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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第四章

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29 ミカナの失態①

 エントランスホールで待っていたミカナは、私の隣にライラック様がいるにも関わらず、挨拶もなしで私に文句を言ってくる。


「お茶会なのよ!? お茶会に動物連れてくるってどうなの!?」

「駄目だとは書いていなかったけれど?」


 ラビ様の背中を撫でながら言うと、ミカナが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「そんなこと、書かなくてもわかるでしょ! 不衛生じゃないの!」

「大丈夫よ。私に抱っこされているだけで、何かしない限り、大人しくしているから」

「あんた、何を考えてるのよ!」

「それはこっちの台詞だわ。私の隣にいらっしゃる方が見えていないの?」


 私に言われて、やっとライラック様のほうを見たミカナは、慌ててピンクのドレスのすそを掴み、カーテシーをした。


「ノルテッド辺境伯夫人、フローゼル家にお越しいただきまして光栄ですわ」

「突然、お邪魔してごめんなさいね。リゼさんがフローゼル家のお茶会に急遽、行かれることに決まったと聞いたので、ぜひ、私も参加してみたいと思って来てしまったの。ご迷惑だったかしら?」


 迷惑だなんて、さすがのミカナも言える度胸はないようで、引きつった笑みを浮かべて、首を横に振る。


「いいえ、とんでもないことでございます。サプライズは余計に嬉しいですわ」

「そう? 喜んでもらえたのであれば嬉しいわ。ところで、執事かフットマンはいないのかしら? 手土産を持ってきているの。馬車の中にあるから、取りに行っていただきたいのだけれど」

「え、あ、そうですね。今は、ちょっといないので、あとでメイドに取りに行かせます」


 ミカナは目を泳がせたあと、小さな声で言った。


 どうやら、執事やフットマンはまだ見つかっていないみたい。

 先に、料理人やメイドを探したのかもしれないわね。

 その人達がいないと、お茶会の準備が出来ないし、それ以前に、自分達の世話をしてくれる人や食べ物を用意してくれる人が必要だもの。


「あの、今日はリゼと二人で会うと思っていましたから、夫人の分のお茶やお茶菓子が用意できていなくて……」

「大丈夫よ。ゆっくりお話をしに来たわけじゃないから」


 ライラック様の言葉を聞いたミカナはなぜか明るい笑顔を見せたと思うと、ライラック様に尋ねる。


「ということは、もうお帰りに!?」


 ミカナは思った以上に賢くなかった。

 というか、自分の都合の良い様に考えすぎだわ。


「あのね、ミカナ。長居はしないと言っておられるだけで、今すぐ帰られるわけじゃないの」

「あ、ああ、ええ。そんなの、あんたに言われなくてもわかってたわよ!」

「そんな風には思えないけど」

「うるさいわね! とっとと付いてきなさいよ」


 ミカナはヒステリックに叫んだあと、足で踏みつけないようにか、ドレスの裾をもち、大股で歩き始める。


 家の中なのに、どうして、夜会に着ていくようなドレスを着ているのかわからない。


「ねえ、リゼさん。どうして、ミカナさんは、お茶会なのに、あんなに椅子に座りにくそうなドレスを着ているのかしら?」

「推測ですけど、私はこんなに可愛いドレスを着てるのよって自慢したかった、もしくは、ソファロ家の財政が苦しくない時に、エセロに買ってもらったのかもしれません」

「あなたの元婚約者に買ってもらったのよ、って自慢したいというわけね?」


 ライラック様は呆れた顔をして言った。


 ミカナは私達のほうは一切振り返らずに、一人でさっさと歩いていく。

 そして会場になっている部屋の前で足を止めて、私達に向かって叫ぶ。


「ちょっと待って! 準備が出来ているか確認するから!」

「椅子を一つ追加するだけに、どれだけ時間がかかるのよ?」

「うるさいわね! あんたが余計な人を連れてくるから……って、そんなことはありませんのよ? 余計な人というのは、ノルテッド辺境伯夫人のことではないですので、誤解なさらないでください!」


 ライラック様の冷ややかな視線に気が付いたらしく、ミカナは慌てて言い繕ったけれど、そんなことをしても、もう遅い。


「じゃあ、その余計な人というのは、どなたのこと? もしかして、リゼさんが抱きかかえているウサギのことを言ってるのかしら?」


 ライラック様に問われ、ミカナは唇を噛みしめる。


「あの、ご用意できました!」


 部屋の中から出てきたのは、さっき、ミカナに確認してくると言ってから、姿が見えなくなったメイドだった。

 手には、シュガーポットを持っている。


 もしかして、今、この家にはメイドって、この人しかいないのかしら?


「あの子、まだ子供じゃないのかな?」


 ラビ様が私の耳元に口を寄せて、そう囁いた。

 かなり腕が辛くなってきたので抱きかかえ直したあと、メイドの顔をよく見てみる。

 メイドは身長はあるけれど、顔立ちはまだ幼いことに気が付いた。


「本当に遅いのよ! お客様をお待たせしてるじゃないの! これだから、平民の子供は嫌なのよ! 字だって読めないし! マナーも知らないんだから!」

「マナーを知らないのはあなたもでしょう」

「うるさいわね!」


 メイドに当たり散らすミカナに冷たく言うと、ミカナは私を睨みつけてきた。


「あら、シュガーポットは持って行ってしまうの?」


 ライラック様がメイドに尋ねると、彼女は大きく頷いて答える。


「はい! ミカナ様から今、用意しているシュガーポットの中身は危ないものだから、シュガーポットを入れ替えろと言われたので入れ替えたんです!」

「あんた、なんてことを言ってるのよ!」


 ミカナが両手を頬に当てて、今にも泣き出しそうな顔になった。



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