表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄系3

無実の罪でなんて……

作者: ひつじかい

 処刑台が設置された広場に、一人の罪人が引き出された。


「これより、オリアーヌ・デ・フォル侯爵令嬢の処刑を執り行う!」


 数週間前まで、彼女は、王太子ピエロの婚約者だった。

 しかし、今現在彼の傍らに立つペラジー・デ・ゴーモン侯爵令嬢に篭絡されたピエロは、オリアーヌがペラジーを殺害しようとしたと言う話を信じて、彼女を罪人として捕縛させた。

 ペラジーは、偽の目撃者も用意しており、ピエロは微塵も疑わなかった。

 そして、オリアーヌのアリバイを証言した自身の親友を、オリアーヌの共犯者と決め付けた。


 更に、ピエロは、ゴーモン侯爵がでっち上げたフォル侯爵の反逆計画を信じた。

 王国建国時代からの忠臣であったフォル侯爵の一族は、こうして、滅びる事となった。



 断頭台に固定される直前、オリアーヌは、広場に設けられた高位貴族用の観覧席を見上げた。

 王太子であるピエロと左隣に立つペラジーが、楽し気に処刑の瞬間を待っているのが見える。

 彼女の斜め後方に、ゴーモン侯爵の姿もあった。


「私は、無実の罪でなんて……」


 刃の下、板に首を挟まれたオリアーヌの呟きは死刑執行人にだけ届いたが、彼は、下を向くオリアーヌの口元に浮かんだ笑みを見る事は出来なかった。

 仮に見えたとしても、何も出来なかっただろう。




「キャアアアア!!」


 観衆から悲鳴が上がったのと、刃が落下したのは同時だった。


「殿下っ!」

「早く消火しろ!」


 悲鳴が上がったのは、ゴーモン侯爵親子が、一瞬で炎に包まれたのが見えたからだった。

 炎は、ペラジーの直ぐ側に居たピエロにも、燃え移った。



 魔導師隊の消火が間に合い、ピエロだけは助かった。

 しかし、彼が負った火傷は、回復魔法でも完全に治せなかったので、大きく痕が残った。


「一体、誰が……?」

「犯人を捜せ!」


 ピエロは命じたが、結局、犯人は見付からなかった。

 オリアーヌが魔法を使える事を隠していた為、彼女の仕業だとは思わなかったのである。




 市井(しせい)では、初代国王──通称、炎王──の怒りとの噂が流れた。






 どうせ処刑されるのならば、ペラジー様の望み通りに、殺害して差し上げましょう。

 彼女の嘘と違って、私は、失敗なんて致しません。

 それに、私は、忠臣フォル侯爵の娘。

 このままでは、ピエロ様は、嘘に騙された愚かな王太子。

 ですから、嘘を本当にする為に、反逆も致しましょう。


「私は、無実の罪でなんて、死にません」


 それでは、お三方。

 地獄でお会い致しましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 嘘を本当にしてあげましょうとは何という優しさ。 [一言] オリアーヌがピエロに再会する日は遠くないかも知れない。 悪臣に騙される王太子。 詳細な調査をせずに忠臣の一族を滅ぼした王家。 さ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