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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第三章

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19 ルルの衝撃発言

 ルカ様から詳しい話を聞いて、伯父様の悪事を暴きたいと本気で思った。

 私の考えをルル様以外のノルテッド辺境伯家の皆さんに話すと、両親のことについては守れなくて申し訳なかったと謝ってくれた。


 ワヨインワ侯爵も含め、多くの貴族は私から両親を奪ってしまったと気にしてくれているらしい。


 私の両親には裏の顔があり、国の特殊機関に所属していたらしい。

 伯父様の件は身内が容疑者ということもあったから、両親は本当は担当ではなかった。

 ただ、親戚付き合いでわかったことを報告していたことが、隣国にばれてしまい、暗殺されたのではと考えられている。


 バレた理由はわからない。

 伯父様が気付いたのか、誰かが密告したのか。


 ルカ様の正式な婚約者になることに関しては、夕食を終えたあと、談話室でルル様にも伝えた。


「やはり、リゼおねーさまは、わたしのおねーさまになる、うんめいだったのですわ!」


 ルル様はとても喜んでくれ、興奮したのか猫の姿になって私に飛びついてきた。


 喜んでもらえるのは嬉しいけれど、ここまで喜ばれてしまうと、純粋な気持ちじゃないだけに申し訳なくなってしまう。


 さすがに、ルル様には私がルカ様の婚約者になりたいといった理由を伝えることができない。


 4歳の子供に真実を伝えるには内容が重すぎると、ジョシュ様達が判断した。

 だから、ルル様には私とルカ様が望んで婚約者同士になったと伝えている。


 騙すようで気が引けるけれど、いつか、ちゃんと話せる日が来るだろうから、それまでは許してほしい。


「リゼおねーさま、おにーさまはじょせいのきもちに、とっても、うといかたですから、なにかありましたら、ルルにいってくださいませ」


 ゴロゴロと喉を鳴らして、ルル様が私の顎の下に頭を擦り寄せてくる。


 ここまで懐いてもらえると、すごく嬉しい。


 ただ、猫のルル様は普通の猫よりもかなり大きめなので、座っているとはいえ重い。


 私の腕が重さに耐えきれなくて震えだす前に、ルカ様がルル様に声を掛けてくれた。


「ルル、こっちに来い」

「おにーさま、やきもちをやいておられるのですか?」

「そうだな」

「それは、ルルにですか? それとも、リゼおねーさまにですか?」


 大人しくルカ様に抱きかかえられたルル様が尋ねた。


「どっちでもいいだろ」

「どっちもですか?」

「ああ、そうだな。俺も仲間に入れてくれ」


 ルカ様はルル様の扱いに慣れている。

 だから、ルカ様が穏やかな表情で肯定すると、ルル様はルカ様の頬に自分の頭をこすりつけながら言う。


「もちろんですわ。でも、ベッドでは、おにーさまに、リゼおねーさまをおわたししますからね!」

「!?」


 ルル様の言葉に、私とルカ様だけでなく向かい側に座っているライラック様達までもが、声にならない声を上げた。


「ルル様っ!?」

「ルル、お前、深い意味はないよな?」

「ふかい、いみ?」


 私とルカ様が尋ねると、ルル様は首を傾げる。


「ルル! あなた、意味がわかって言ってるんじゃないわよね」

「ルル! そんな言葉、誰に教わった? イグルか?」


 ライラック様とジョシュ様も焦った顔で尋ねた。

 ルル様は二人のほうに飛び移ってから答える。


「いいえ。イグルさまのおとうとの、シファさまですわ」


 ルル様が答えると、隣に座っているルカ様は私に耳打ちする。


「シファはルルより二つ上で、ルルが好きなんだ」

「そ、そうなんですか? 何だかドキドキしますね!」


 兄弟で三角関係だなんて!


 ただ、ルル様の二つ上なら、シファ様は6歳ということになる。

 きっと深い意味はわかっていないわね。

 それにしても、シファ様にそれを教えたのは誰か気になるわ。


 イグル様はそういう人ではないと思うのよね。


 ルル様の発言であわあわしている、大人達を見ていると、重かった気持ちが少しだけ楽になった。


「ルカ、そういえば、今日は君のことで学園に行ってきたんだよ」


 私を元気付けるためなのか、ウサギの姿になってくれているラビ様がソファーの上で立ち上がって、ルカ様に話しかけた。

 ルカ様はラビ様を抱っこして聞き返す。


「俺のことですか?」

「ああ。この家が出来ただろう? だから、寮に入る必要はなくなった。君もここに住めば良い。お義兄さんは領地に帰らないといけないし、ルルも保育所に行かないといけないからね」

「ほいくえん?」


 聞き慣れない言葉だったので聞き返すと、ラビ様は顔を縦に振る。


「平民の間で流行っているんだよ。共働きの親が小さな子供を家において働きに出られないだろう? 親が働いている間、子供を預かってくれるところなんだ」

「貴族の場合は使用人なりナニーがいるから必要ありませんものね」


 詳しく話を聞いてみると、辺境伯家の敷地内に保育所というものを作り、資格を持った大人が使用人の子供達の面倒を見るという試みをしているらしい。


 敷地内なら帰る時に迎えに行くのも楽だし、お迎えが遅くても、お母さんなりお父さんなりの状態を確認しに行けるから良いかなと思った。


 ライラック様は残ってくれるけれど、ジョシュ様とルル様がいなくなるのは寂しいと感じてしまった。


 ルル様が眠りについたあと、私とルカ様の件は本格的に動くことになり、フローゼル家には明日には確認をいれてくれることになった。

 そして、ワヨインワ侯爵家には、ラビ様が私達より先に帰っていたこともあり、すでに連絡がいれられていた。


 ワヨインワ侯爵家は、ノルテッド辺境伯家の別邸からは、早馬で数時間の距離にある。

 夜にはお詫びの手紙が届き、本人には今回の件について罰を与えること、ワヨインワ侯爵自らが改めてノルテッド家の別邸に謝罪に訪れるということが書かれてあった。


 そのため、ジョシュ様の滞在が延び、ルル様ももう少しこちらに残ることになった。


 先代のノルテッド辺境伯夫妻にはとても申し訳ないことになってしまったけれど、私の責任じゃないから気にしなくて良いと、皆から言われた。


 そして、次の日、ルカ様と一緒に学園に登校すると、誰かの叫ぶ声が聞こえてきた。

 どこで叫んでいるのか確認しようとすると、イグル様が駆け寄ってくる。


「ルカ、リゼちゃん! おはよう! ワヨインワ侯爵令息の件なんだけど」

「おはようございます、イグル様」

「おはよう。どうかしたのか?」

「噂では昨日の夜のうちに学園長に連絡がいって、彼の退学処分が決まったみたいだ」

「誰からの連絡だよ?」


 ルカ様が訝しげな顔をすると、イグル様は苦笑する。


「ワヨインワ侯爵だよ。遠慮しなくていいから、息子を退学処分にしろってさ」

「じゃあ、もう二度とこの学園には来ないんだな?」

「そう思うだろ? だけど、あれ見てよ」

「頼むよ! 退学処分を取り消してもらえるまで家に帰ってくるなって放り出されたんだ! お願いだから中にいれてくれ! 学園長に会わせてくれ!」


 私達が入ってきたのは馬車専用の入場門だ。

 平民など、徒歩で通う人達用のために、他にもう一つ入場門がある。

 そちらの入場門のほうでワヨインワ侯爵令息が守衛に向かって叫んでいる姿が見えた。

 

 

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