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死亡回数はっ!

 あー、てすてす。


 てすてすてすてすてす……いやむしろデス?


 さて。今は何回目のリトライだったかな。


 案外死に続けても精神って摩耗しないなあ。


 ああ私の精神が強靭すぎるだけかな?


 万……はやった。


 億はいってないかな?


 多分リトライそのくらい。


 結構やべー。


 多分、体感時間で何十年も経ってる。これ外どうなってるんだろ。


 とか想いつつ、今日も――ここ日数ないけど――元気にやったるぜ!


 つーわけで、なんかいろいろダイジェスト!


 メタ発言?


 この作風ですよあなた。今更なにを。わらわら。飲食店ではない。



 百まで数えていい加減に嫌になって、死亡回数は数えてない。


 多分二百は越えたよね。


 どどどーん。


 ってな感じで私の視界が赤い閃光で埋まった。


 空から降り注いだ、幾千もの赤い光線は本棚を、地面を塵芥に変える。



「ほうほう」



 そんな破壊の雨のなか私はスキップをしていた。


 いやいやマジで。


 だってこの程度ならなんとかなるっしょ。


 てなわけで右手をあげる。


 地面から巨大な火柱が立ち、頭上に浮かんでいる幻影に向かっていった。


 避ける間もなく、幻影が炎に呑みこまれて灰も残さず燃え尽きる。



「ハバネロピラーと名付けよう。もちろん嘘だけど!」



 とか思ってると、空が割れた。



「おおっ!?」



 割れた空の向こうにあるのは、深紅。


 深紅が向こうからこちらへと、まるでタールがこぼれるように溢れだしてきた。


 なんかやばそうなので、もう一発ハバネロピラーを放つ。あ、やべ嘘じゃなかった。


 ハバネロピラーはそのまま深紅を貫き――ませんでした!


 深紅がハバネロピラーをあっさり弾く。



「ほわっつ?」



 私の最大出力なんですが……。


 深紅が蠢く。


 私にむかってこぼれてくる途中で、深紅が数え切れない狼みたいな獣に姿を変えた。



「おおぅ!?」



 レーザーっぽい攻撃とかハバネロピラー連発とかしてみるけど、なんか効かねえっす。


 結果。


 おいしくいただかれました。



 千は逝く、どこまで逝くの、緋色さん。五・七・五.


 つうわけで多分四桁台乗ってんでしょーっていう今日この頃皆さまはいかがお過ごしでしょうか。


 私は空からふりそそぐ隕石群をウィンクで破壊しています。


 マジマジ。


 ウィンクすると隕石が消し飛ぶんだぜ。


 この技いいでしょ?


 君にもウィンクしてあげる! でも死んじゃうけど!



「だーれに言ってんだか」



 肩を竦めつつ、隕石落とす魔術を延々繰り出してきやがる幻影を探す。


 なお隕石の方はオート発動の火柱――この魔術名前なんてつけたっけ――で破壊。


 お、いたいた。


 私の第六感が――まあただの探知魔術なんだけど――幻影の位置を特定する。


 私から見て三時方向に三十二キロっすか。オッケー。


 ちなみにこの世界の果てが未だに見れない。どういうことだってばよ。


 私は幻影がいる方向に両手を突き出す。


 すると、両手の間に電火が散り、それがあっというまに大きくなって、一つの巨大な雷球になった。



「イッちまいなぁあああああああああああああ、ぶるぁあああああああああああああ!」



 叫びながら、雷球を放つ。


 雷球は、その線上にあるなにもかもを高熱でプラズマ化させながら幻影に直進する。


 あっというまに雷球は私の視界から消えた。



「さて、当たってよー?」



 とか思ってると、雷球の反応が消えた。



「おろ?」



 視界に影がさした。


 見上げれば、そこには空を覆うほど巨大な赤い津波。


 有機液体金属タイプB……っつうらしいよ?


 持ち主の自由に形を変えられる液体状の金属なんっすよ。


 ちなみに。



「この我にその程度の質量で抵抗するか、雑種!」



 私の背後の空間が裂けて、そこから押し寄せる大津波の質量に劣らぬ質量の有機液体金属が一瞬で跳び出し、津波を押し返した。



「どや!」



 どん、と。


 小さな衝撃。


 見ると、虹色の線が有機液体金属を貫き、そのまま伸びて私の胸に刺さっていた。



「なんじゃこりゃああああああああああああふん」



 どれほど殺し、殺されただろう。


 既に感覚というものはない。


 人格も、果して自分がどんな人間であったかが思い出せない。


 私は今なにをしているのだろう?


 私はどこにいるのだろう?


 どうしてこんなところに?


