世事って……もう、バカ」



 雑貨店にて。



「そういえば新し小物入れが欲しいのよね」

「前々から思っていたんだが、小物入れなんてそんなに数が必要なものなのか?」

「そりゃもう」



 悠希さんが臣護さんに肩をくっつける。



「女の子はね、小物入れに沢山思い出をしまってるのよ。まして私は、あなたから沢山の思い出をもらっているんだから、人一倍小物入れがないと駄目なの」

「……なんだそれは」



 臣護さんが呆れたように溜息を吐く。



「あら、ご不満?」

「そりゃな」



 臣護さんがそっぽ向く。



「俺との思い出は小物いれなんぞに収まる程度だったのか、と思わなくはない」

「あら……大丈夫よ、臣護」



 悠希さんが微笑む。



「小物入れに収まらないような大切なものは全部、私の胸の中にしまってあるから」

「……なにを言っているんだ、お前は」

「ふふっ」



 街中にて。



「ね、臣護。手を繋ぎましょうか?」

「……なんだ今更。そんなことをする歳でもないだろう」

「む。女の子を相手に年齢の話を出すんじゃないわよ」

「女の子って歳じゃないだろう」

「だーかーらー……まったく。女の子はどれだけ歳をとっても女の子なのよ」

「そうかい」

「そうなのよ」



 悠希さんが半ば強引に臣護さんと手を繋ぐ。



「それに、別にさ……おじいちゃんおばあちゃんになったって、手を繋ぎたいじゃない?」

「ふん……好きにしろ」

「好きにするわよ」



 繋がれた手の握る力が少し強くなる。


 私はしっかり見たぞ。


 握ったのは、悠希さんからじゃない。


 臣護さんからだった。



「ねえ、ツクハ。あの二人もう私達のこと忘れてるよねえ? 完全に二人の世界にいっちゃってやがりますよねえ!?」

「……あの二人だから」



 ツクハが頬を引き攣らせる。


 ちっくSHOW!


 羨ましすぎるぞあの二人!


 いちゃいちゃしくさりおって!


 私だって誰かといちゃいちゃしてぇよぉおおおおおおおお!



「ツクハ!」

「え、なに?」

「私達も、手を繋ごう!」



 びしっ、と手を差し出す。



「はい?」

「こうなったらあの二人には負けていられないよ!」



 ぱしっ、とツクハの手をとる。



「あのいちゃいちゃオーラに対抗するにはこれしかないんだよ!」

「……そうなの?」

「そうなの!」



 力強く頷いて見せる。



「さあ、いざいちゃいちゃしようツクハ!」

「って言われても、いちゃいちゃ、ねえ?」



 ツクハさんが少し視線を持ち上げて考え込む。



「いちゃいちゃ……んー……ああ、あの子を参考にすればいいのかな?」



 ツクハさんが私の手をほどく。


 なん……だと……?


 私とは手を繋いでらんねえってことですか!?


 うわぁあああああん!


 こうなったらグレてやるぅうううう!


 とか今にも駆け出しそうになる私の腕に、ツクハの腕が絡んできた。



「……ほぇ?」

「いちゃいちゃするなら、こっちのほうがいいんじゃない?」

「……おお」



 U☆DE☆KU☆MI。


 これがカップルのみに許された伝説のスキル、UDEKUMIなのですね!



「おぉう」



 やっべ。


 これやっべ。


 すげえツクハの体温感じるんだけど。


 っていうか。



「おっぱいあたってーら」

「あててんのよ」

「ぐふっ!」



 かいしん の いちげき。


 ひいろ は とけつ した。



「ツクハ!」

「うん?」

「もっといちゃいちゃしようぜ!」

「ベッドの上まで?」

「いいんすか!?」

「冗談」



 ぐふっ!



「そ、そんなご無体な」

「まあまあ、それはほら……もっと段階を踏んでからだよ」

「ん? ごめん、今なんて言った? 聞き逃しちゃった」

「なんでもない」



 ツクハがにっこりと笑う。



「それより、ほら。あの二人、さっさと先にいっちゃってるよ。追おう」

「お、イェッサー、もといイエスマム!」



 そして私達は、腕を組んだまま歩き出すのだった。


 あー、悠希さんと臣護さんのいちゃいちゃマジぱねぇ。


 しばらく砂糖はいらねえや。

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