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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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6 幼児くん改めマイくん!!



「な、なにかヤバイ…?」


地球と言った途端考え込むように黙ったマイくん。蜘蛛を食べることも忘れてわたわたするがまいくんが動いてくれない。

何も言ってくれないから心配になる。


「お姉さん、召喚元がどこかわかる?」


やっと口を開いてくれた。

…しょうかん…?


「この世界に来たときのこと詳しく教えて。」


え、この世界に来たときのことなんてわかんない…それでも言えと言うので仕方なく順序立てて説明する。


「えっと、施設かラ抜け出して、夜、に道を歩いて、ガッ!って…何かあって、気がついたら広い原っぱ?みたいなとこにイて、歩いてたら蜘蛛に襲われてる君がいた…から、殴った…?」


はぁ?って顔した後またマイくんが黙った。

だって本当にわかんないんだもん。


「…この世界には召喚ってものがある。異世界から人を呼び出すんだ。呼び出された魂は次元を渡ることで強化された上に神に〈祝福(ギフト)〉をもらえる。」


「ギフト?」


「あー、〈特殊魔法〉(オーダーメイドスキル)…その人のために用意された魔法…かな。それは何百の兵士を育てて隊を作るよりも何倍も強く効率がいいんだよ。だからこそ、どんなに難しくて、莫大な労力と時間をかけてでもそれぞれの国は召喚をする。そして召喚者は召喚した国の所有物と世界で決められている。」


召喚…か、つまり私はこの世界に召喚されてしまったというわけか。いきなり変な世界になった理由がわかった。

…あれ?でも、


「私、どこの国に、召喚されたの?

こんな、変なところに出てくるもの、なの?」


難しい顔をしたマイくんが頷く。


「いや、おそらくだけどお姉さんはどこかの国が召喚に失敗して召喚地点がズレたんだと…思う。ステータスさえ見れればお姉さんがどこの国に召喚されたかわかると思うんだけど…あいにく俺、魔力すっからかんなんだよね。ご飯食べて寝たから多少戻ったけどあまり無理はしたく無い。」


お手上げポーズをとるマイくん。

そうか、スキル?とかあるのか。召喚?されたんだったら私は一体どんなスキル?があるんだろう。ちょっとワクワクする。


「…お姉さん、一応俺は貴女のステータス見るまでは完全に信用できないししない。こう見えて割と面倒臭い立場の人間なんだよ俺。だけどまあ、警戒するのはやめるわ。お姉さんなんか嘘ついてなさそうだし。」


お?信用しないと言いつつなんか信用してくれた…のかな?…面倒臭い立場の幼児ってなにがあるんだろう?


「…言っておくけど俺子供に見えるだろうけど中身は違うからな。」


え…違う…?


「俺、少なくともお姉さんの何倍も何十倍も年上だから。」


体の奥底に電気が走った。

…嘘…でしょ?こんなに可愛いのに?

子供じゃ無いの…?ショックでクラクラした。もう一度マイくんを見つめる。

痩せているけれど子供特有のぷにぷにのほっぺにプクッとした手。まんまるな目。あ、かわいい。でへへってなっちゃう。

やっぱどう見ても子供だった。良かった…

まあ中身が大人だろうがおじさんだろうがいいか。大事なのは見た目だ、見た目。

可愛いは正義。


「で、お姉さん。いきなりごめんけど首見せてくれる?」


「首?」


「そう、首の後ろ…やっぱ無いか、良かった。」


立ち上がって私の後ろに回ったマイくんが髪の毛をかき分けて首を確認する。


「首、どうかしたの?」


座り直したマイくんを見計らって聞く。


奴隷印(どれいいん)がないか見たんだよ。」


新しい蜘蛛の肉を持ち直したマイくんがこともなさげに言った。


「奴隷?」


なんとなく自分の首の後ろを摩る。

奴隷って単語、絶対ろくな話じゃない。


「この世界にいきなり召喚された人達が見知らぬ人達の言うことを聞くと思うか?だから、大抵の国は召喚した後すぐに奴隷契約を結ぶんだ。主人に逆らわないよう、ていのいいコマにできるように。逃げないように。」


奴隷印はこんな感じのやつ、って言いながら地面に不思議な模様を描いて教えてくれた。何だか文字にも見えるような…適当な線を書いただけのように見えるような…

聴くとこれは術印語(じゅついんご)というらしい。魔法をかけるための特殊な文字。首の後ろから前にかけて文字が浮かんでいて光って見えるらしい。

色は効力によって変わってくるんだってさ。

薄緑が一番弱くて紫が一番強い。

私も奴隷印をつけられて居たとしたら紫色の強い印が結ばれて居たかもって。

そうか、もし私が召喚に成功されてしまっていたらそんなものをつけられていたかもしれないのか。


「その印、つけるとどーなるの?」


「まず主人に逆らえなくなる。紫印だと徐々に主人に洗脳されていって明確な判断ができなくなる。が、それ以外の印なら洗脳効果は薄いから意志が強いやつはあまり効かない。逆らうと雷魔法が作動して電気が走るくらいだ。

ただ最近は印の質が上がってきているからその雷魔法で奴隷が死ぬことはないギリギリの躾をされる。それでもかなり痛くて苦しいけどな。そして逃げられなくなる。…逃げると印の部分を爆発させることもできる。」


印が…って首が爆発ってことじゃん!

