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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第八章

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60 デート中の乱入者

 イグル様からのアドバイスは、初めてのデートではあるけれど、私たちは一緒に暮らしているのだから、下手に意識せず気楽に過ごせるところが良いのではないかとのことだった。

 お話をたくさんできたら良いなと思ったこともあり、まずは女性に人気のカフェに向かうことになった。

 赤い三角屋根のログハウスの中を改築しているお店で、外観がとても可愛らしい。

 それに店に入る前から甘い匂いが漂ってきて心が弾んだ。

 店に入ると、デートスポットとしても人気だからか、店内には女性のグループ以外に、たくさんのカップルがいた。


「これはやばいな」


 ルカ様が手を繋いでいないほうの手で口を押さえたので聞いてみる。


「どうかされたのですか?」

「いや、何か、恥ずかしいと言うか」

「あ、えっと、ごめんなさい。でも、せっかくなので、中でお話しませんか? ここ、すごく人気のカフェでして!」

「いや、入りたくないわけじゃなくて」


 ルカ様が慌てた顔をして言ったところで、店員さんが近付いてきて「御予約の方ですか」と聞いてきた。

 ルカ様が「そうです」と頷いて名前を名乗ると、店員さんは私たちを店の裏にあるテラスに案内してくれた。

 店内は混雑していたけれど、裏のテラスにはテーブル席が一つしかなく、二人で過ごすには広いスペースだった。

 テラスからは近くにある木々や小川が見えて、鳥の囀りも聞こえてくる。


 癒やしの空間といった感じだった。


 護衛騎士の人たちは、テーブルから少し離れた位置に立って周りを警戒してくれることになった。

 窓からこちらの様子が見えるため、店内の人は最初は物珍しそうに私たちを見ていたけれど、すぐに自分たちの世界に戻っていった。

 

 カップルが多いから助かったわ。


 これが女性だけのグループばかりなら、ルカ様を気にする人たちもいたでしょうし、ゆっくり話すことなんて無理だったでしょう。


 向かいに座ってメニューを見ているルカ様は、まつげも長いし、整った顔立ちをされている。

 ルカ様に見惚れていると、ルカ様はメニューから目を離し、私に視線を向けて言う。


「リゼ、俺は飲み物だけで良いから、リゼは好きなものを頼めよ」

「……えっと、そうですね。ケーキセットを頼むことにします。果実ジュースとチーズケーキで」


 ちょうど良いタイミングで店員さんがオーダーを聞きに来てくれたので、ルカ様が私の分まで頼んでくださった。


 店員さんが店内に戻っていったのを確認してから、せっかくのデートなので、ちょっと勇気を出してみる。


「良かったら、私のケーキを半分食べませんか?」

「え? あ、うん」


 ルカ様はなぜか店内のほうを見てから、大きく首を縦に振った。

 何を見ているのかと思ってルカ様の視線を追うと、女性が男性にケーキを食べさせてあげているのが見えた。

 だから、慌てて否定する。


「あ、あの、食べさせるとかそういうのではなくて、普通に半分に分けて食べるつもりです!」

「……そうか」


 なぜか、ルカ様ががっかりした顔になった。


 もしかして食べさせてほしかったの?

 ルカ様って、甘えるような人には見えないし、そういうことをするのは嫌いそうに見えるのに……。


「あの、ルカ様」


 ルカ様が望むのなら頑張ろうと思った時、店員さんが飲み物を運んできてくれた。


 ……のは良かったのだけれど、なぜか躓いてしまった。

 なんとか踏ん張って倒れはしなかったものの、トレイの上にのっていた果実ジュースの一部が私の腕にかかってしまった。


「リゼ! 大丈夫か!?」


 ルカ様が立ち上がって聞いてくる。


「申し訳ございません!」


 店員さんは悲鳴を上げたあと、トレイをテーブルに置いて泣きそうになりながら謝ってきた。


「大丈夫です。熱い飲み物じゃないですから」

「ですが、お洋服に……!」

「そうですね。ベタベタしそうなので、水で洗ってきます」


 心配そうにしているルカ様には笑顔を見せて、ハンカチを持って立ち上がり、お手洗いに向かった。


 お手洗いは個室になっていて、男性用と女性用とで分かれていた。

 手を洗う場所もその個室の中にあり、空いていたので中に入った時だった。


 誰かが後から一緒に個室内に入ってきて扉を閉めた。


 悲鳴を上げようとすると、その人物は私の口を手でおさえる。


「静かにしろ。言うことを聞くなら手荒な真似はしない」


 そう言って私を脅してきたのは、隣国の辺境伯令息であるブロッディ卿だった。


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