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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第三章

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24 涙の謝罪

 エセロからミカナの話を聞いたその日の晩、ルル様にせがまれてウサギの姿になったラビ様が、談話室のソファーでソファロ家のことを話してくれた。


「僕がこっちに来たのは、ジョシュと入れ替わりということもあるのだけど、上手くいっているかの確認に来たのだよ」


 ソファーに私とルル様は並んで座り、ルル様の膝の上にラビ様がのっている。

 というか、ルル様の上半身よりも大きいので、ルル様の膝の上にお腹をのせて、ラビ様が横になっているという感じだ。


「上手くいっているかの確認、ですか?」

「そうだよ。実は、君とルカのことがあってから、ソファロ家の系列の店に働いている人達に転職の意思はないか確認していたんだ」

「そうだったのですね」


 食材のことで揉めたあとは、特に何もしていらっしゃらないと思っていたけど、実際は違ったのね。


「望むなら、他家や違う店に斡旋するという話を持ちかけたら、みんな、店を辞めてもいいと言っていたのだよ。だから、無理に辞めさせたんじゃないから安心してほしい」

「でも、どうして今になって、そんなことをされたんです? もう、ソファロ家から手を引くはずだったのでは?」

「うーん、そうだね。ソファロ伯爵夫妻がふざけた話をしてこなければよかったんだよ」

「……ふざけた話?」

「君と再婚約をしたいと言ってきたあと、もうその話はしないと言っていたのに、まだしているようだったのでね」


 ラビ様に言われて思い出した。


 そんなこともあったわね。


 かなり前の話かと思っていたけど、そう昔のことでもないんだと納得する。


「ソファロ家の息子くんが君と再婚約することを、諦めた様子が見えなかったから、契約違反だとみなしたのだよ。もしかすると、親のほうもミカナ嬢と結婚するより、君と結婚させたほうが良いと思ったから、わざと止めなかったのかもしれないね」

「エセロはそのことを知っていたんでしょうか」

「その点はわからない。知らなかったとしたら気の毒だね。でも、悪いのはそれを伝えなかった両親だよ」

「……ソファロ家はどうなるのでしょうか?」

「新たに商売をはじめるか、こじんまりとした店を作って再出発するかだけど、人は集まりづらいと思うよ」


 ラビ様が言い終えたところで、ルル様がふくれっ面をしてラビ様の背中を撫でながら言う。


「ノルテッドけやリゼおねーさまにたいして、しつれいなたいどをとるからですわ!」

「ありがとうございます、ルル様」


 私のために怒ってくださったことには、素直に礼を述べた。


「わたしはなにもしておりませんわ! ただ、リゼおねーさまのおこころがしんぱいです」

「ありがとうございます。私はもう、大丈夫ですから」


 エセロへの気持ちはだいぶ薄れているし、彼のことで、心が揺れることはもうない。


 ソファロ家に対しての制裁が始まっていたことには驚いたけれど、そのせいで従業員の人が路頭に迷うことはないようだった。

 多くの人がノルテッド家から紹介してもらった店に働きに出ることに決まったと聞いたし、自分で就職先を見つけてから辞めた人もいると聞いたのでホッとした。


 皆、伯爵家と辺境伯家を敵にまわすなら、力の弱っている伯爵家を敵に回したほうが良いと考えたのかもしれない。


 これで、ソファロ家がわたしと再婚約をしたいだなんて、二度と言わないはず。

 だから、ソファロ家も馬鹿なことをしなければ立ち直っていけるはず。

 ノルテッド家も本気で潰そうだなんて考えていないと、ラビ様は教えてくれた。


 次の日の朝、廊下でエセロと顔を合わせた時は、特に何も言われることはなかった。

 ミカナは今日も来ていなかったから、明日の朝にでも、ルカ様にミカナのことを話してくれると思っていた。

 でも、実際は違った。


 エセロは私達とゆっくり話をしたかっただけだった。


 放課後、ルカ様と一緒に教室を出ようとした時、ルカ様が無言で歩を早め、私よりも先に教室を出た。

 教室の中で立ち止まって不思議に思っていると、すぐにその理由がわかった。


「俺に話か?」

「ノルテッド卿とリゼに話があるんです」


 エセロの声が聞こえたので、教室の中から廊下を覗くと、エセロと目が合ってしまった。


 すると、彼は突然、廊下に両膝をついて、私とルカ様を交互に見上げて叫んだ。


「どうか、もう許してください! どうすれば許してもらえますか!? リゼと婚約破棄したことが許せないのですか。それとも、よりを戻したいと思ったことが駄目なんですか!?」


 人が少なくなっていたとはいえ、まだ、廊下には人の通りが多かった。

 そんな中、エセロは訴える。


「こんなことになるだなんて思ってなかった。あの時は、ミカナと結婚することが最善だと思っていたんです! こんなはずじゃなかったのに……。謝れというのなら、何度でも謝ります。だから、もう、これ以上は……っ」


 エセロは涙を流して、額を廊下に何度もぶつける。


「エセロ、立って。あなた達が馬鹿なことを考えないなら、もう、ノルテッド家の人達だって何もしない。そうですよね、ルカ様」


 さすがに見ていられなくて、ルカ様の隣に行って尋ねると、ルカ様は苦虫を噛み潰したような顔をして言う。


「とにかく場所を変えるぞ。元々はソファロ家の契約違反で制裁を食らわしただけなのに、このままじゃ、俺達が悪者だからな」

「契約違反……?」


 エセロは何も知らないようで、顔を上げ、流れる涙をそのままにして、ルカ様に尋ねた。


「知らなかったのかよ」


 ルカ様はため息を吐いてから、ソファロ伯爵とジョシュ様が話した契約について、彼に伝えたのだった。



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