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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第九章

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70 ルカの婚約者

「な、なんでノルテッド辺境伯がここにいるんだよ!?」


 ブロッディ卿は焦った顔になって叫んだあと、ジョシュ様に抱えられている女性に向かって声をかける。


「ミノール! 大丈夫か!?」

「お兄様! わたしは大丈夫ですわ。あの、ノルテッド辺境伯、わたしを放していただけませんか」

 

 ミノール様は先程までの敵意剥き出しの態度はどこへやら、白い頰を真っ赤にして顔を手で覆って、ジョシュ様にお願いした。


「もう逃げないだろうな?」

「もちろんですわ」


 ミノール様は手を顔から離して、ジョシュ様の問いかけに頷く。

 ジョシュ様が優しくミノール様を地面に下ろすと、ブロッディ卿が駆け寄った。


「ミノール! 怪我はないか? 何もされていないよな?」

「心配しないでお兄様。わたしは大丈夫ですから」

 

 ミノール様はブロッディ卿に微笑んだあと、すぐにルカ様に視線を向ける。


「ミノール・ブロッディと申します。ルカ様にお会いできて嬉しいです」


 うっとりとした目で頬を赤く染める姿を見ると、女性の私でも可愛いと思ってしまう。

 ブロッディ卿が可愛がるわけね。


「それはどうも。俺は話すことはないから行ってもいいか?」

「え? あ、でも、今、挨拶をしたばかりですが?」

「リゼを睨んでただろ」

「そうですわ! リゼおねーさまに、ぶれいなたいどでしたもの。そんなひとと、おにーさまは、おはなしなんていたしませんわ!」


 ルル様が私の手を握り、ミノール様に叫んでくれた。


「ありがとうございます、ルル様」

「どういたしまして、ですわ」


 ルル様の手を握り返すと、嬉しそうに微笑んでくれた。


 ルル様は本当に可愛らしい。

 そう思って和んでいると、ミノール様が話しかけてくる。


「無礼な態度を取っていたように見えたのであれば謝りますわ。ですが、遠いものが見えづらくて、目を細めていただけですの」

「そんな風には思えませんでしたが?」


 私にしてみれば、憎悪の眼差しにしか感じられなかった。少し強い口調で言い返すと、ミノール様は泣き出しそうな顔になる。


「酷いですわ。リゼ様とは会ったばかりなのですから、わたしのことをよく知らないはずです。それなのに決めつけてしまわれるなんて!」

「おい! ミノールが傷ついているだろ! ちゃんと謝れよ!」

「偉そうにするな」


 ジョシュ様はブロッディ卿を睨みつけてから、ミノール様に話しかける。


「ルカに興味があるようだが、ルカにはリゼがいる。妻から聞いた話では二人は上手くいってるんだ。諦めてとっとと国へ帰れ」

「そ、そんな!」


 ミノール様は助けを求めるかのようにルカ様を見た。

 けれど、ルカ様は助けるどころか、彼女を突き放す。


「俺のことを気に入ってくれたことについては有り難いと思う。でも、気持ちに応えることはできない。俺にはリゼしかいないから」

「ルカ様」


 どんな反応をしたら良いのかわからなくて、名を呼ぶのが精一杯だった。

 まさか、こんな言葉を聞く日がくるだなんて!


「そんな、ルカ様!」


 ミノール様の悲痛の声が聞こえ、私はルカ様からミノール様に視線を移す。

 ちょうどその時、彼女の目から大粒の涙が溢れ出した。


 こんなことを言うのはなんだけど、こんなはずじゃなかった、残念でしたね。というところかしら?


 ――と、こんなことを思うなんて、性格が悪いわよね。気をつけなくちゃ。

 

「あらあら」

「青春してるなあ」

「すてきですわぁ」


 ライラック様、ジョシュ様、ルル様の順番で声が聞こえてきた。

 それぞれに視線を移すと、ライラック様とジョシュ様はニコニコして私とルカ様を見ており、ルル様は空いている手で、自分の頰を押さえて照れている。


「待てよ、ノルテッド卿」


 ミノール様が呆然としているからか、ブロッディ卿がルカ様に話しかけた。


「何だよ」

「前にも言ったが、俺もこの女が好きなんだ! だから、お前にミノールをやるから、お前はこの女を渡せ!」


 この女というのは私のことのようで、ブロッディ卿は私を指差して叫んだ。


 本当に好きなら、名前くらい呼ぶでしょう? もしかして私の名前を覚えられないの? 辺境伯令息として大丈夫なのかしら。


「ふざけるなよ」


 ルカ様は私を抱き寄せて、ブロッディ卿に告げる。


「リゼは俺の婚約者なんだ。お前なんかに渡すわけねぇだろ」


 ルカ様の言葉にダメージを受けたのは、ブロッディ卿ではなく、ミノール様だった。


「うわあああ!」


 彼女は大声を上げたかと思うと、地面に座り込んで泣き始めたのだった。

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