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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第三章

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22 エセロの理由 ※途中視点変更あり

 ルカ様たちがどんな話をされているのか気になって、自分の席に着いて、ずっとソワソワしていた。

 すると、そう時間も経たない内に、ルカ様が教室に入ってきた。


 席を立とうとすると、ルカ様は私を手で制し、すぐに私のところへやって来てくれた。


「どうでしたか? エセロは何を言ってきたんです?」


 ついつい急かすように聞いてしまうと、ルカ様は難しい表情で教えてくれる。


「よくわかんねぇんだが、ソファロ卿はミカナ嬢に嫌われようとしてる」

「……え?」


 エセロの話をされるとは予想していなかったので聞き返すと、ルカ様は話を再開する。


「昨日、彼女を置いて逃げたのも、彼女に嫌われるためだったらしい。動物から殺気を感じなかったから、ミカナ嬢を襲わないと思ったんだってよ」

「じゃあ、昨日、一人で逃げたのは演技だったんですか?」

「そういうことみたいだ」

「嫌われて、ミカナから婚約破棄してもらおうと思ったから逃げたということですか?」

「だと思うぞ」

「……」


 エセロ達が大きな犬だと思っている動物が、ルカ様じゃなかったらどうするつもりだったの?

 だって、あの時は豹だったんだから。


 殺気があったら、ミカナを守ろうとしていたの?

 

 私にしてみれば、嫌われようとするやり方が、ちょっとおかしい気がする。

 命にかかわるようなものだからこそ、効果があると思ったのかもしれないけど、ミカナが襲われていたら、余計に責任を取れと言われていたんじゃないかしら。 


「リゼ、そっちに関しては、俺達にとってはどうでもいい。本題はこれからだ」

「は、はい! お願いします!」

「これもよくわからないんだが、ソファロ卿がミカナ嬢を置いて逃げるような真似をしたのはリゼのせいだと、ミカナ嬢は思い込んでるらしい」

「はい?」


 大きな声で聞き返してしまい、今更遅いけれど、慌てて口に手を当てる。


 周りからの視線を感じて焦っていると、ルカ様は苦笑する。


「ここは人が多すぎるし、昼休みに改めて話すか。イグルも気になってるだろうし」

「そうですね……。でも、ミカナがどうして、そんな考えに至ったかなんて、本人に聞かない限り、理由なんてわからないでしょうし困ったものです」


 ミカナのことだから、エセロがそんなことをするわけないと思いたくて、私が悪いと思いこんでいるってところかしら?


 でも、あの子は単純な子だから、そんな風に考える頭があるの?


 そうなると、誰かが彼女に何か言ったのかもしれない。


 ミカナの恨みが私に向けられるというのなら、受けて立つしかない。


 でも、今回に関してはエセロのやり方も悪いと思うし、彼に何とかしてほしいとも思ってしまった。


 そして、昼休みに改めて、イグル様と一緒にルカ様から話を聞いた。


 ミカナについては、今日の学園終わりにエセロが、お見舞いに行くらしいから、改めて話を聞いていてくれるらしい。


「ミカナのことだから、どうせ大したことは出来ないと思いますけど、伯父様やデフェルのバックにいる人達が入れ知恵しなければ良いのですが」

「その可能性はあるよね。辺境と辺鄙の違いがわからない、お馬鹿さん達だったから言いなりになる可能性はある」

「でも、どうしてミカナ嬢はリゼにこだわるんだろうか」


 ルカ様の言葉に私とイグル様が頷く。


「そう言われてみればそうだね」

「伯父様かデフェルがミカナに何か言った可能性の方が高いという事でしょうか」

「としか考えられない。昨日の晩から朝にかけてミカナ嬢に接触できるのは家族か使用人くらいだからな」

「一体、ミカナに何を話したのでしょう」


 ルカ様の言葉を聞いて、私は首を傾げた。







◇◆◇


※エセロ視点です





 どうして、こんなことになったんだろう。


 昼休み、中庭でノルテッド卿とテラン卿と一緒に話をしているリゼを見て、ふとそう思った。

 

 リゼの表情は昔と比べて、とても明るくなって顔色も良くなり、表情が豊かになったように見える。

 

 そして、すごく可愛くなった。


 僕がもっと努力をしていれば、僕がミカナに恋に落ちたりしなければ、今も、リゼは僕の隣にいてくれたのかと思うと、自分自身に腹が立った。


「でも、しょうがないじゃないか」


 呟いて、リゼ達に背を向けて歩き出す。


 リゼとの婚約を破棄して、ミカナと婚約するようにとうるさく言ってきたのはフローゼル卿だったし、ミカナは僕の両親に挨拶にも来ていた。


 両親の前では良い子ぶるミカナに両親は、僕と同じように騙された。


 実際のミカナは、常識はなく、束縛の強い女性だった。

 他愛のない話であっても、自分以外の女性の話をしたりすることが許せない女性だった。

 

 それが束縛だということに、すぐに気が付けなかったのは、僕が彼女に恋をしていたということなんだろう。


 大きな犬が現れた日、僕は悪いことを考えた。

 一瞬、ミカナを守ろうと考えたけれど、ここで最低な男を演じれば、彼女は僕を嫌いになり、僕を捨てるんじゃないかと思った。


 ミカナへの愛は冷めてしまっていたけれど、彼女が僕を好きでいるうちは、彼女の婚約者でいなければならない。


 でも、嫌われてしまえば、彼女を傷つけずに離れることができる。


 甘い考えだった。

 万が一のことも考えてなかった。


 ただ、僕は、僕と僕の家族を守りたかった。

 そして、出来れば、以前みたいに、リゼと一緒にいたくなったんだ。


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