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【書籍発売中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第四章

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32 リゼの企み(ミカナside)


 どうしてこんな事になっちゃったのよ!


 大きな声で叫びたかったけれど、この場にいるのはリゼだけじゃなくて、ノルテッド辺境伯夫人もいる。


 本当に邪魔だわ。

 というか、なんだか足が痛いわ。


 って、そうよ!

 あの大きなウサギに蹴られたんだったわ。


 見てみると、ウサギはリゼに抱っこされて無の顔をしている。


 リゼが飼ってるだけあって、本当にふてぶてしい性格をしてるわね。


 人を蹴っておいて、悪気なさそうにしてるなんて信じられないわ。


 部屋の中に案内して、好きな席に座ってもらってから、まったく役に立たないメイドを睨みつける。


「あ……」


 メイドは泣きそうな顔をしてわたしを見たあと、しゅんとなって俯いた。


 平民のくせに出しゃばろうとするからよ!


 視線を感じて、リゼのほうに目をやると、リゼは呑気にノルテッド辺境伯夫人と話をしていて、わたしを見ていなかった。


 わたしを見ていたのは、巨大ウサギだった。


 巨大ウサギはリゼに抱っこされた状態でテーブルに前足を置き、いかにも自分もお茶を飲むといった感じに見える。


 ああ。

 どうせなら、このウサギにも毒入りのお茶を飲ませてあげたい!


 本当ならリゼに毒入りのお茶を飲ませて、彼女を殺してしまうつもりだった。


 わたしが疑われても、お茶を淹れたのはわたしではなくて、学のない子供だと言えば、皆、あのメイドを犯人にすると思ったのに!


「ミカナ、毒見役の人は必要かしら? 今日は私はあなたからのお茶を飲む気はなかったから、毒見役の人は中まで連れてきていないの。フローゼル家には毒見役がいなさそうだし、呼んできたほうが良い?」

「え、えーっと、そうね」


 リゼに聞かれて考える。

 毒見役を連れてきてもらえば、毒見役が死ぬから、わたしは死ななくてもいいわよね?


「何を言っているのよ、リゼさん。まさか、ミカナさんが毒の入ったものなんて用意するわけがないじゃない」

「そうですね! だって、ミカナと私は一応、姉妹なわけですし、仲直りしたいと言うくらいなんですから、まさか、そんなバカな事はしませんよね?」


 ノルテッド辺境伯夫人の言葉に頷くと、リゼは笑顔で言う。


「ミカナ、遠慮せずに飲んでね? 私達はあなたが飲んだのを確認してから帰るから」

「ちょっ、ちょっと待ってよ! わたしだけ飲むなんておかしいでしょう!」

「ライラック様も飲まれるお茶なら、毒見は必要でしょう? あなたが主催者なんだから、何もないというのなら、あなたが証明してくれればいいじゃない」


 リゼが偉そうに言ってきた。


 リゼも腹が立つけれど、こっちをジッと見てくるウサギにもイライラする。


 あの鼻をヒクヒクさせてるのは何なのよ!


 そうだわ。

 良いことを思いついた。


「ねえ! そのウサギにも飲ませてあげない?」

「駄目よ。ウサギはお茶は飲まないわ」

「で、でも、ウサギなら万が一死んでも」

「いいわけないでしょう」


 リゼとノルテッド辺境伯夫人の否定の声が重なると同時に、ウサギは前足をバンとテーブルに叩きつけた。


 何なのよ。

 わたしに毒入りのお茶を飲めって言うの!?


 絶対に嫌よ!

 リゼを殺すつもりが、自分で自分を殺すなんて間抜けすぎるじゃないの!


「ど……、どうぞ……」


 わたしがどうにか逃げる方法を考えている間に、メイドはお茶を淹れ終え、ご丁寧に、あのシュガーポットの砂糖を入れて、わたしの目の前に置いた。


「あ、ありがとう。でも、今は飲みたくないわ」

「……申し訳ございません」


 メイドがしょんぼりして謝ってくる。


 謝るくらいなら、お茶をさげなさいよ。


 ――そうだわ!


「ねえ、リゼ。あなたのメイドなんでしょう? あなたが責任を持って飲みなさいよ」

「どうしてよ」

「わたしはあなたのメイドなんて信用できないの」

「……わかったわ」

「ほ、本当に!?」


 危ない。

 喜んでしまったら疑われちゃうわ。


「リゼさん、やめておいたほうがいいんじゃない? 毒見役を連れてくるわ」

 

 ノルテッド辺境伯夫人が席を立つ。


「ちょっと、あんたメイドなんだからご案内して」


 メイドに言うと、こくりと首を縦に振って、ノルテッド辺境伯夫人を案内していった。


「リゼ、私を信用して飲んでくれない?」

「……そこまで言うのなら」


 やったわ!


 さよなら、リゼ!


「じゃあ、もったいないから飲むわね」


 そう言って、リゼはわたしの目の前に置かれていたお茶を飲んだ。


 すると、リゼはソーサーにカップを置いて首を傾げる。


「何だか、変な味が……」


 リゼは慌てたようにウサギを床におろすと、椅子から落ちて床に倒れる。


 ウサギは心配しているのか、リゼの顔を覗き込んでいる。


 ゲホゲホと咳き込むリゼ。


「やった、やったわ、リゼ! やっぱり、あんたはバカね! こんな罠にひっかかるなんて! あんたはここで死ぬのよ!」

「ミカナ……、ど……うして」


 リゼは苦しそうな声を出して床に倒れ込んだまま、顔を上げずに聞いてきた。


「どうして? あんたが嫌いだからよ! 早く死になさいよ!」

「恐ろしいことを言うわね」


 ノルテッド辺境伯夫人の声が聞こえて振り返ると、入り口にノルテッド辺境伯夫人とメイドの母子が立っていた。


 嘘でしょ。

 何でいるのよ!?


 帰って来るのが早すぎるでしょ!?


「ミカナ、あなたって本当に最低な人ね」


 そう言って、リゼが顔を上げて、私を睨んできた。


 嘘、どういうこと!?


 リゼは毒を飲んだんでしょ!?

 どうして死んでないのよ!?



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