それって…


「奴隷ってのは使い勝手のいいコマなんだ。そこに人権なんてものは存在しない。一度契約すると契約主が死ぬか契約印を壊すしか逃げる方法は無い。」


「奴隷印…を壊す…どうやって?」


「奴隷契約を無くすには二つの方法がある。

一つ目は印紙を破る。印紙ってのは奴隷契約する時に使う奴隷印が書かれた紙な。印紙もただの紙じゃないから破るのは難しいし汚すこともできないけど印の部分を壊せば契約はなかったことになる。そしてもう一つ、契約主が死ぬこと。

死んだ途端に印が壊れる。まあ本当は第二契約印とか色々抜け道があるけどめんどくさいから説明は省く。」


この世界には奴隷が存在するのか。

思ったよりもシビアな世界なのかもしれない。まあ、召喚とか見たことない獣とか魔法とか…魔法…?

あ、完全にスルーしてた。


「ど、どうした?」


いきなり立ち上がった私にびっくりしてマイくんが手の肉を落とした。


「魔法!召喚!魔物!!この世界!魔法があるの⁈」


ぜんっぜん考えてなかったし実物を見てないから気にしてもなかった。

この世界、魔法とかあるのか!!

私も使えるかな?あ、ワクワクしちゃう。


「…えっと、今更?」


呆れたように落とした肉を拾いながらマイくんがこっちを見上げている。


「だって、魔法、まだ見てないかラ。」


見てないものは気づきようがないよね。

そうか、ここは異世界でファンタジーってやつか!どうりで獲物が変なやつばっかだったんだな〜


「えっと、みる?」


へ?と、隣を見るとマイくんが人差し指を立てている。


「今魔力がマジでないから初歩の初歩だけど、〈ファイア〉」


マイくんの指先に小さな炎が灯った。

それを焚き火に移すと炎の色が赤から黄色、緑、青、紫、ピンク、赤と変わって行く。


「⁈すごい!!すごい!魔法⁈これ、魔法⁈」


テンションが上がった私を見て若干顔が引き攣っている。なんで?


「こんな単純な魔法で喜ぶの2歳児までだぞ…」


そんなん言っても初めて見たもん。テンション上がるよ。

私も魔法使えるかな〜?


「…どうやったら魔法使えるの?」


手を前に出して唸ってみたが何かが出てきそうな様子はない。

というか自分の身体に変わったところが思い当たらない。強いて言えば前よりも身体能力が上がってる気がするけど…わかんないな。だって今まで本気とか出したことなかったし比べられない。


「…お姉さん、自分の世界に帰りたいとか思わないの?」


少し低くなったトーンでマイくんが聞く。

なんだか雰囲気が暗い気がする。


「帰れるの?」


勝手にもう帰れないものだとばかり思っていた。


「帰れる方法がないわけじゃ無い。けど、それはお姉さんが選べることじゃないんだ。…最悪、帰ることは難しいかもしれない。」


難しい…帰れないことがあるの…?

私、帰らなくてもいいの…?


「…なんでそんなにキラキラした目で見てくるんだ。」


え?目キラキラしてた?


「帰りたくないのか?」


大きく頷く。


「私、帰りたくない。絶対、やだ。」


珍しいものを見るようにマイくんがこっちを見つめる。

が、しばらくして何か合点がいったのか目を伏せる。


「この世界を知らないから言えるんだ。…少し居れば帰りたくなるよ。」


ポツリと呟くように吐き捨てた言葉は何か恨みを含んでる気がした。

この世界を知らない…まあ確かにまだ来て一日目だからな…気安くは言えなかったかな。

でも正直、本当に正直言うとあの施設にだけは帰りたくない。

化け物と呼ぶ大人たち。話すどころか近づくことさえない子供達。学校でも施設でも私の存在を知っている人達は誰一人として私を人として見ない。

握りしめた手に力を込めた。


「…帰るって、どうやったら元の世界に戻ってしまう?」


私は帰りたくない。この世界のことはまだよく知らないけど、もう2度とあそこで生きていくのは嫌だ。


「とりあえず確実ではない、ってことだけは言っておくけど、帰る方法は二つ。召喚主との契約を果たすか長く生きればいい。」


「契約…と長生き?」


契約はなんかわかる気がする。

どんな物事にも契約ってあるよね。

でも長生きってなんだろ。

長生きすると元の世界に戻れるの?


