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部活はっ!


「ん……むっ」



 布団から這い出て、背筋を伸ばす。



「むふぅ」



 冷蔵庫から飲むヨーグルトを出して、一気飲み。


 ああ、身体の奥までねばっこいのが落ちて……。


 なんてことを考えつつ窓から外を眺めて、小さな溜息をつく。



「んむ、今日もいい朝であるな」



 とかちょっと貴族気取ってみたり。


 さて、今日はなにをしようかな。



「またギルドで依頼受けてみようかなー」



 あるいは、どっかの学科にもぐりこむのもいいかも。


 ……まあ、あれだけど。


 ナユタに案内された時の教師の人達のとこにはいかないけど。


 特にライスケ先生。


 ありゃねえわ。



「うぐっ!?」

「どうかしたんですか、ライスケさん?」

「……い、いや。な、なんでもない、ぞ?」



 今、なんか言葉の槍がどこかの誰かに突き刺さった気がする。


 まあいっか!


 私の言葉に貫かれるならばその人も本望ってもんよ!



「さて、と」



 とりあえず、指をはじく。


 すると、次の瞬間私はパジャマ姿から私服になっていた。


 必殺、超早着替え!


 なんつってな。


 まあたんに着替えるのがめんどくさいとかそういうわけだったりわけじゃなかったり。


 え、乙女にあるまじき理由?


 いいんだよ! 私は乙女じゃなくて乙女を狩る者――乙女ハンターだからな!


 さあ今日も乙女を狩りに行こうか!


 はーはっはっ、レッツパーリィイイイ!


 ……なんでもない。



「さて」



 まあやることないなら、ナユタに連絡を取るってのもいいか?


 もしくは茉莉でもいいかも。


 んー。


 つか、さ。


 私……交友範囲、狭くね?


 いやまあまだこの世界に来て数日なわけなのでそれは当然と言えば当然なんですけど。


 ちょっと、交友範囲を広げる努力とかしてみようかな



「あ」



 そういや、ここって部活動とかってあるのかね?


 ふむ。こう言う時は検索だ!


 仮想モニタを出して、検索を起動。



「学園世界の部活、と」



 検索結果が表示される。



「ふむ」



 やはり膨大な数の検索結果が出た。


 軽く目を通す。



「ええと……学園世界の部活の総数……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……カ行の一番最後を発音したいがなにか世界の抑止力的なものが私の咽喉を抑えて放さない!?」



 まあ嘘だけど。


 とりあえずこの世界にある部活数がとんでもないことは把握した。


 そんじゃまあ、今日は部活巡りでもしてみますか?


 っても流石にこれ全部は回れないし、私の好みにあった部活を探すかね。


 んー。



「検索、学園世界、部活、オタク、っと」



 表示された大量の部活名。



「この中から適当に行くか」



 巡っている中で知り合い増やしていくとしよう。



 薄暗い空間。巨大な円卓を、二十人前後の人影が囲んでいた。


 その人影を照らす光は、それぞれの手元にある小さなモニターの明かりのみ。


 全員が、そのモニターを凝視していた。



「ふむ」



 響く声が聞こえた。



「いかがかね、諸君。これは」

「素晴らしいかと」

「期待値は高いな」

「同意にゃ」

「我々が待ちわびるに、相応しい」

「俺様が特別に許す。これは宝と呼んでいいものだとな」

「しかし万が一の可能性はある」

「今後の調査もぬかれぬが……まあ、決めてしまってもよいだろう。このブランドでこの出来ならば間違いなど憶に一程度しかありえぬしのう」

「それでは」



 モニターに表示されるもの。


 それは……今度この世界で発売される新作エロゲのプロモーション映像。


 ふ、ふふ。


 本当にいい出来じゃねえか。


 この世界、なめてたぜ。


 今日は帰りにパソコン買って、明日はエロゲ漁りだな。


 ぐへへ。



「ジーク・エロゲ!」

『ジーク・エロゲ!』



 重なった声が闇を震わせた。



「ふ……同志、緋色。どうだね、アーカシャ級廃人を三千人排出した我がエロゲ部に、入部しないか?」

「君ならば、すぐにでも幹部級に」

「いいや、あるいは大幹部すらも夢ではないだろう」

「ゆくゆくは、大総統の可能性もなくはない」



 そんな声に、私は顔を上げた。



「汝らの言葉、嬉しく思う。だが、私は先に進まねばならん」



 ゆっくりと、私は円卓から立ち上がった。



「ここでとまるわけにはいかんのだよ。私はね。アレを倒すために……この世界を、救済するために」

『っ!?』



 円卓がざわめく。



「こ、これはまさか、人の心を揺さぶる厨二病……!」

「厨二病・セカンド……!」

「ありえん! 厨二病・セカンドの発現者はいまだ数人しか確認されておらんのだぞ!」

「ば、馬鹿な。緋色殿はすでにアーカシャ級を越え、マルドゥーク級の廃人だとでも!?」



 円卓のざわめきを背中に、私は歩き出す。



「汝ら、その道を信じて進むが良い」

『……!』



 円卓に、再び衝撃が走る。



「汝らが私に……妾に追いついてくること……この心の臓に新世界の刃を突き立てるその瞬間、楽しみにしておこう」

『っ、ジーク・緋色!』



「うぉおおおおおおおおおおおおおお、来い……来いっ!」



 回転する巨大なルーレットが目の前にあった。


 そのルーレットを転がる銀色の玉。



「頼む……!」



 私に相対する男が、手を組む。


 私はただ、黙って見つめた。


 そしてルーレットの回転が弱まり、玉がルーレットの数字が書かれた枠におさまる。


 あたりを、ざわめきが包んだ。


 ざわざわ、ざわざわ。



「い、いやだぁああああああ!」



 男が叫ぶ。



「お、俺はもうあんなところには戻りたく……お、おかしいんだ! あの女、なにかイカサマをしているに違いない!」



 そんなことを言う男を、どこからか現れた黒いスーツの男達が両脇から持ちあげて、引きずって行く。



「うぁああ! うぁあああああ!」



 そのまま、男はどこかへと消えた。



「……馬鹿な。これで何連勝目だというのだ?」

「イカサマというのも、あながち……」

「だがここに一体どれほどのイカサマ破りがいると思っている?」

「そのなかでバレないイカサマを使っていると?」

「あるいは、ただ純粋な強運の持ち主、か」



 ギャンブルマニア部。


 ふふふ……ちょい楽しいな、これ。


 ちなみに言っておく。


 イカサマ?


 ……なんのことか緋色わかんなーい♪


 きゃぴっ。



「さ、次!」



 私の言葉に、周囲にいる誰も動かない。


 ふむ。


 まあ、こんなものか。



「んー、じゃ、とりあえず私はこれで退散しようかな」

「ま、待ってくれ!」



 この部の部長が前に出てきた。



「あ、あなたならギャンブル界の星になれる! 入部、しないか?」

「悪いね」



 にやりと笑う。



「私は、弱い者いじめは好きじゃない」



 それだけで、全て通じたらしい。


 部長が崩れ落ちる。



「それじゃあね」



 ふむ、私はなかなかおちゃめしてるな。


 とか思いつつ、次の部活はなににしようかと仮想モニタを見ながら思案する。



「あ」



 なんかおもしろそうなの発見!



「戦争ごっこマニア部、か。うむ、これだな」



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