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奇島遊心のショートショート  作者: 奇島遊心
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初デート

 彼との初デートで、映画館に行くことになった。


 私は最近公開したアクション映画を見たかったが、彼は「こっちの恋愛映画にしよう!」

と言った。おそらく、私といい雰囲気になりたいがゆえのチョイスだろう。


 可愛いやつめ、と思いながら、「私もそれが見たかったの!」と了承する。


 九十分の退屈な時間を過ごした後、映画館を出る。

 多くの人が涙で目を赤くする中、私は眠気覚ましにつねっていた手の甲が赤くなっていた。

 最後まで起きていた自分を褒めてやりたい。 


 その後喫茶店に入り、席に座ると、彼は映画の感想を語り始める。

「面白かったね! 最後は泣けちゃったよ」

と絶賛する。

 本音を隠し「そうだね」と相づちを打っていると、彼はこう言った。


「そういえば、あの映画の主人公、名前なんだっけ?」


 彼とは映画の趣味は合いそうだなと思った。

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