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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第二章

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11 ノルテッド家の秘密

 ルル様は少ししてから無事に人間の姿に戻った。

 ハプニングはあったものの、アクセサリーを買ってもらったあとも、色々なところに連れて行ってもらい、髪も綺麗に整えてもらった。

 あっという間に時間が過ぎ、ノルテッド家の別邸に辿り着いた時には夜になっていた。


 その日の夜、一緒に夕食をとったイグル様を見送ったあと、ルカ様達と談話室に移動した。


 皆さんの表情がどこか難しいものに見えて、話を聞くことが申し訳ない気持ちになってきた。


「今日のルルの出来事で、リゼも確信したと思うが、俺達は全員、動物に変身できる」


 私の真正面に座ったジョシュ様が口を開くと、補足するように、その隣に座るライラック様が話をしてくれる。


「変身できるだけで人間なのは確かよ。なりたい時になれるし、戻りたい時に人間に戻れるの。魔力といっていいのかわからないけれど、体力とは違う何かが切れたら、動物の姿の場合は、勝手に人間の姿に戻ってしまうのだけどね」

「どうして、そんな不思議なことが……?」


 どういう理由なのか、まったくわからなくて聞いてみると、ライラック様が答えてくれる。


「ノルテッド家には魔法の家系図があるの」

「魔法の家系図……?」

「ええ。説明が出来ないから、魔法という言葉で説明するしかないのよ。その家系図に名前を書き足せば、下に新しく書く場所が現れて、どんどん書く部分が伸びていくの。その家系図に名前を書き込まれたら、なぜか動物の名前が、その人の名前の横に浮き出てくるのよ」

「見てもらったほうがわかりやすいだろ」


 ジョシュ様はそう言って、手に持っていた巻物を私とジョシュ様の間にある、木のローテーブルの上に広げて見せてくれた。


 とても長い家系図で、一番最後のほうを見ると、ジョシュ様とライラック様、そして、ルカ様とルル様の名前も書かれていた。

 ただ、気になったのが、普通なら兄弟や姉妹の場合、枝分かれして書かれている部分がいくつかあるはずだけど、存在はしていたはずなのに名前が書かれておらず、空白になっていた。


 私の疑問に気付かれたのか、ライラック様が身を乗り出して、空白の部分を指差して教えてくれる。


「ここには妹の名前があったの。でも、妹は嫁にいったから、ノルテッド家ではないでしょう? だから消えているの。妹もお嫁に行く前は動物に変身できていたのよ」

「失礼なことを申し上げますが、ジョシュ様は入り婿ですよね? ノルテッド家の家系図に書かれれば、血を引いていなくてもノルテッド家の人物としてみなされるということでしょうか?」

「そうね。ただ、書けばいいってものじゃないわ。悪用されないようにノルテッド家の人間じゃないと記入できないようになってるの」

「誰かが勝手に名前を書いても意味がないということですね」


 信じられないような話だけれど、信じなければ説明がつかない気もした。


 ルカ様の名前の横には(黒豹)と書かれているし、ルル様は(猫)、ライラック様は(ホワイトタイガー)、ジョシュ様は(ヒグマ)と書かれてある。

 目の色や毛の色は、本人のものが優先されるみたいで、ライラック様のホワイトタイガーは、ホワイトを優先されてるみたい。


「どうして、私を助けてくださった時、皆さん、動物に変身されていたのですか?」

「動物の姿になって動くと、勝手に記憶が書き換えられる魔法が発動する。これも、たぶん、としか言いようがないが……。人様の家に人間の姿でウロウロするよりかは、記憶が書き換えられるなら、動物の姿の方がいいだろ? それに、人間相手だと熊の姿を見たら、戦意喪失する奴が多いからな」

