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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第三章

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26 ルカのために

 エセロの件から数日経ち、ワヨインワ侯爵も謝罪に来られたため、ジョシュ様だけ領地のほうに戻られた。

 ルル様が帰らなかったのは、まだここにいたいと駄々をこねられたからだ。


 ワヨインワ侯爵令息のレア様は結局は、学園に復帰することは出来ず、今は世間的には行方不明になってはいるけれど、ワヨインワ侯爵側は居場所を把握しているみたいだった。

 聞いてみたい気もしたけれど、あまり良い場所ではなさそうな気がしたので、私は聞いていない。

 

 ソファロ家が二度と契約違反をしないと誓ったことで、ラビ様がソファロ家を支援することになり、ラビ様はこちらに残られた。


 なぜ、支援することになったかというと、エセロにフローゼル家を探ってもらうことにしたからだ。


 エセロはミカナとの関係を続けたくなかったようだけれど、彼女はまだエセロを好きなことと、フローゼル家に出入りする人間で、悪事に無関係な人間が誰一人いないよりも良いと考えられたようだった。


 もちろん、エセロには本来の目的は伝えずに、ミカナが私を狙っていたりする計画がないかなどを調べてほしいと伝えていて、それと一緒に怪しい動きがあるならば伝えてほしいとお願いしているんだそう。


 ミカナは学園に通うようにはなったけれど、今のところ、私に何かしてくる素振りは見せていない。

 それについては、エセロが止めてくれているのだとルカ様から聞いた。


 ミカナはエセロの関心が自分だけになったことで、今のところは満足しているようでもある。


 ただ、ミカナは気まぐれだから、いつ何時、難癖をつけてくるかわからないから、気を緩めてはいけないと思った。


 ただ、今は、ミカナよりも気になることがあった。


 それは、ルカ様のことだった。


 ここ最近のルカ様は、精神的に不安定なのか、私と二人きりの時はなぜか、耳や尻尾が突然、出てくるようになった。

 今のところは私以外の人がいないところだから良いのだけれど、外ではルカ様に話しかけないほうが良いのかと思うようになってきた。


 かといって、これだけお世話になっているのに避けるなんてことは出来ないし、ライラック様達に相談してみることにした。


「私、ルカ様に嫌われるようなことをしてしまったんでしょうか」


 学園が休みの日の談話室で、ライラック様とルル様に話をしてみると、なぜか二人はにんまりと笑ってから首を横に振る。


「ふふ、嫌われるようなことはしていないと思うわ」

「そうですわ! きらわれるようなことは、ぜったいにしておられませんわ!」

「そうよ。それは間違いないわ。ねえ、リゼさん、どうしてそう思ったのか、詳しく聞かせてほしいわ」


 ライラック様が満面の笑みを浮かべているので、何が面白いのだろうと疑問にはなったけれど、最近のルカ様の様子を正直に話してみる。


「最近、ルカ様は私と二人でいると、尻尾や耳が出るんです。誰かに見られたらどうしようかと思って心配で……」


 一部分だけ獣化している時を、ルカ様達は半獣状態と言っておられるのだけれど、その状態の時は記憶操作がされにくいらしいから、とても不安になってしまう。


「リゼさんは気にしなくても大丈夫よ。半獣化すると、その分、聴覚も嗅覚も良くなっているから、人の気配にすぐに気付けるの。だから、誰かに見られる危険があれば、一瞬で元に戻るはずよ。そういう風にコントロールさせてきたから」


 ライラック様は優しく微笑んで言葉を続ける。


「ルカはリゼさんに心を許しているから、気を抜いてしまっているんだと思うわ」

「私に心を? ルカ様が?」


 胸がほんのり温かくなったような気がして、笑みがこぼれる。


「そうだったら嬉しいです」

「おにーさまもまだまだ、さきはとおいですわね!」

「そうね」


 ルル様の言葉にライラック様が微笑んだ。

 お二人が何を言っているのかはわからないけれど、ルカ様が大変だというなら、私がサポートしないと!


「ルカ様の目的に少しでも早く近付けるように、力になりたいです!」

「リゼさんは何もしなくても大丈夫よ」

「そうですわ。おにーさまにがんばってもらいましょう!」


 なぜか、お二人はルカ様に厳しい気がした。


 やはり、家族だからかしら?

 そういえば、聞いても良いのかわからないけれど、気になっていたことがあるので聞いてみることにした。


「あの、聞いてみたかったことがあるのですが……」

「何かしら?」


 言ってはみたものの失礼にあたるかもしれないから、躊躇していると、ライラック様は笑顔で先を促してくれる。


「答えられるものは答えるし、答えたくないものは答えないから、遠慮なく言ってちょうだい?」

「ありがとうございます。では……」


 言葉を区切ってから、ライラック様に尋ねる。


「どうして、ジョシュ様がノルテッド家を継がれることになったんですか?」

「ああ、そのことね」


 笑顔で頷いてくれたので、ライラック様にとって聞かれたくないことではなかったようなのでホッとする。


 公式に発表されていないせいで、社交界の間では、ジョシュ様が入婿になったのは、当主になるのが、ラビ様では頼りなかったからではないかという噂が流れていた。


 でも、私にしてみれば、そんな風には思えなかった。

 ラビ様は体型は戦闘向きではないけれど、その分を頭脳面で補っているし、弓の名手でもある。


 だから、跡継ぎに適していないなんてことはないと思った。


「リゼさんならわかると思うのだけれど」


 ライラック様が話し始めた時、談話室の扉がノックされた。

 ライラック様とルル様はぴくりと反応したあと、満面の笑みになる。


「お話はあとでにするわね。まずは話を聞きましょう」


 ライラック様の言葉のあと、中に入ってきたのはルカ様だった。

 制服姿じゃないルカ様は、シャツとパンツ姿というラフな格好ではあるけれど、イメージが違って素敵だった。


 顔は良いのに、あまりモテていないのは、婚約者もいるし、いつも仏頂面をしていらっしゃるからでしょうね。


「あら、ルカ! どうしたの? リゼさんに会いたくなった?」

「うふふ、おにーさまったら」

「違う! リゼに用事があったんだよ!」


 ルカ様は眉根を寄せたあと、私に押し花の付いた封筒を差し出してきた。


「封を開けて中に危険なものが入ってないのは確認した。リゼ宛だから持ってきたんだ。読まないなら俺が代わりに読むけど」

「ありがとうございます。誰からでしょうか?」


 ルカ様から封筒を受け取り、差出人を見ると、ミカナの名前が書かれていた。

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