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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第五章

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42 ミカナの涙(ミカナside)

※ミカナ視点です。 




 お父様から助け出してもらったのはいいものの、レンジロ公爵家では召使い扱いだった。


 レンジロ公爵はわたしをまるでゴミを見るような目で見てくるし、夫人なんかは、アルパカの唾をかけられたわたしを見て笑うのが日課だ。


 他の使用人も、わたしには、あまり近づいてこない。

 どうやら、わたしは屋敷の人間から嫌われているみたいだった。


 どうして、わたしが嫌われないといけないの?


 わたしは他国の伯爵令嬢だし被害者なのよ?


 同情してくれても良いと思わない?

 悪いことをしてるのは、お父様やお兄様であって、わたしは何もしていないわ。


 そりゃあまあ、リゼから婚約者を奪ったり、彼女を殺そうと考えたこともあったけれど、殺そうとしたことに関しては、馬鹿なことをしたと反省しているわ。


 リゼを殺したって意味がないものね。

 それに使用人に罪を被せるのは難しいことだって知った。


 わたしは、本当に馬鹿だった。

 今回の件でエセロとの婚約も解消になったし、住んでいた家には帰れない。


 というか、祖国には帰れなくなってしまった。

 やってきたこの国にはわたしの知り合いはいない。


 たまに、お父様が様子を見に来てくださるけれど、お兄様は知らんぷりだし、ここ最近は孤独を感じるようになった。


 仕事をしている時は寂しさを紛らわすことができるので、真面目に働こうと思ったけれど、どうもそんな気になれない。


 長男のパルサ様の世話係をさせられることになったけれど、なんと、彼はアルパカに変身できるの。

 目の前で姿を変えられた時にはかなり驚いたわ。


 人間の時は他のメイドがお世話をして、アルパカのときはわたしが彼の世話をするの。


 絶対にこのことを他の人間に話さないようにと念書を書かされたんだけど、きっと、こんなことを誰かに話したって、普通の人間は信じないわ。


 それに、屋敷から出ていくことは許されていないから、わたしの話し相手は、あまり近寄ってこない同僚かパルサ様、もしくはその妹のイコル様くらいしかいない。


 だから、秘密を知らない人間に話すなんてことはありえない。


「ちょっと、お兄様がいないからって仕事をサボっては駄目よ!」


 イコル様は十三歳で生意気盛りといった感じだ。


 黄色のストレートの髪を背中におろした、背は低めでぽっちゃりとした少女だ。

 なぜか頬はいつも赤い丸ができていて、それが余計に子供っぽく見える。


 ここ何日か、パルサ様は屋敷にいない。

 だから、わたしはイコル様の世話係だ。


 パルサ様のように唾を吐きかけてこないのは

良いけれど、かなり口うるさい。


「サボってなんていません。掃除をしていました」

「どこを掃除していたの?」


 窓を吹いていたので窓を指差すと、窓の桟を指差す。


「ここもちゃんと掃除をしておいてよね? あなたのせいでお父様はかなり苦労してるんだから!」


 イコル様はそう言うと、侍女と一緒に去っていく。


「わたしの仕事はこんなのじゃないわ」

 

 学園に行っている時はチヤホヤされていたし、こんな掃除なんてしなくて良かった。


 どうして、こんなことになったの?


 そう思っていた時、ガタンと音がして下を見ると、木の板でできたバケツがひっくり返り、中に入っていた水がこぼれ、茶色のカーペットを濡らしていた。


「ちょっと何をしているの。どんくさい女ね」


 顔を上げると、レンジロ公爵夫人と侍女達の姿が見えた。


 侍女達は無の表情でわたしを見ていて、レンジロ公爵夫人は、わたしのことを虫けらを見る様な目で見てくる。


 バケツを倒したのは、レンジロ公爵夫人に命令された侍女でしょう。


 こんな嫌がらせを毎回されている。


「も、申し訳ございません」


 とにかく謝ると、レンジロ公爵夫人は言う。


「本当に何も出来ない女ね」


 底意地の悪そうな目でわたしを見たあと、それ以上は何も言わずに去っていく。


 どうして、わたしがこんな意地悪をされないといけないの?


 窓拭きなんて、ここに来て初めてやったのよ?


 バケツを倒されるいじめなんて、初めてされたわ。


 リゼにあんなことをしようとしなかったら、今頃のわたしは幸せな学園生活を送れていたの……?


 わたしの人生はこんなはずじゃなかったのに……。


 悔しくて惨めで、涙がこぼれた。



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