第7話 暴君のバラ
大神「どういうことだよババア、俺にもわかりやすいように説明しろ」
一ノ瀬「今説明してやる。この村ではなぁ、年に5、6人行方不明者が出て後を絶たないんだよ。帰ってきたとしても謎の病で1週間以内に死んじまう。あたしももう警察官じゃないし勝手に死体を調査する訳にも行かない。かと言って元部下たちになんの根も葉もない話を取り扱うかって言うほど暇じゃない。」
一ノ瀬さんは誰にも頼らず1人で宮本さんと犠牲になった人達のために戦っていた。
佐藤「もう1人で戦わなくていいんですよ!もう僕達も京香さんを失ったり同じ運命を背負ったんです。僕たちにも手伝わせてもらいます」
一ノ瀬「この老人とそこのバカに任せとけばいいものを、まぁいい手伝ってくれるって言うならこっちからもお願いするよ。」
一ノ瀬さんは自分たちの協力に快く受け入れてくれ今後の話をする。
まず、今起きていることは5年前に捕まえた犯人の計画だと思われること、犯人は自分のクローンを作り安全圏から自分たちを狙っていること、そもそもどうやってクローンを作りあげたのか情報は集まるが決定的な動機とクローンを作っているならどこで作っているのかが分からない。話はまとまらない。
偽平田「なぁ!そもそもさぁ、なんでお前らは出会って数日のやつの心配と悲しむことができるんだ?」
山羊「てめぇ!まだ何か言うつもりか!?」
偽平田「まぁ落ち着けって、だってよ?お前らがナンパして偶然か必然にもこの女たちと出会ったわけだ。」
「そんであって2日で女子1匹が死んでオスどもが悲しんで、今度はオスが死んだと思ったら実は生きてて、なんで女どもは一喜一憂してんだ?」
こいつ耳栓をしてるのになんでこうも会話することが出来てるんだ?疑問には思ったが北山は返答してしまう
北山「それはみんなで遊びに行ったり中を深めたからであって!」
偽平田「中を深めたらもう他人を信用できるほどお前たちはできてるのかよwwww」
「そんな簡単に他人を信用できるのであれば争いとか裏切り、疑心、いじめ、脅迫、窃盗、殺人、その他もろもろ話し合えば全て解決できるよなあ?」
小栗「そっ、それは違うと思います。だって人はそれぞれですし、あと人はそんなに悪い人ばっかりじゃないです」
山羊「そろそろ俺もう1回ぶん殴んねぇと気が済まないぜ」
北山「まて、それだとこいつの口車に乗せられてるのと同じだぞ!」
偽平田「わかった!数ある答えの中のひとつを答えてあげるよ。それはお前たちがこの人は信じてもいいって安心してるから、信じたいって思ってるからだろ?違うか?」
人は誰しも信用したい、信用したくないなんて当たり前の事じゃないのか?こいつは当たり前のことをあたかも正解のように饒舌に解説する
偽平田「俺の話をこうやってしっかりと聞くあたりお前ら俺の事なんて思ってるんだ?まさか信用しようとか思ってたりしねぇよな?だから裏切られんだぜ?」
偽平田はそう言い終えるとこのむらの住人と思われる人物が急いで家の中に入ってくる。
住人「おめがだ!たいへんだ!山の方からとんでもねぇ数の人がこっちに向かって来とるぞ!」
偽平田「あははははははははっ!ショータイムだ!赤く咲きほこる命達よ!いいもの見せてくださいなww」
もう肉眼でも確認できるほどの大量のクローン達がこの村に目掛けて押し寄せてくる。中には山羊や佐藤の見た目をしたクローン共が大量に確認できた。
一ノ瀬「クソ!今までこんなこと1度もなかったのに!お前らなにか戦えるものをもて!いち早くここから逃げるぞ!」
全員角材や鉄パイプ、拳銃や猟銃といった武器を持ちいち早く村から脱出を試みる。すぐ後ろでは老人が捕まっており捕まえたクローンはすぐさま爆発する。老人は顔や体に損傷を受け肉が剥き出しの状態で倒れる。
山羊「こいつらに捕まったら大変なことになるぞ!」
クローン達は家も関係なく突進してきており、家屋や柵などなぎ倒し爆発もしながら障害を破壊し進んでくる。ワゴン車に乗りこみ全員逃げ切ろうとするがクローンたちの足も早い。山羊が鉄パイプを振り牽制するが捕まり鉄パイプと腕ごと爆発に巻き込まれてしまう。
山羊「っグゥ!」
ゆか「山羊くん!」
山羊はちぎれかけの腕をクローンに掴まれてしまい外に放り出されてしまう。
山羊「俺のことは気にするな!早く逃げ…」
山羊の最後の言葉も聞けないままクローンどもに飲み込まれてしまう。
北山「こいつらどこまで行けばまけるんですかね!」
一ノ瀬「知らん!とにかくここから逃げることに集中しろ!話はそれからだよ!」
村から山道を抜けると奴らの影は見えなくなった。しばらく進むととあるコテージにたどり着きそこで一泊することになった。
北山「あれが京香さんの言っていた彼らなんでしょうかね。あんな大人数だと思ってませんでしたよ」
大神「そうだな、しかもさっきの襲撃で助かった山羊までも捕まってしまったしな」
ゆか「山羊くんは大丈夫でしょうか…」
佐藤「さっきクローンたちが見境なく爆発し攻撃してきてるところを見ると、もう望みは少ないでしょう」
ゆか「…そんな、なんでこんな目に遭わなきゃ行けないの!」
奏多「ゆかちゃん落ち着いて、辛いのはみんな一緒だよ…」
目の前で知人が殺されてしまったことにより全員パニックに陥っている。小栗さんに至っては過呼吸になるほどだ。京香さんだけでなく、平田と山羊まで亡くなってしまったからだ。無理もない。
一ノ瀬「とりあえずお前たちはここから出て安全なところに匿ってもらう。加藤!朝になったらすぐにここから出るから準備しとけ!」
加藤「わかりました!」
自分たちは何も解決する訳でもなくいたずらに被害者を増やしただけで足を引っ張ることしか出来ない。そんな暗い思考でいる時、深夜の2時だろうか。誰かが扉をノックする。
大神「静かに、奴らかもしれないお前たちは外に逃げる準備をしていろ。」
小声で指示を受けた北山達はいつでも出れる配置に着く。恐る恐る大神が扉を開けると、そこにいたのはクローン体の北山が顔を隠し下を向きながらたっていた。