26こんな一瞬で寝ちゃうくらい疲れさせちゃって申し訳な…かわいぃいいい
マイくんを起こさないように慎重に早歩き程度のスピードで歩く。走ってって言われたけどこの時間を心ゆくまで堪能したいのでこれはしょうがないことだと思う。うん。
町の中を見渡しても目立って大きな被害は無さそうだったのでひとまず安心した。元々家も少ないし蜘蛛の糸の絨毯のおかげもあると思うけど戦ってる時に下で移動していた気配も感じていたし、多分その人たちが頑張って被害を抑えたんだと思う。怪我をした人も居なかったみたいだし無事で何より。
それにしても…岩壁、穴ぼこだらけになっちゃったなぁ…どこを見ても戦いの跡ばかり。んー、ちょっとやらかしちゃった?
そこでふと思いつく。私たちが暮らしてる洞窟みたいに崖を掘れば家になるんじゃない?組んだ木に布を貼ってる家よりも何倍もマシになるんじゃないかな?それに洞窟の中なら今日みたいな魔獣が出てきても守られる気もするし。よし!明日マイくんに提案してみよ〜っと!
道半ばまで来たあたりで風にのって沢山の笑い声が聞こえてきた。みんな美味しく楽しくご飯食べてるんだね。そう思うと胸の奥がぽかぽかする。1人で食べるご飯は寂しいもん。
腕の中で心地良さそうに寝息を立てているマイくんに目をやる。私が大したことない人間な事は私が1番わかってる。それでも少し、ほんの少しでいいから、マイくんが独りじゃなくなってるといいな。今はサーシャちゃんもいるしね!
今日はなんだか星が綺麗だ。
気分良く上を見あげた瞬間、ゾワッと背筋に何かが登った。バッと気配がした右斜め後ろを見る。崖の方、町の隅っこから誰かが見ている。男か女か若いか年寄りか人間なのかもわからないけど、身体の芯から震えてしまうほどそれは気持ち悪いものだった。
そしてそれは酷く歪んだ笑みを浮かべていた。
どうしよう気持ち悪い。すごく嫌だ。マイくんを起こすか、それとも今すぐ逃げるか。ぐるぐる回る思考がまとまらない。一瞬の静寂を挟んだあと気配を察したのか手の中のマイくんが動く。
「なんだ…どうかしたのか…」
目を覚ましたマイくんが目を擦りながら頭を上げた。そんな一瞬、マイくんに目を向けて前を見るともう変な気配は消えていた。
「…えっと、ごめん、なんでもない。まだ着いてない、からもうちょっと寝てていーよ。」
一瞬の気配など気のせいだったのか、何もない平穏が流れている。でも身体を巡った寒気は本物だ。気持ち悪くて早く人のいるところに行きたい。そんな私を見てそうか、とだけ言ったマイくんはまた眠りに落ちた。それを見届けて私は今度こそ少し小走りでみんなが居る食堂に向かった。