 疑問が解決しないまま意識の闇の中に沈んで行く。



 ……なんて、全部冗談だコルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



「貧弱貧弱ぅ!」



 飛んできた虹色の剣――エリスカルコスというとんでも物質で作られたものを私はジョジョ立ちして魔力の塊をぶつけることで粉々に破壊する。


 幻影がエリスカルコスの大鎌を構え、一発で焼け野原を作るのに十分すぎるほどの威力を秘めた魔弾を無数に放ってくる。



「はっはぁあああああ! ピッチャーびびってるよぉっ!」



 腕を掲げると、虹色のバットが手の中にどこからともなく現れる。



「ホームラン!」



 飛んできた魔弾をことごとく幻影に向かって撃ち返す。


 幻影は魔弾を大鎌で切り裂きながら、私に飛びかかってきた。



「私と同じ顔でやるんなら、ルパンダイブにしておきな!」



 空中から虹色の鎖が生えて、幻影の身体を拘束した。


 バットを消して、私は人差し指を幻影に向けた。


 魔力が指先に集まる。


 その収束はとまらない。


 大きさで言えば、ビー玉程度の大きさ。


 だがそこには世界の理すら塗り潰すほどの魔力が込められている。


 魔力が色を変える。


 違う。


 魔力が、あまりの密度に変質する。


 全てを無に帰す概念がそこに生まれた。



「BANG!」



 概念が弾ける。


 指先から黒が溢れだし、私の目の前を塗り潰す。


 まるで巨大な黒い柱が空を突き刺すかのような光景。



「ふふん」



 黒が霧散して、後にはなに一つとして残っていない。



「よゆーっすね」



 そう胸を張った瞬間、私の足元が崩れた。



「おろん?」



「本当にどうするの、これで緋色が死んじゃったら!」

「大丈夫大丈夫」



 机に体重を預けて、ツクハさんが呑気に言う。


 けれど私は気が気じゃなかった。



「さっきからそればっかり……試練システムは中止できないの!?」



 私も、実はあの試練をクリアしたことがある。


 でもクリアするのに、体感時間で六十年以上もかかったのだ。


 倒された回数は百や千では効かない。


 クリアしたあとは、一ヶ月はまともに喋ることもできなかった。


 そんな試練にいきなり緋色を放り込むなんて、信じられない。



「あなたも知ってるでしょ。試練システムを作ったのは彼女だよ? 私じゃ、いくらなんでも介入できない。したとしても、中にいる緋色は消し飛ぶよ」

「っ……」



 歯噛みする。


 どうしてこんな試練を作ったのだろう。


 本来試練システムは、成長を促すのに必要な、簡単なスキルを与える――つまりはチュートリアル程度のものなのだ。


 試練システムでそれなりの力を手に入れてから、生徒はそれぞれ自分の得意分野をひたすら伸ばしていく。


 だから、その試練の大半が危険の少ない簡単なものだ。


 でも緋色が放り込まれたのは違う。


 最高レベルまで無理矢理に能力を叩き込む。そういうものなのだ。


 当然、危険性は跳ねあがる。



「そろそろ中では百年くらい経ったころかしら?」



 試練システムの中では、現実と時間の流れが圧倒的に違う。


 百年。


 それだけでも、人の精神が摩耗するのには十分すぎる時間だ。


 それに加えて外部的衝撃で精神が摩耗していく中、緋色は無事でいられるのだろうか。



「ナユタ。落ち着いてください」



 今まで黙っていたソウが、私の肩を掴む。



「落ちつけるわけ……ないよ……」



 そう絞り出した時、一つの気配が部屋の中に現れた。



「っ、これは……!」

「ほらね」



 ツクハさんが小さく笑う。


 すると、部屋の真ん中で空間が砕けた。



「あ痛っ」



 そんな声が聞こえた。


 部屋の真ん中で、緋色が尻もちをついていた。



「緋色!」



 すぐに私は緋色に駆け寄った。



「大丈夫、緋色!」

「あれ、ここ……んーと?」



 辺りを見回して、緋色が首を傾げる。


 記憶が混乱しているのだろう。


 それはそうだ。


 緋色にとって私達は、百年前の存在なのだから。



「えっと、記憶捜索魔術で……ああ、おっけおっけ、そういえばそうだったっけ」



 ぼそぼそと呟いて、緋色が顔をあげる。



「へろーナユタ。久しぶりー……って、こっちじゃそんな時間経ってなさげ?」

「あれからまだ数分よ」

「あ、そうなん?」



 ツクハさんの言葉に緋色はちょっとだけ驚いたような顔をする。



「あの……緋色?」

「うん?」

「なんとも、ないの?」



 緋色は、試練に入る前とそれほど変わったように見えない。


 ううん。


 その実力が段違いになったことは、分かる。この学園でも屈指の実力者になっていることが。


 でも、その精神に僅かなブレも見えない。


 普通なら廃人の一歩手前になってていいのに。



「なんとも、ってなにが?」



 けろりと緋色が聞き返して来る。


 ツクハさんが小さく吹き出した。



「頭はおかしくないの?」

「え、今わたくし凄いけなされましたか!?」



 あ……聞き方がまずかった。



「えっと、頭の中身は大丈夫?」

「言い直してもあまり変わってない!」

「え、ええ……?」



 なんだろ。ちょっと動揺して発言がおかしくなってきちゃった。



「……ふふん」



 緋色が小さく笑う。



「分かっておりますよ。なにが聞きたいのかは」



 その笑みが、にやにやとしたものに変わる。



「心配してくれるなんてやさしーね、ナユタは」



 緋色の手が私の頬にそえられる。



「……っ」



 あれ。


 ちょっと待って。


 今なんだか一瞬……おかしかった?


 なんだろ。


 胸が……苦しい?



「なんか二度くらい自分の心臓を突き刺しまくったり、ひたすら笑いながら辺りを焼け野原にして回ったりした時期もあった気がするけど、私、頭は大丈夫だよ」

「それ……大丈夫じゃなくない?」

「あ、そう?」



 ……なんていうか、おかしいな。


 私と緋色は出会って間もないのに、思ってしまった。


 緋色らしいなあ、なんて。



「ところで、あれっすわ」



 緋色が私に抱きついてきた。



「え……あの、緋色?」

「大胆だね」



 ツクハさんが笑いながら私たちのことを見ている。



「ちょい疲れたんで寝るわー」

「へ?」



 直後、耳元から寝息が聞こえてきた。



「……ええ、と」



 ツクハさんとソウを交互に見る。



「これ、どうしたらいいの?」

「甘やかしちゃえ」

「疲れているのでしょう。しばらくそのままにしてあげてはどうでしょうか?」

「……そっか」



 そうだよね。


 あの試練をクリアしたんだもん。


 凄いな、緋色は。



「そうだね」



 緋色の頭をそっと撫でる。



「おやすみ、緋色」



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