69 辺境伯との再会
「リゼ?」
「リゼおねーさま?」
私の様子がおかしいことに気がついたルカ様とルル様が喧嘩をやめて私に話しかけてきた。
私が言葉を返す前に、ルカ様はルル様の前に立ち、私を後ろに下がらせると警戒体制を取った。
「何の用なんだ、あの女」
「ルカ様のお知り合いですか?」
「いや。顔は知らないが、匂いはブロッディ卿と似た匂いがする。それに、ブロッディ卿も近くにいるな」
「では、もしかすると、あの方がブロッディ卿の妹のミノール様でしょうか?」
「かもしれない」
尋ねた私にルカ様は頷く。
「まったく。今から楽しい買い物をしようと思っていたのに邪魔をしないでほしいわね」
ライラック様が苛立った様子で、ミノール様らしき少女に向かって歩き出した。
「母上!?」
困惑の声を上げるルカ様に、ライラック様は振り返らずに言う。
「殺気を放ってくるだなんて許せないわ」
すると、ライラック様が近づいてくることに気がついたミノール様は慌てて踵を返して走り出した。
「ちょっと待ちなさい!」
ライラック様が叫んで追いかけようとした。
でも、すぐに足を止めてこちらを振り返る。
それと同時にルカ様が私を抱き寄せた。
「えっ!?」
「リゼに何の用だ」
ルカ様は私を抱きしめたまま、誰かに問いかけた。
「別に好きな女性に声を掛けたって良いだろう?」
声を聞いただけで、相手が誰だかわかった。
私のことを好きな女性と言うだなんて、そんな嘘をつくのは一人しかいないもの。
「ブロッディ卿、いつまでそんな嘘をつくつもりなんですか? 前回のこと、本当に反省しているんですか?」
ルカ様にがっちり掴まれているので、顔だけ動かして、横から現れたブロッディ卿を睨みつける。
「反省はしてるよ。一応、俺だってめちゃくちゃ怒られたんだ。剣の柄の部分で頭を殴られた。その時の傷でも見せてやろうか?」
「結構です。それよりも、ミノール様はルカ様に会いたいんじゃなかったんですか? それなのに、どうして逃げてしまったんです?」
「しょうがねぇだろ。妹はシャイなんだ」
「私を睨んでいましたが、それはシャイと関係ありますか?」
「関係ねぇんじゃねぇかなぁ?」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるブロッディ卿を見ると、デフェルのことを思い出すから、余計に気持ちが悪かった。
「あなた、いったいなにがしたいのですか!? リゼおねーさまは、わたしのおにーさまのこんやくしゃですので、きやすく、ちかづかないでくださいませ!」
ルル様が私の前に立って叫ぶと、ブロッディ卿は声を上げて笑い始める。
「小さいなあ。ちょうど蹴りやすいサイズだ」
「お前!」
ルカ様が私を離して、ルル様を抱きかかえようとしたけれど、なぜかその動きを止めた。
というよりかは、わざと止めたと言ったほうが正しいのかもしれない。
「よう! 久しぶりだな! ルル、ルカ、リゼ、元気にしてたか?」
久しぶりに声を聞くと、何だかとても懐かしく感じた。
ジョシュ様がまるで獲物を捕まえたと言わんばかりに、ミノール様を片手に担いで、ライラック様と共に、私達の所へやって来たのだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
本作品ですが、3月8日に書籍の発売が決定しました!
それに合わせてタイトルを「こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由気ままに暮らしたい!〜」に近い内に変更いたします。
そして、本作のコミカライズも進行中です!
引き続き、楽しんでいただけるよう頑張りますのでお付き合いいただけますと幸いです。




