活動内容はっ!
ふぅ。
まあ、あれだよ。
私の話を聞いてくれるかい?
私ぁ今、戦争ごっこマニア部とかいう意味わかんねえ部にきているのさ。
意外や意外……というわけでもないが、その部にはちゃんと部室があった。
明らかに野外活動っぽい部活なのだが、この学園で野外とか青○とか露出プレイとか関係ないし。部屋、明らかに部屋じゃなくて一個の環境だし。
ちなみに青○の○に入るの春だから! おいおいあんたらなにかんがえちゃったんですかぁ。ぶひひ。
いやまあほんとは姦しい的な文字を入れるんだけどね!
でへっ。
……こほんっ。
いやん皆えっちだなー。
……おえ。
んん!
はーい、私は今、戦争ごっこマニア部の部室にノックも無しに突入したところでーす!
まあそのくらいのサプライズは必要じゃん?
でね!
中はね!
なんとね!
東京でした!
一面火の海の!
…………ホワィ?
ええと、一面、火の海?
ファイヤーシー?
フレイムシー?
ヴァーミリオンシー?
インフェルノシー?
萌え萌えきゅん?
今、確実にエターナルフォースブリザード並みの寒さがどこかで生まれた。間違いない。
んで、まあ……あれだわ。
んで、火の海な東京の上空に、巨大な三つの影が浮かんでる。
つかあれは……なんだ?
なんか、黒い……闇、っていうか……うん。とりあえず、そんなの。
そして、その闇の中にそれぞれ人影が浮かんでいた。
それに見覚えがある。
一人は、アイリス。
一人は、エレナ。
一人は、スイ。
「さて……残るは私達三人だけ、みたいね」
スイが目を細め、アイリスとエレナに対し身構えた。
スイの周囲の闇が、その背中に、まるで翼のような形状で集まる。
「この第三次三勢力衝突inトーキョーも終結だ!」
アイリスが手を上げると彼女の周りの闇が大量の剣の形状を形作る。
「……」
エレナは、無言のまま溜息をつく。
すると、残りの闇がエレナを中心に渦を巻いた。
「とりあえず、今回は私が勝たせてもらうわ……でも、その前に」
「今回こそ勝利を我が手に納めさせてもらうぞ……が、その前に」
スイとアイリスの瞳が、同時に同じ方向を向いた。
すなわち、エレナに。
二人が同時に、エレナに向かって飛び出す。
「正しい判断、だね。正直、常闇の扱いは私が一番上手いわけだし……三竦みで戦えば最後に残るのは当然私……って、そんなことに今更気付いたんだ?」
エレナの口元が歪んだ。
「っ!」
アイリスが腕を振るう。
すると、闇――どうやら常闇というらしい――の剣が、大量の雨となってエレナに降り注いだ。
それに対し、エレナは指をならす。
すると、彼女の周りの常闇が一度脈動して、巨大な竜の顎となって飛んできた剣を一噛みで消滅させる。
「甘い……やるなら、今の質量の千倍は持って来なよ」
「他所見してて、いいの!?」
エレナの背後に、いつのまにかスイが迫っていた。
スイの常闇の翼が羽ばたき、そこから無数の爪のようなものが生えてエレナに襲いかかる。
串刺しにされるエレナ。
そんな未来を私は見た。
けれど――。
「他所見? ちょっと違う」
スイの爪がエレナの身体に突き刺さる――直前。
爪が溶けた。
「これはね、余裕のあらわれ」
首だけで振り向いたエレナが微笑む。
「そもそもあなたや姉さんの常闇の制御を奪うのなんて、そう難しいことじゃない……ここで取るべきは、下手な鉄砲を数撃つのではなく、必殺の一撃を私にこれ以上ないというタイミングで撃ちこむことだった。まあ、そんなことはさせないんだけど」
つまらなそうに言って、エレナが手を上げる。
「常闇……喰らいなさい」
と、エレナの頭上に巨大な黒い闇が生まれた。
次の瞬間、強大な引力がその闇から生まれた。
「っ!?」
その場のエレナ以外の誰もが動揺した。
その引力は光すらも吸い込んで、辺りを暗闇に染め上げていく。
これってまさか……ブラックホール!?
遠くにいる私すら関係なく吸い込まれそうだった。
あんなのに飲みこまれたら……冗談じゃすまない!
私は慌てて、べりべりと剥がれていく地面に、自分の身体が壊れること覚悟で魔力による重圧を加え、吸い込まれないよう固定した。
膝が地面にめり込む。
「う、ぐっ」
身体中の骨が軋む音がした。
やっ、べえ……。
そんな中、私は上空に再び視線を向けた。
アイリスとスイは、どうにか空中に留まっていた。
だがそれが限界のようで、上手く身動きがとれない様子だ。
「まあでも、今回は良い線いってたかな……うん。それじゃあ、二女からの教訓」
エレナだけは至って普通に動いていた。
エレナの手がアイリスとスイに伸ばされる。
「二人とも、私に挑む前にせいぜい《顕現》くらい使えるようになってから、来なよ」
《顕現》?
なんだ、それ。
私が首を傾げると、エレナの手から強大な魔力の塊が放たれ、アイリスとスイの身体を打ち、そのまま二人を地表に叩きつける。
東京タワーよりも高そうな土煙が二ヶ所で立ち上った。
と同時、ブラックホールが消える。
私も自分への重圧を解除して、身体を再生させる。
「……パネエ」
この部活、関わるのはあまりにも命知らずすぎる。
どうして私はこんなところに来てしまったのだろう。ちゃんと下調べをするんだった。
「それで?」
びくりと肩が跳ね上がった。
エレナの瞳が、私を捉えていた。
「……は、はろー」
「こんにちは、緋色」
にっこりと綺麗にエレナが笑う。
「なに、部活見学?」
「ま、まあ、そんな感じ?」
「そうなんだ。それじゃあ、ここはどうだった? 楽しいよ?」
「あー」
ちらっと周りを見回す。
うん。
控えめに表現すると……地獄、かな。
「他の部活も見に行きたいんでこの辺りで! じゃ!」
ぴしっ、と手を挙げて、私は身を翻す。
「ふふっ」
背後から聞こえたエレナの微笑に背筋がこれ以上ないほどに冷えた。
うわぁ……。