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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第二章

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18 リゼの婚約者

 ミカナは一時間も経たない内に保健室のベッドで目覚めた。

 彼女は先生達に大きな犬に襲われそうになったと訴えたので、ミカナの精神状態が良くないと判断した学園から連絡がいき、伯父様が迎えに来たんだそうで、ミカナは今日のところは大人しく家に帰っていったらしい。


 私達のほうは先生が来た頃には昼休みが終わるチャイムが鳴り、誰も怪我をしていないので、とりあえずは授業が優先という事で、放課後に改めて話をする事になっていた。

 そして放課後、先生達が出した結論はこうだった。

 黒ウサギを追って大きな犬が学園内に侵入し、ミカナ達に怖い思いをさせて勝手にどこかへ行ったというものだ。

 野犬かもしれないし、また人を襲ったら大変だということで、学園側が対処をしようとした。

 でも、そこはイグル様が「元々は僕の飼い犬が僕に会いたくて脱走したのかもしれません。そこでウサギを見つけて」と言うと、魔法の効果なのか先生達はすんなりと納得してくれた。


 普通に聞いたら、絶対におかしいと思ってしまうんだけど、魔法の効果ってすごいわ。


 何でもありみたいになっている。


 ちなみに、ラビ様は人間に助けを求めた野生のウサギとして、学園の外に出された。


 エセロは、ワヨインワ侯爵令息が校舎からガゼボまで私を抱えてきたという話を先生にしてくれた。そのことについては明日、改めて先生と話すことになった。


 今日、話さなくて良かったのは、ルカ様が私が疲れているだろうから明日にしてくれと気遣ってくれたからと、私は私で、ルカ様との約束があったので断ったというのもある。


 もちろん、無理矢理、連れて行かれたことは間違いないと伝えたし、ノルテッド家からも、ワヨインワ侯爵家に連絡を入れると、ルカ様が先生に伝えてくれた。


 今日は一度、寮に着替えを取りにいったルカ様と一緒に帰る事になった。


「屋敷に帰ってからでも話せるけど、とにかく馬車の中でも話すか」

「お願いします」

「まずは、朝に話をしてた俺とミカナ嬢がどうして婚約してたかなんだが」


 向かいに座るルカ様は難しい顔で続ける。


「実はフローゼル家には昔から黒い噂が流れてて、俺とミカナ嬢との婚約は、フローゼル伯爵を牽制するためのものだった」

「ど、どういうことですか?」

「ノルテッド家が監視してるぞ。だから、変な真似はするなというやつだ」

「じゃあ、ルカ様が寮に入ってまで、この学園に通ってるのはフローゼル家に牽制するためだけだったんですか?」


 尋ねると、ルカ様は大きく頷く。


「俺とミカナ嬢との婚約が決まった時点で、フローゼル伯爵は一度、大人しくなったらしい。だから、警告は上手くいったと思われてた」

「一度というのは?」

「俺との婚約を簡単に破棄しただろ? これははっきり言って予想外だった。ミカナ嬢の暴走にしたって本来なら止めるはずなんだ。だから、何かあるかもしれないと、リゼを連れ帰ったあの日に、母上が動物の姿で屋敷の中を探って、フローゼル伯爵の書斎で隣国の人間からの手紙を見つけた」


 ホワイトタイガー姿で歩いていたのは、大きな犬として記憶を操作されるからでしょうね。


 ライラック様の本来の姿では記憶の操作はされないし、使用人達に見つかったら怪しまれてしまうもの。


「伯父様は一体、何をしているのですか?」

「さあな。大人の事情だとか言って、俺にはまだ詳しい内容は教えてもらえない。ただ、隣国と連絡を取っているのは怪しすぎるよな」

「……相手は誰だかわかるのですか?」

「ああ。隣国の公爵家だ」


 ルカ様は一度、言葉を区切ってから続ける。


「婚約破棄された時に、ノルテッド家がなめられてはいけないという理由で、経済的に厳しくなる状況に持っていったけど、今のところフローゼル家にダメージが少なすぎる。どこかからの援助があるんだろ」


 ルカ様が教えてくれたことを簡単にまとめると、ルカ様とミカナが婚約する前は、伯父様は隣国と違法なことをしていたと思われる。


 それに気が付いた、この国の貴族が尻尾を掴むために動き出したけど、隣国側の妨害により、上手く証拠がつかめず難航した。


 監視をする役目は、亡くなった伯母様だったらしい。

 そして、私の両親は伯母様に協力していた。


 私の両親が亡くなったことにより、公爵家以下、辺境伯家以上の当主が集まり、相談した結果、牽制する手段としてルカ様が選ばれた。


 ミカナにあう、ちょうど良い年頃の子で、当時、婚約者がいなかったのが、ルカ様しかいなかったからだそうだ。


「……リゼ」


 話を聞いた私の目に涙がたまっている事に気が付いたルカ様が、辛そうな顔をした。


「私の両親は殺されたのかもしれないんですね」

「まだわからない。ただ、その可能性はある」

「伯父様が私を引き取った理由はなんなんでしょうか?」

「……」


 ルカ様は答えない。


 私には伯父様、いえ、亡くなった伯母様以外、引き取ってくれる人がいなかったのね。


 その頃には祖父母だって生きていた。

 だけど、私を引き取ってくれなかったのは、私が彼らにとって厄介者だったからだわ。


 伯母様が私を引き取ってくださり、両親の分も可愛がってくれたのは、私の事情を知っていたから?


 ルカ様とミカナの婚約は、伯父様は賢くはないから言われるがままに承諾したでしょうし、その後にきっと、隣国側の方が自分達が危険ということで手を引いたんでしょうね。


 ……絶対に納得なんて出来ない。


「ルカ様、こんなことをルカ様に言うのもおかしいのですが」

「いいから言えよ」

「伯父様の悪事を暴きたいです」

「それは俺も、俺の家族も、リゼやリゼの家族に対して申し訳なく思ってる貴族達も同意見だ」


 ルカ様が大きく頷いてから続ける。


「というわけで、リゼには」

「ルカ様、申し訳ございませんが、私の婚約者になっていただけますか?」


 私だけじゃ、あまりにも無力すぎる。

 甘い考えだと思うけれど、真相を暴きたい気持ちが一緒なら、お願いしても良いのではないかと思ってしまった。


「おい。それ、俺から言うべきなんじゃ……」

「えっ!? あ、そうですか? その、申し訳ございません! 厚かましすぎますよね!?」

「いや、違う。まあ、いいや。これから、改めてよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」

「いいから、頭を上げてくれ」


 慌てて頭を下げると、ルカ様の困ったような声が聞こえたので、ゆっくりと顔を上げる。

 すると、背中の後ろで黒い尻尾が揺れていることに気が付いた。


 平気な顔をされておられるけど、かなり動揺されてるのね。

 腰のベルトで押さえられていても良さそうなのに、出てきているのは可愛いわ。

 でも、伝えないといけないわね。


「ルカ様、尻尾が」

「えっ!?」


 驚いたルカ様は尻尾を確認すると、すぐに引っ込めた。


「おかしいな。なんか今日は上手くコントロールできねぇ」


 不思議そうにしているルカ様が可愛く見えて、重かった気持ちが少しだけ楽になった。


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