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ちちんぷいぷい

作者: あき伽耶


挿絵(By みてみん)



ママたちへのエール! 

届きますように……✨

「もうおうちに帰るよ!」

「「やだ、もっと遊ぶ!」」


先程から何度繰り返していることか。

公園で遊ぶ三歳の陽太と二歳の健二はヒーローになりきっていて、帰りたいとはちっとも思っていない。

イライラして吐いた深いため息の先には、四ケ月の(はな)が抱っこ紐の中でぐずり始めていた。私は笑顔であやす気持ちにもなれず、とりあえず華の背中をトントンしながら、夢中で走る兄弟をぼうっと視界に入れた。


夫の育児休暇が終了して三か月。休暇のしわ寄せで多忙な夫には仕事に専念させてあげたいと、私は一人で懸命に家事と育児をこなしてきた。幼子三人との一日は目まぐるしく、自分の時間なんてない。

正直、もうクタクタだった。

しかし先日、見兼ねた夫が手伝うよと言ってくれたとき、私は空元気を出して断ってしまった。夫に心配をかけたくなかったのだ。


「ママ!」と呼ぶ泣き声で我に返った。

見ると転んだ健二が膝を抱えて泣いていた。幸い怪我はないようだ。

私はなぐさめに行こうとしたが、足が重くてすぐには動けなかった。

先に駆け付けた陽太が私を振り返った。


「ママの代わりに、僕が健二におまじないしてあげる!」

(陽太が? 私の代わりに……?)


かしこまった陽太は一本指を作って両腕をぐるぐると回し始めた。まるでヒーローの変身ポーズだ。


「ちちんぷいぷいの~プイ!」


声と同時に、自分の顔と指先を泣き顔の健二にぐいと近づけた。兄の突飛で愉快な行動に、健二は目をぱちくりとさせて泣き止んだ。

陽太は得意満面だ。

まさか幼い陽太が、私の代わりに健二を慰めてくれるなんて。

元気を取り戻した健二は、ぐずり泣く華に気がついて目を輝かせた。


「健二もプイする!」


今度は二人で華におまじないをするという。

ヒーローたちの真剣な表情に引き込まれ、思わず私も華をあやして応援した。


「「ちちんぷいぷいの~プイ!」」


おまじないの効果か兄達が面白かったのか、なんと華は泣き止んで笑みを浮かべた。

やった! とはしゃぐ二人。


おまじないをかけ合って笑顔になった子ども達を見て、私はふと、何もかも一人で背負い込もうとしていた自分に気がついた。


「ねえ、ママにもおまじないかけてよ、私も笑顔になりたいな」


私のお願いに二人は大張り切りだ。


「「ちちんぷいぷいの~プイ!」」


弾んだ声が左右で響く。間近で見る紅潮した顔が愛おしい。

力みすぎて強張っていた気持ちが、和らいでいく。

夫の申し出を思い出す。


私、もっと肩を借りよう。



おまじないをかけられた私の心は、ふわりと温もりに包まれた。





(了)




お読みいただきどうもありがとうございました。

子育て、大変ですよね。少しでもこの作品があなたの元気の素になりましたら、嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
子どものエナルギー量って凄まじいから、男がたまに子守すると圧倒されるわ、へこたれるわで大変なんですけど…… 女の人は日常的にこなしているんですよね。ただ、リスペクトあるのみ。 ついでに、そんなママを…
ほっこり( ˘ω˘ )
∀・)何気ない日常の1コマを描かれた作品だと思いますが、そこにこめられたメッセージは深く温かい。とても素敵な作品だなぁ~と読ませて頂きました。社会福祉の通念に通じる、いや、それよりか通じて欲しいものだ…
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