「まず一つ目、契約っていうのは召喚主が異世界から召喚するための目的、だな。あー…なんつーか…めんどくせぇな。簡単に話すぞ。召喚主は神に召喚の許しを貰わないといけないんだけど、その時に神に召喚理由を話す。その理由が認められれば召喚されてそれがそのまま契約内容になる。例えば[国に害なす魔獣を撲滅してほしい]とかね。その場合その魔獣を撲滅した時点で呼ばれた理由が消えるから元の世界に強制送還される。」


普通に神様とか出てきちゃったよ。

この世界、神様とかいるの?偶像じゃなくて?

まあ魔法があるなら神様くらいいるか。

にしても召喚って言っても色々面倒くさいんだな。

でも国にとって召喚者って凄い重宝されるんだよね?

そんな簡単に帰したいと思うかな?

例えば契約内容を無茶なことにしたりとか…


「それは一応大丈夫なはずなんだよ。例えば召喚内容を[この国を守って死ぬまで戦ってほしい]とかにしたとするだろ?神は大体そんな条件は飲まない。

相手は外界の生き物だから無理矢理この世界に縛ることはできないんだと思う。」


ふーん、カミ様って優しいんだな。

ん?でも…


「今のとこ、帰るの、難しそうに思えなイよ?」


そんなんだったらみんな普通に帰れそうじゃん。私も帰れそうじゃん!やだ!!


「…そんなに簡単なら良かったけどな。例えば[隣国との戦争の手助けをしてほしい]って内容だとする。この内容の問題点はどこかわかるか?」


え?普通なお願いに思えるけど…隣国との戦争に勝てればいいんじゃ…ん?あれ?


「…アバウトすぎるんだよ、内容が。[隣国]って、そもそも沢山国があればどこの国かもわからないし戦争の終わりの定義も難しい。平和に見えても実際いつまた始まるかわかんないだろ?だから早々には帰れない。それに契約内容を達成したかどうかは神が決める。神は寿命とかないし時の流れが遅い。だから召喚者の現状をそんなに観察してないんだよ。わざわざ神様に契約を遂行したのでチェックしてください、なんて言い出す召喚者もいるわけない。だったら神様が召喚者の様子を見てないと契約を達成したかどうかわかんないだろ?この世界の神はガッバガバなんだよ、基準が。」


か、カミ様〜、それで良いの?カミ様…

なるほど、これだと帰れ無さそうだ。

よしっ、希望が見えてきた。


「契約は、分かった。でも、長生きは?」


「長生きってのはそのままの通り長く生きれば生きるほどこの世界から弾かれる可能性が高くなるって話だ。」


「弾かれる?」


「この世界はマナ、魔力の源を中心に回っている。俺たちの体にも大地にも空気にも植物にも全てにマナが宿ってる。ただ、人間含め生き物の中にある魔力はオドと呼ばれててマナとは少し形が違う。まあその話は後でする。とにかく空気のマナが風を吹かせて大地のマナが植物達を産む。俺たちは身体のオドを使って魔法を生み出す。オドが尽きれば俺たちは動けなくなるし最悪死ぬ。でもお姉さんたちの世界は魔法なんてないだろ?根本的に魂も身体もつくりが違うんだ。だからこの世界からすればお姉さん達は異物。世界に混じった異物はどうなると思う?

答えは簡単だ。ある日突然弾かれる。タイミングも条件も不明。なんなら本当に元の世界に戻れてるかもわからない。まあ昔、神に直接聞いたって奴がいるらしいから多分元の世界に戻ってるんだろ。」


ゲッ、そんなん防ぎようがないじゃないか。

条件もタイミングもわかんないってどうしろっていうの⁈


「ただ最後まで弾かれない奴がほとんどだ。この大きな世界からしたらひと1人、ほんの小さな異物なんてわかんねえんだろ。大きな樽の中に目一杯入った麦の中から小さなゴミを一粒見つけろって言われたって無理だろ?そういうことだ。だからこっちは帰る方法に入れないほうがいい。ほぼ不可能だからな。…でも、ゼロじゃない。」


ゼロじゃない…か。やだな…帰りたくない…


てかこの世界の神様ってなんかゆるいんだな。全体的に適当というかなんというか…


「…え?本当にカミ様いるの?この世界。」


今の話まとめると完全に偶像とかじゃなくて実在する感じ?


「お姉さんの世界にはいなかったの?」


いやー、いるけど…いるのかな?全部想像の中のものというか居るという確証がないというか…説明難しいな…


「いる、ような…いない、ような…居るらしい、けど…存在知らない…てきな?」


「何だそれ。」


だよね、私もわかんない。

とりあえず干渉は全くしてこないかな。

居るかもわかんないレベルだし。

そう考えるとこの世界の神様って凄いね。

ちゃんとみんな存在を認知してるんでしょ?

召喚とかやることやってるし。そう考えればそりゃいちいち召喚者を観察なんかしてらんないよね。沢山いる人間全員を1人で見れるわけないよ。


「1人じゃねぇぞ?」


「え?」


「神様は大陸にそれぞれいる。だから大陸が12あるこの世界は最高神だけでも12の神がいる。」


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