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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第九章

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67 リゼの複雑な気持ち

 勉強をしている間も、パルサ様やイコル様とは連絡を取っていた。

 テストも無事に終わり、パルサ様達の国にも行けそうだと連絡すると、二人共喜んでくれた。


 まさか、お二人とこんな風に仲良くなれるだなんて思ってもいなかったから嬉しい。


 お二人とは大体の日にちだけ約束していて、出発前に改めて連絡を入れることになっている。


 まずは、ルフラン様と一緒にノルテッド辺境伯邸に向かうことになった。


 ルカ様のお父様のジョシュ様と会うのも久しぶりなので、とても楽しみだ。

 猫たちは使用人に任せて、ラビ様も一緒に里帰りすることになっているから、楽しい旅行になりそうだった。

 

 ただ、一つだけ心配事があった。

 それはブロッディ卿のことだった。

 先日の一件の後に、ブロッディ家とノルテッド家は揉めている。

 ブロッディ卿は彼のお父様からかなり叱られたみたいだったけれど、刑事罰などはなかった。

 きっと、お金で解決したのだと思われる。


 ノルテッド家はそれに対して猛抗議した。

 女性に乱暴しようとしたのだから、お咎めなしだなんて許せないと言ってくれた。

 でも、ブロッディ家は「終わった話だ」として、ノルテッド家の介入を拒否した。


 ブロッディ卿からは私宛に謝罪の手紙が届き、本心かはわからないけれど、反省していると書かれていた。

 でも、その後に書いてあったことが問題だったのだ。


 ブロッディ卿の妹であるミノール様がどうしても、ルカ様に会いたがっているので、会わせてやってほしいと書かれていた。


 なんて都合の良い人なのかしら。


 でも、会う会わないかはルカ様が決めることなので、ルカ様に聞いてみることにした。

 手紙を読み終えたのは出発の二日前の朝だった。


 談話室でルカ様に尋ねてみた。


「あの、今度の旅行でノルテッド辺境伯領に行った際に、ブロッディ卿の妹のミノール様がルカ様に会いたいみたいなんです」

「俺に? 兄貴のことで何か言うつもりか?」

「いえ。そういうわけではないと思います」

 

 好きだと言う気持ちは、他の人が伝えるよりも本人が伝えたほうがいいわよね。


 首を横に振ると、ルカ様は面白くなさそうな顔をする。


「会うのは別にかまわないけど、リゼは良いのか?」

「はい?」

「婚約者が他の女と会うのを嫌がる女性だっているだろ」

「それは、そうですね」


 頷いてから、ルカ様に微笑む。


「ルカ様は婚約者がいるのに、他の女性に興味を持ったりしないでしょう?」

「わ、わからねぇだろ」


 なぜかルカ様が焦った顔になった。


 それって、どういうこと?


「酷いです、ルカ様! 会う前から浮気するという発言ですか?」

「そ、そういうわけじゃなくてだな!」

「勝手になさってください!」

「ちょっ、リゼ!」

「頭を冷やしますから、追いかけて来ないでください!」


 ルカ様に名を呼ばれたけれど、振り返りもせずに談話室を飛び出して自室に戻った。


 ルカ様は私の部屋まで追いかけてきて、しばらくの間、私の部屋の前で謝ってくれたけれど、この時の私は頭に血が上っていて、ルカ様に本気で怒っていた。しばらくしてルフラン様がやって来たので、部屋に招き入れるとルカ様の気持ちを伝えてくれた。


「ルカはリゼにヤキモチを妬いてほしかったんだよ。やり方がわかりにくいよな。今回はルカが悪いから、しばらく反省させたらいいよ」


 ルフラン様から話を聞いて、それならそうとはっきり言ってほしいと思った。

 でも、冷静に考えると、私も自分から言いだしておいて怒るなんて良くないことに気がついた。


 数時間後、反省した私がルカ様の部屋に行くと、なぜか黒豹の姿になっていた。


「ル、ルカ様?」

「……ごめん」


 しゅんとルカ様が頭を垂れる。


「あの、こちらこそ申し訳ございませんでした。それよりも、どうしてルカ様は豹の姿に?」

「落ち込んでたら、人間の姿に戻れなくなった」

「ええ!?」


 驚きの声を上げると、ルカ様が部屋の中に入るように促してくる。


「たぶん、すぐに戻ると思うから入れよ」

「えっと、お邪魔します」


 ルカ様の部屋に入るのは初めてじゃないけど、すごく緊張した。


 促されたソファに座ると、ルカ様は横に座り、私の腕に頭を擦り付けてくる。


「本当にごめん」

「いえ。私が悪いんです。怒るべきところではありませんでした。だから、あの、本当に私のことは気にせずにミノール様と会いたければ会ってくださいね」

「会わない。リゼと喧嘩したくないし」

「もう怒ったりなんかしません。本当に申し訳ございま」


 謝罪の途中でルカ様が人間の姿に戻った。

 私の肩に顔を寄せている状態になったので、かなり焦ってしまう。


「あの、ルカ様!」


 こういう状況には慣れていなくて、ドキドキしながら尋ねる。


「ブロッディ卿とはあまり仲が良くなさそうですが、何かあったのですか?」

「あんまり覚えてないんだよな。昔からあんな感じだったから」

「……そうなんですね」


 ブロッディ卿が敵意を剥き出しなのは、ミノール様のことがあるからなのかしら?


 それにしても、こういう場合の私の対応はどうしたら良いのかしら。


 会わせないというのも心が狭い気がする。

 だけど、婚約者に他の女性と会ってというのもおかしいわ。

 それなら……。


「ルカ様、ミノール様の件ですが、私も一緒にお会いしても良いですか?」

「良いに決まってるだろ」


 ルカ様は頷いた後に尋ねてくる。


「でも、どうしてブロッディ辺境伯令嬢は俺に会いたいんだ?」

「それは本人に聞いてください」


 不思議そうな声のルカ様に苦笑してから答えた。

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