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いちゃつきはっ!

 舞台の上にツクハと小夜がのぼる。


 片や知る人ぞ知る学園世界の理事長。


 片や特別クラスが誇るクールさん。


 ……はたしてあのでこぼこな二人がどんなことをするのか。



「それで、どうするんですか?」

「どうしようかしら?」



 聞こえたっ!?


 ねえ皆今の聞いた!?


 あの二人、ここに至るまでなにも考えてないんですけど!



「……もう面倒ですし、笑顔の一つでも見せて終わりにしてください」

「え、あなたが笑顔を浮かべるの?」



 なんだって!?


 小夜の笑顔!?


 がたっ、と私達と共に舞台袖で控えていた臣護さんと悠希さんが身構える。


 その手にはいつ取り出したのか、ビデオカメラと一眼レフ。


 ……バカップルにとどまらず、親馬鹿か!


 つか一眼レフ手にした悠希さんが、すげえマジな目なんだけど。


 狙い撃つぜ、って感じなんだけど。



「馬鹿をいわないでください、あなたがですよ」

「あら、珍しいものが見れると思ったのに」



 ああ、臣護と悠希さんが無表情のままがっくりしてる!


 小夜! あなたの両親がすごい絶望してるよ!?


 あなたどれだけ両親に笑顔見せてこなかったんですか!?



「仕方ないわねえ」



 ツクハが観客を見渡す。


 そして……。


 にこり。


 ぞわっ。


 効果音がおかしい?


 いいえ、正常です。


 ツクハが笑顔を浮かべた瞬間、あたりが妙な威圧感に包まれる。



「清き一票をよろしくね?」



 脅した!


 脅しにはいりましたあの人!


 理事長のすることではありません!


 これには観客も茫然自失! なかには倒れる人も出る始末だぁああああ!


 最悪です!


 これは最悪です!


 ……こうしてツクハと小夜は舞台を降りた。



 さて、あの後味のなんとも悪い組の次ですが。



「佳耶、愛しているわ……この世の誰よりも」

「ば、馬鹿っ、こんなとこで言うことないでしょ!」

「そういう趣旨じゃないの?」



 くすりとリリーさんが笑う。


 佳耶さんはもう顔が真っ赤だ。



「いいじゃない、見せつけてやるくらいの気持ちになれば吹っ切れるんじゃないかしら?」

「そんなわけないでしょ!」



 もじもじと佳耶さんが落ち着かなさそうにする。



「もう、なにこの競技……うう……」

「佳耶、大好き」



 リリーさんが佳耶さんの耳元でささやく。



「ひゃっ!?」

「抱きしめてもいい?」

「だめ!」

「やだ」



 リリーさんは優しく佳耶さんのことを抱きしめた。



「佳耶、あったかい……ふふ、なんだか久しぶりに佳耶を抱きしめた気がする」

「ちょ、ちょっと、もう……だからやめてってばぁ!」

「いいじゃない、ふふっ、照れてる佳耶もかわいい」

「リリー! もうやめてってばぁああああ!」



 普通のいちゃつききたぁあああああああ!


 ここでまさかの一番趣旨にそった行動をする組の登場!


 甘い、なんて甘いんだ!


 こいつらいちゃいちゃしすぎじゃねえの!?


 よーし、砂糖を吐くぞ、いち、に、さーん!


 げぼぼぼぼぼ。


 おっと失敬!


 ふふふ。


 ――そしてこの後数十分間、二人のいちゃつきは続いた。


 なげえ!



 先ほど娘さんの組が会場の雰囲気を悪化させたのに責任感を感じているのか?


 いいやまるで感じた様子はない!


 臣護さん、悠希さんペアの登場ぁあああああ!



「これで終わりにするわ」



 え?


 空気が凍った。


 会場が、しんとする。


 え、終わりですか?


 なにもしてませんけど?


 これ、ビリ確定じゃ?



「言っておくけど、別に臣護といちゃつくのが嫌なわけじゃないわよ」



 でもね、と悠希さんがにやりと笑う。



「私のそういう姿を見ていいのは、臣護だけなの」



 ……。


 次の瞬間、会場が喝采につつまれた。


 なんだあれだけでいちゃつきっぷり見せやがって!


 なーにが、そういう姿は旦那様だけにしか見せないの、きゃぴっ、だよ!


 ふいに、喝采の中から「いいぞー、万年熱々熟年夫婦!」という声が聞こえた。



「誰が熟年よ!」



 なんだかいやに派手な服装をしていた人だったが、その人は次の瞬間悠希さんのピンポイント射撃で空高く打ち上げられた。


 ……なんだあの人。



「ふん」

「まあ熟年っていうか、実年齢は……」

「しーんご?」

「……あ、いや、なんでもない」



 臣護さんは震えていた。



「ナワエちゃん、ワイらの愛を証明する時や!」



 ざしゅ。


 ……お察しください。



「棄権するわ」

「ですね」



 ナンナさん、ティナさんの組はなんといきなり棄権。



「だって私が一番愛しているのはやっぱり……」

「ええ、ここにはいませんから」



 なんであんたらこの大会でたんだよ。


 冷やかしで決勝までくんなよ。


 会場にいる全員の心の声だった。



 シドウ、葵さんペア。



「ふふ、なんだか恥ずかしいですね?」

「……うむ。こういうのは、やはり得意ではない」



 そういいながら、シドウは葵さんの膝に頭をのせていた。


 そして、葵さんは……シドウに耳かきをしてあげていた。


 耳かきだと!?


 馬鹿な、なんてイチャレベルだ!


 こんな公衆の面前で耳かきをする発想力!


 そして言葉などなくとも作り出されるあの甘い空間!


 これは高得点必至だ!



「はい、終わりましたよ」

「ああ、すまなかったな」

「いいえ、あなたのためになにかができるというのは、私の幸せですから」



 はいごちそうさまでした。


 こんな家庭を築きたいよね、と思わせる二人でした。


 お疲れ様です。




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