77 隣国の辺境伯令息の好きな人
「あ、あの、マーモットに恋愛相談をされても、私はマーモットじゃないので、どう答えたら良いのかわからないのですが……」
私の返答を聞いたマーモットは、口をあんぐりと開けて私を見つめた。
おかしなことを言った覚えはないんだけど、どうしてそんな間抜けというか、可愛らしい顔をするのかしら。
助けを求めてパルサ様を見ると、パルサ様は苦笑してマーモットに尋ねる。
「君が誰だか、リゼさんに教えても良いですか?」
「それは、あの、はい」
マーモットが顔を縦に振ったのを確認してから、パルサ様は私に目を向けて教えてくれる。
「リゼさん。彼はブロッディ卿です」
「……やっぱりそうだったんですね」
妹が変身できるのなら、兄のブロッディ卿が変身できてもおかしくはないもの。
「どうしてお前は驚かないんだ」
一人で納得していると、ブロッディ卿に尋ねられたので用意していた答えを伝える。
「パルサ様たちのことを知っているからです」
問題があるなら、ルカ様たちのことを伝えても、ブロッディ卿は忘れてしまうと思う。
でも、わざわざルカ様たちのことを伝えずとも、パルサ様という良い例があるのだから、その答えで良いと思った。
パルサ様も私の考えを理解してくれたみたいで、それを証明するかのように話をしてくれる。
「リゼさんはとても良い人なので、僕のことを忘れないんですよ」
「……そうですか」
ブロッディ卿はむちむちボディを私に向けて尋ねてくる。
「なら、ミノールのことも覚えてるんだな?」
ミノールさんは妹さんの名前よね。
あの時のことを思い浮かべながら頷く。
「はい。とても可愛らしい鹿でしたよね」
「だろう? あいつは可愛いんだ!」
普段は嫌な人なのに、妹のことになると普通の兄になるのだから、ルカ様たちの前でも普通にしてくれたら良いのにと思ってしまう。
「おい。なんで黙ってるんだよ」
「申し訳ございません。あの、とっても可愛かったです」
見た目は、と言いそうになっだけれど、何とかこらえることができた。
「だろ!」
なぜかブロッディ卿が私の膝の上に乗ってこようとするので、パルサ様が叱ってくれる。
「リゼさんに必要以上に近づかないでください」
「あ、あの、彼女に話したいことがあるんです」
ブロッディ卿は、パルサ様の腕の中で私を見つめて口を開く。
「恋愛相談が無理なら、好きなものとかを教えてくれよ」
「好きなもの、ですか? 誰のです?」
「お前のだよ!」
マーモット姿のブロッディ卿に怒られても全く怖くない。
逆に緩んでしまう頬を両手で押さえて答える。
「私の好きなものと言いますと……って、今じゃなくても良いですか? ルカ様たちが待ってますので」
「今が駄目ならいつなら良いんだよ」
「手紙に書いて送りますね」
「……そんな! せっかく勇気出して来たってのに、ひどくねぇか?」
「……ブロッディ卿、何か言いましたか?」
「いえ」
ブロッディ卿は何やらブツブツ言っていたけれど、パルサ様の圧に負けて、すんなりと引いてくれた。
その場で、ブロッディ卿と別れてルカ様たちの元に戻ると、二人は心配そうな表情で尋ねてくる。
「何の話でしたの?」
「どんな話だったんだ?」
なんと答えたら良いか私が迷っていると、パルサ様が答える。
「ルカにライバルができたみたいです」
「「「はい?」」」
ルカ様とイコル様だけでなく、私までもが聞き返してしまった。
個人的な理由で更新を停めてしまい申し訳ございませんでした。
書籍も発売されておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします!