「元々、ノルテッド家が動物に変身するようになっているのは、森の中などで敵に察知されずに近付こうとしたからじゃないかと言われてるわ。最初の方は、リスとか小動物ばかりだから。かなり昔の話だからわからないけれど、その時には魔法が存在していて、代々、受け継がれるようになっているのかもね」


 ジョシュ様の言葉を継いだライラック様が難しい顔をして言った。


 きっと、ライラック様達もどうしてなのか調べたけど答えは出せなかったんでしょうね。


「記憶が書き換えられるはずなのに、どうして、私は覚えているんでしょうか?」

「それですわ!」


 私の左隣に座っていたルル様が言う。


「だから、おにーさまのこんやくしゃになるのだとおもいましたの!」

「……意味がわからないのですが」

「何があっても秘密を守る人の場合は、記憶がそのままみたいなの。リゼさんもそうだということじゃないかしら」


 ライラック様が困惑していた私に教えてくれた。


 どうやら、秘密を知っている当事者や身内に話すことは良いけれど、何も知らない人間に話す可能性がある人間の場合は、記憶が都合の良いように変更されてしまうみたいだった。


 ――私が記憶を書き換えられない理由がわかった気がするわ。


「とにかく、俺達は好きな時に動物の姿に変わることが出来る。今みたいにな」


 そう言って、ジョシュ様が熊の姿に変わった。

 それと同時に、座っていたソファがバキバキという音を立てて壊れ、ジョシュ様が座っていた部分だけ凹んだ。

 

 ソファーがジョシュ様の重さに耐えきれなかったみたい。


「やっちまった」

「あなた、何を考えてるのよ! このソファー買ったばかりだし、とても気に入ってたのよ!?」


 ライラック様がホワイトタイガーの姿に変身し、頭を抱えているヒグマ姿のジョシュ様の顔を爪は出さずにパンチした。

 すると、ルカ様が立ち上がって叫ぶ。


「おい、やめろよ、二人共! リゼの前だぞ!」

「おかーさま、おとーさま、おやめください! リゼおねーさまが、おにーさまのおよめにきてくださらなくなりますわ!」

「どうして、お前らは俺とリゼをくっつけたがるんだよ!」

「へんくつな、おにーさまのおよめにきてくれるひとなんて、いないからですわ!」

「うるせぇな!! というか、リゼの気持ちは無視かよ!」

「だから、リゼおねーさまにすきになってもらうようにどりょくしてください!」


 目の前ではヒグマとホワイトタイガーが言い合っていて、横では普通に兄妹喧嘩が始まってしまった。


 異様な光景なのに、なぜか笑みがこぼれてしまう。


 それに気がついた、4人が動きを止めて、私に一斉に目を向けた。


「あ、あの、笑ったりしてごめんなさい!」

「いいのよ!」

「そうだ、もっと笑え!」

「リゼおねーさま、わらったほうがすてきです!」

「笑ったほうがいい」


 ライラック様、ジョシュ様、ルル様、ルカ様の順に言われて、その時に気がついた。


「私、あまり笑えてなかったんですね」

「苦笑とか作り笑顔しか見た覚えがない」


 ルカ様が遠慮なく言ってくれた時、ルル様が猫に変わったかと思うと、後ろ足で立ち上がってルカ様の顔に猫パンチをした。


「なんてしつれいなことをいうんです! すなおにわらったかおがみたい、といったほうがよくってよ!」

「そうよ! 素直に笑ってくれて嬉しいって言えばいいのよ!」


 ライラック様がテーブルを飛び越えて、前足でルカ様の太腿を叩いた。


「いってぇな! だから、俺とリゼを無理にくっつけようとすんな!」

「痛い思いをしたのは天罰だ」


 ジョシュ様はヒグマの姿のまま、ハッハッハッと笑いながら手を叩く。


「やさしくないと、リゼおねーさまにきらわれますわよ!」

「優しくしてるだろ!」


 猫のルル様にぐいぐいと頬をおされているルカ様が可愛らしくて、また笑みがこぼれた。


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